巻き替え後の電源トランスです。

★今回の出力管の赤焼の直接の原因はバイアスセレンの不良に依るものと考えます。これにより出力管のバイアスが浅くなり、出力管のプレート電圧が上がり出力管が赤焼を起こしました。

原因はアンプ内部の過熱です。 この過熱で電源回路の古いオリジナルGood-Allのコンデンサーがやられました。これにより電源のマイナス側に回り込みが発生し連動してバイアスセレンが飛んだと考えます。
このままでは電源は入れられないので、まずは不良のコンデンサーやバイアスセレンを交換し、それから電源を入れて電源トランスや他の不具合個所を調べます。

また、今回まだ大事に至っていないもう一台も同様に過熱しています。この為、近いうちに今回のBチャンネルと同じような状態になると考えます。


以前から気になっていたオイルコンは今回の過熱でとうとう1台が破裂し大量の絶縁油が噴出しました。もう一台もBチャンネル以上に膨れ上がっているので近いうちに破裂します。この為、2台とも配線を外し同じオイルコンは現存しないので新規に同容量のMPコンを追加する必要があります。

★こちらはまだ不具合を起こしていないAチャンネルの内部です。

★ ようやく落ち着いて良い音が聴けます。

なかなか、、、いろいろあります。。。












 

巻き替えた電源トランスをバラして再組付けしました。

手前の赤焼した出力管を交換しました。

★試聴エージング風景です。

いつものMKe-1にケーブルが届かないので、所有機Marantz7に繋いでいます。

漸く良い音が蘇りました。

3年前にこちらで修理を行ったMarantz5です。今度は右のBチャンネルの出力管が真っ赤になったので修理を依頼されました。今回はトランスカバーを外してお送り頂きました。(チャンネル名はフロントのラベルではなくトランス上面の緑のテープに記されています)


チョークトランスを取付け整流管も交換しました。いよいよ電源投入です。

今回の交換部品です。

赤焼した出力管です。まだ使えそうです。

雰囲気の熱で天井に穴を明けた口からオイルが滲み出てきます。その内落ち着いたら出なくなるでしょう。

電解ブロックコンデンサーは今回もオリジナル仕様の特注品に交換しました。

★試聴エージング風景です。

こちらのオイルコンも膨れて今にも破裂しそうなので、同じ様にMPコンを装着しています。他のコンデンサー類も交換しました。

調整後、残留ノイズの測定です。限り無く0Vでノイズはありません。

バイアス調整です。エミッションの少ないB側の出力管を交換し正常にバイアス調整ができるようになりました。

★こちらは正常なAチャンネルの内部です。

かなりのコンデンサーを交換しました。電源トランス巻き替え後の配線の取回しや結束方法はオリジナルと同じです。これなら巻き替えたことはわかりません。

左から整流管直後の電圧です。439Vを示し良好です。中央はバイアス電圧です。-45.1Vで良好です。右は高圧B1です。436Vでこちらも良好です。

★内部です。


★漸く修理完了です。                                                  2022. 11. 29

今度は高圧整流管です。
何と、最初からショート警告ランプが点灯します。電極間ショートです。

これは明らかに異常で、ヒーター電極とプレート電極がショートしています。
この為、電源を入れた瞬間にヒーター電圧が高圧電源のアースに回り込み大電流が流れヒューズが飛びました。





★今回の惨事の経緯を推測すると、まず過熱などによりバイアスセレンの導通不良と経年劣化したオイルコンがパンクし絶縁油が噴出することにより絶縁不良を起こしました。
これで高圧回路に異常電流が流れ、2本の出力管のエミッションの良い方のプレートの赤焼を起こしました。
この異常電流は連鎖反応で高圧回路を構成している電解ブロックコンデンサー、チョークトランスをショートさせ電源トランス2次側巻線の高圧側をショートさせました。
これと同時に高圧整流管の電極もショートしたようです。






★以上のように、電源トランスだけではなく電源回路の主要部品はことごとくダメージを被っていました。

幸い巻き替えを行った電源トランスは、今回のヒューズ溶断でも無事でした。

この後は、ショートしている電解ブロックコンデンサーの交換とチョークコイルの巻き替えを行います。







 

巻き替えが終わり、これから再組付けを行なう電源トランスです。

再度電源を入れるとまたヒューズが飛んだので念の為電解ブロックコンデンサーを外して単体検査を行います。

こちらも念の為電源のチョークコイルの配線を外し単体検査を行うと 33.4μH 0.031ΩDCです。通常は3H~10H位が一般的なのでインダクタンスの単位が違います。こちらもショートしています。


★電源トランスの巻き替えが終わったので進捗を掲載します。                              2022. 11. 14

巻き替えた電源トランスを装着し電源を入れるとまたヒューズが飛びます。
慎重に各部を検査すると、以前交換した電解ブロックコンデンサーもショートし、電源のチョークコイルもショートしていました。

