★出力トランスは概ね大丈夫の様です。

★予想通り1台目は電源トランスの漏電が激しく危険な状態でした。この漏電によりバイアス回路に電流が流れメーターが振り切れ調整不能に陥っていました。

最初に状況を伺ったときにノイズが出るようになったとお聞きしました。パワーアンプは悪くなっても余り音には出ません。これが明らかにノイズとなって音に出てくる場合、殆どが最悪の状態です。

今回も同様な事態になっていました。

★先に検査した2台目もバイアスがおかしいので各電源回路の部品を交換した後再検査します。前に他のレストア屋さんが電源トランスと出力トランスの巻き替えを行なわれていますが、巻き替えに至った原因を詳しく見ないで済ませてあるような気がします。
この状態で今のオーナー様が購入されて10年程使われています。

再度細かく電圧をチェックします。

左の白いテスターは出力管のバイアス電圧です。-45.3Vで少し低く出ています。中央と右の黒いテスターは出力管2本のそれぞれのグリッド電圧です。2本とも少し高く出ています。本来この位の電圧であればメーターは振り切れるはずですが少し振れるだけで相変わらずかなり低く出ています。


左テスターは前回と同じくバイアス電圧です。-50.6Vで少し高い値です。中央の白いテスターは高圧B1です。こちらは前回の389Vに比べてかなり高くなり477Vを示しています。少し高い状態です。右テスターは残留ノイズです。前回と比べてかなり少なく0.003Vで極めて良い状態です。

★電源回路を改善し各電圧が上がったのは良いのですが、少し上がり過ぎです。しかも相変わらずバイアスメーターは2本とも以前と同じように正規の位置まで上がりません。
一応念のために出力管2本をチェックします。


★バイアス調整です。

★電源を入れる前に各電解ブロックコンデンサーのチェックです。

★2台目です。

★電源回路の電解ブロックコンデンサーのチェックからです。

配線も替えられているのでそのまま使用しています。

★試聴エージング風景です。

今回のプリアンプは当工房所有機Marantz7 S/N 10200番台グリーンです。

良い音で鳴っています。漸くここまで辿り着きました。。。

裏の足や底板の変形もこちらで矯正して直しました。お行儀よく?並んでいます。















交換部品です。

★2台目の修理後の電圧チェックです。

B側も良い状態です。

A側です。良い状態です。

B側です。こちらも良い状態です。この後時間の経過で両方とも目盛りの位置に丁度針がきます。

左のテスターはバイアスC電圧です。45.1Vで少し浅めに調整しました。右テスターは高圧B1です。411Vで良い値です。残留ノイズは上の画像の様に0.003Vで極めて良い値です。

左テスターはバイアスC電圧です。-50.2Vで良い値です。右の白いテスターは高圧B1です。437Vで良い値です。

無信号時の残留ノイズです。0.014Vで少しノイズがあるようです。実際の試聴では殆ど感じません。

電源トランスの巻き替えを行った後きれいに配線を戻しています。こちらは特に問題無く元に戻りました。

★電源を入れて修理後の各電圧を測ります。

★漸く修理完了です。                                                  2021. 12. 14

本機も大変時間が掛かりました。



★まずは1台目の電源トランスの巻き替えを行った物です。

★いよいよ、、、余り考えたくなかった?出力トランスが怪しくなってきます。 下記に出力トランスを測定します。

こちらは外部の電流計で測定し、値は34.39mAを示しています。本来EL34の最大プレート電流は66mAなので約半分しか流れていません。これで本機のバイアスメーターは正常な値を示していたことになります。

★以上の結果、出力トランスの1次側上下のインダクタンスと抵抗値が大きいので電流が流れにくく、バイアスメーターが振れない状態になったと判断します。
こちらの出力トランスは一度巻き替えられています。経年劣化或いは最初から?値が変ってしまったと推測します。

この2台目は出力トランスの再巻き替えが必要です。









1次側のプッシュプル上側です。29.53H/1kHzでDCR 6.73Ωです。
これは1台目の倍のインダクタンスと5倍の直流抵抗になっています。

1次側のプッシュプル下側です。こちらも30.08H/1kHzでDCR 6.66Ωで上側と同じ状態です。

2次側の8Ω端子です。 16.623mH/1kHz DCR 0.3537Ωで1台目より少し値が違う程度です。

電圧関係が正常な状態に合わせた時にバイアスメータが上がらないのでいよいよメーターの不良を疑い外部の電流計で測定します。

上記正常なグリッド電圧の時の出力管のプレート電圧です。黒テスター2台でそれぞれ423Vと420Vで良好です。


★漸く2台目のバイアスメーターが上がらない原因が判明しました。                    2021. 10. 13

取り敢えずチェックの経緯を見て行きます。

★本来バイアス調整のメーターは出力トランスの1次側の各出力管に供給する高圧B電源の電流値を表示しています。バイアスが浅くなればこのB電源の電流値が上がり振り切れる位に電流が流れるのですが、今回はバイアスが浅くてもメーターが振れないので出力管のプレート電流が流れていないことを表しています。