バイアスC電源です。 184.0μH 81.9Ωです。

同じく両波整流のもう片側です。 636μH 4.46Ωで、ほぼ短絡状態です。

高圧側、両波整流の片側です。 15.562mH 139kΩです。こちらはAチャンネルの1/6しかありません。

バイアスC電源です。 349.2μH 92Ωです。

同じく両波整流のもう片側です。 52.27mH 0.886kΩです。

高圧側、両波整流の片側です。 34.52mH 0.892kΩです。

★以上の結果、問題のBチャンネルの電源トランスの1次側と2次側の高圧巻線がショートしています。

電源トランスの巻き替えが必要です。

左の白テスターは高圧B1です。 453Vを示し良好です。
中央はバイアスです。 -47.8Vを示し良好です。
右は高圧B2です。 418Vを示し良好です。

パンクしたオイルコンの代わりにMPコンデンサーを追加しました。

正常なAチャンネルです。

こちらは問題のBチャンネルです。 3.967mH 10.2Ωです。
Aチャンネルの半分のインダクタンスで、直流抵抗も極めて低く短絡状態です。

★電源トランス1次側を測定します。

★この後、問題のBチャンネルです。電源を入れるといきなりヒューズが飛びました。

当然ながら普通に電源が入り、波形も奇麗です。

★Aチャンネルです。

★問題のBチャンネルの内部です。

残圧を逃がすために天板に穴を明けました。

取り外して各部の清掃です。この時バイアスメーターも外しました。

オイル漏れの個所です。


★一通り部品の交換が終わったので進捗を掲載します。                              2022. 10. 10

★まずはパンクしたオイルコンの処理です。

1次巻線のHOT側です。こちらもまずまずの値です。

1次巻線のCOLD側です。こちらもまずまずの値です。

こちらはAチャンネルのバイアスセレンの順方向です。通常通りの抵抗値です。

同じくバイアスセレンの逆方向です。こちらも若干の導通があります。まだ完全に抜けてはいませんが近いうちにBチャンネルと同様にパンクします。

2ブロックとも良い値です。

コンデンサーや抵抗の表面が高熱で白化しています。

出力管のスクリーングリッド抵抗も高熱で白くなっています。

★出力トランスはAチャンネル、Bチャンネルとも正常なインダクタンス値と直流抵抗値なので問題はありません。

バイアスセレンの順方向です。通常通り導通がありますが抵抗値は極めて少ないので異常です。

2次側8Ω端子です。まずまずの値です。

こちらも同じ様にコンデンサーや抵抗の表面が高熱で白化しています。

こちらは同じくスクリーングリッド抵抗の他に出力トランスへの配線も白くなっています。

★念のため前回交換したバイアス用電解ブロックコンデンサーをチェックします。

同じくバイアスセレンの逆方向です。こちらにも導通がありこのセレンも不良になっています。

電源回路のオリジナルコンデンサーです。容量が抜けてESRも高く不良です。

逆さまで検査していますが、オイルコンの頭から滴り落ちています。

シャーシー内に滲み出ています。

問題のBチャンネルの内部です。以前と同じですが、抵抗類やコンデンサーがかなり高温に晒されていたようで各部品の表面が白くなっています。電源のオイルコンから大量の絶縁油が噴出しています。

こちらは正常な方(Ach)のチョークコイルです。画像のように3.028H 125.3kΩDCを示しています。文字通り正常です。

★電源トランス2次側です。

問題のBチャンネルです。

赤焼した出力管です。手前のバツ印。

オイルコンの取付けボルトの頭に絶縁油が滴り落ちています。

こちらはAチャンネルのオイルコンですがかなり膨れています。今回漏れだしたオイルコンはBチャンネルで、こちらのAチャンネルよりも膨らみは小さい事から、これからこのAチャンネルも近いうちに破裂します。

もう1本の出力管です。こちらは50以下で廃棄値を示しています。

ますは赤焼した出力管EL34です。
エミッションは75とまずまずの値です。

★チョークトランスの巻き替え中に真空管チェックを行いましたので、また進捗を掲載します。                     2022. 11. 16

本機の高圧側整流はセレンやダイオードではなく整流管です。
この為、電源投入後すぐにヒューズが切れるのは高圧回路や各回路ではなく、バイアス回路及びヒーター回路に限定されます。
まず、改めてバイアスセレンやバイアス用電解コンデンサーを詳しくチェックしましたが特に問題はありません。
残るはヒーターです。ヒータはどれも正規の抵抗値を示すので真空管試験機に掛けても問題無いようです。
この後各真空管の特性を真空管試験機で測ります。

電解ブロックコンデンサーの単体検査です。静電容量は良いのですが絶縁抵抗は60.9kΩとほぼショート状態です。
最初の検査では静電容量とESRの値から、まず大丈夫だろうと推測しましたが、配線を外して単体の検査をするとやはりダメのようでした。

こちらは正常なAチャンネルです。 7.620mH 76.7Ωです。

ガラス管の中で破裂したような飛び方です。

こちらもオイルコンがパンパンに膨れていたので、配線を外しMPコンを追加しました。

★予定の部品の交換が終わったので電源投入です。

まずは正常なAチャンネルからです。

こちらも同様にかなり過熱していたのでバイアスセレンとコンデンサー類を交換しました。

★内部です。

★調整完了です。                                                  2022. 12. 2

修理完了後エージングを行っていましたが、かなり温まってくるとブーンのノイズが少し出てきます。
この原因を探っていました。

赤焼した出力管を交換したら少し治まりましたが、やはりクラシックを聴くとまだ気になります。
電源回路を中心に再検査を行い、結局巻き替えした電源トランスをこちらで再度組み直してノイズは治まりました。

Marantz5 修理依頼 概要

2022. 9. 23 検査
2022. 10. 10 進捗1
2022. 11. 14 進捗2
2022. 11. 16 進捗3
2022. 11. 29 修理完了
2022. 12. 2 調整完了

巻き替えたチョークトランスです。

切れていた電源コードをMarantz純正ベルデンの新品に交換しました。

バイアスセレンを交換し、コンデンサー類も交換しました。

★念のため出力トランスもチェックします。