次回は外部に電流計を設置しプレート電流を直接計測し異常個所を特定します。





電源トランスの取り付け穴が違います。

バイアス調整を行い少し電圧を上げてみました。-42.8Vです。
これでもメーターは上がりません。

電源トランスか出力トランス及び両方が異常かも知れません。

カバーを開けた状態です。取り付けベースが違うようです。

2本目です。こちらもまあまあの状態です。

1本目です。何とか使える状態です。


★やはり何かがおかしいので電源トランスを疑い細かくチェックします。

右は交換した新品のオリジナル仕様電解ブロックコンデンサーです。

★今度は2台目の電解ブロックコンデンサーを交換し各電圧をチェックします。                    2021. 10. 11


1次側のプッシュプル上側です。14.5H/1kHzでDCR 1.45Ωです。

1次側のプッシュプル下側です。14.826H/1kHzでDCR 1.408Ωです。

2次側の8Ω端子です。 10.56mH/1kHz DCR 0.527Ωです。

筐体-コンセントN極間の漏れ電圧です。何と、AC112.5Vもあります。電源トランスがかなり漏電しています。

ついでに筐体-コンセントL極間の漏れ電圧です。何と、AC209.5Vもあります。危険な状態です。

A側ですが、調整ボリュームを最少に絞ってもメーターが振り切れています。確実に異常です。

こちらはB側です。こちらも調整ボリュームを最少に絞っても振り切れます。

左テスターはバイアスC電圧です。-44.2Vを示し少し下がっています。中央の白いテスターは高圧B1です。389Vを示しこちらもかなり下がっています。右は出力の残留ノイズです。0.021Vでやはりノイズが出ています。

Marantz純正ベルデンの新しい電源コードに交換しました。

★1台目の電源コードを交換し、電源を入れて再検査を行いました。                    2021. 9. 28

バイアス調整です。A側です。時間が経つとボリュームをいっぱいに上げてもご覧のように定位置まで上がりません。




こちらはB側です。こちらも定位置まで上がりません。しかも不安定です。

★こちらは電源が入れられます。

バイアスC電源です。良い値です。

こちらのブロックも良い値です。

高圧の電解ブロックコンデンサーです。こちらはOL表示で計測不能です。

こちらも足が変形しています。

足を辛うじて取り外すと底板が捲り上がりました。こちらも大きな衝撃が掛かっていたようです。

本体に比べ比較的大き目の箱に、全体にプチプチや新聞紙を丸めて詰めてありました。この為本体の重みで緩衝材が潰れて中でトランポリンのように上下にジャンプし、底に叩きつけられている状態です。東京から石川まで夜中にトラックが走っている間中路面の凹凸で数百回叩きつけられていたと思います。
パワーアンプは重いので段ボールの中で動かないように固定して下さいといつもお願いしています。緩衝材で浮かせると重みで緩衝材が潰れて中で転がって必ず足がやられます。
これを運送屋さんのせいにして補償を求めると、この後受取を拒否されて輸送手段が経たれます。他社に出せば良いかと思うかも知れませんが、こちらはいつもヤマトさんにお願いしています。他はもっと危ないので。

1台目の梱包を開いたところ足がポロリと落ちました。底板がかなり変形しています。運送途中で壊れた様です。

電源ケーブルも根元でぐちゃぐちゃです。

こちらのブロックも容量が抜けています。

高圧側です。容量が抜けています。

バイアスC電源のブロックコンデンサーです。2ブロック共良い値です。

ノイズが出るようになったので修理を依頼されました。

★後で電話で、ノイズが出るのは電源コードが破損している方だそうです。電源コードが破損していない方でこれだけ悪い状態なのでノイズの出る方のもう一台が心配です。

左テスターはバイアス電圧です。-45.2Vで少し低いですがまあまあです。中央のテスターは高圧B1です。時間が経つと390Vまで下がりました。異常に低い状態です。右は出力端子の残留ノイズです。0.005Vで良い状態です。

初段管のカソードバイパスコンです。容量が1.5倍程膨れて不良です。

オイルコンにコンデンサーが追加されています。

こちらは電源トランスと出力トランスが巻き替えられています。高圧側のオイルコンにパラにコンデンサーを追加されています。恐らくノイズ対策でしょう。後でバイアス調整が不安定なのでトランス巻き替え後の再配線でどこか配線ミスがあるようです。電源回路を直した後で調べます。

同じところの裏板はかなり変形しています。衝撃の大きさが伺えます。

足の付け根が陥没し変形しています。

★1台目は電源ケーブルを交換した後、各電圧等を測ります。

電源ケーブルの根元が破損しているので交換が必要です。

Marantz 5 修理依頼 概要

A側のバイアス調整です。良い状態です。


ついでにこちらにストックしている状態の良いRCAのEL34に換えて見ましたが同じくバイアスメータは上がりません。

バイアス電圧を調整して出力管のグリッドに掛かる電圧を調整します。
左の白いテスターはバイアス電圧です。 -38.01Vに調整しました。(本来は表のバイアス調整用ボリュームで調整しますが、今回最大に回してバイアスが上がらないので中の抵抗値で調整しました)

中央と右の黒いテスターが2本それぞれの出力管のグリッド電圧です。それぞれ-37V,-36.82Vで正常です。

2021. 9. 27 検査
2021. 9. 28 再検査
2021.10.11 再々検査
2021.10.13 再々再検査
2021.12.14 修理完了

★さて、問題の2台目です。 今回は極めて難儀でした。 

バイアス調整が出来ないので出力トランスの巻き替えを行いました。しかし元の状態は以前に巻き替えてあり、これが正規の状態では無く改造されています。この改造が時間の経過と共に調整不能となったようです。

今回巻き替え時、以前の元の状態の通り巻替えると発振を起こします。恐らく以前の修理で電源回路の部品を持たなかったのでその状態で合うように出力トランスを巻き替えられたようです。しかし経年でもっと悪くなりいよいよ調整不能に陥りました。

今回電源回路を正規の状態に戻すと以前の改造されて巻き替えられた状態ではマッチングが上手くいかなかったようです。この為、もう一度今度は過去のデータから正規の#5の状態に巻き替えを行っています。2度目の巻き替えで漸く正常な状態になりました。

★出力トランスのチェックです。

★電源を入れて各部の電圧を測ります。

★まずは1台目です。