Marantz7レストア依頼 10080番台 F.A 様 概要

2018. 2. 14 初掲載
2018. 3. 30 レストア完了

交換部品です。

カソードバイパスコンは抜けて計測不能です。

ヒータセレン後の電圧も22.5Vで既定の25Vをかなり下回っています。

この為ヒータセレンも不良です。

低圧セレンも純正のままです。

長期に渡った本機のレストアも漸く完了しました。

音はやはり良品尽くめの部品で構成した逸品です。この上ない良質な音を聴かせてくれます。
今回特にフォノイコのRIAA偏差用バンブルビーの特性の良さやトーン回路の0.33uF/100Vを良品に交換している為、音の抜けの良さは抜群です。
ドドーンと響く重低音、煌びやかな中高音。透き通った情感はまさに良質バンブルビーの音です。










これが交換したぶっとい0.33uF/100です。   →

内部裏面です。いつもの横一列の小さなバンブルビー4本は全て良品でした。
電源では低圧セレンも交換です。
画像左したの黒々とした2本のコンデンサーが今回始めて交換した0.33uF/100Vです。


★レストア完了です。                                                     2018. 3. 30

ようやく完了しました。今回も1か月超の長きに渡りました。
塗装も時間が掛かりましたが、何と言っても裏のぶっとい0.33uFが不良なので以前からどこかに無いかしぶとく探していました。
ある所にはあるものです。アメリカのテキサスの倉庫に眠っていたようです。ロットの違いか環境なのか色が赤くくすんでいますが何とか良品です。
高価なので取りあえず10個手配して良品は3個だけでした。

これまで400番台以前の最初期型でこのぶっとい0.33uFが違う仕様の代品に交換されていたら致命傷の一つと考えてきました。
今回これでこの致命傷の条件も外れ、今後何台交換できるかわかりませんが少し明るい兆しが見えてきました。

BumbleBeeの胴体に亀裂が入っています。

高圧セレンは純正です。

この面だけがグリーンハンマートーン塗装です。 →

★初期検査では予想通り電源は全滅です。
これだけの年数が経っているので消耗品であるセレンやブロックコンデンサーは全て交換が必要です。

今はまだ特に異音は出ていないようなので大丈夫と思っても、近いうちに音漏れや異音が出始めます。
これを放置して聴いていると真空管からパチッ、パチッと音が出始めます。
こうなると真空管はもうだめです。


Marantz7に装着される真空管はどれもNOSの貴重なものばかりなので、こうなる前に電源回路は早めのメンテが必要です。

次にブロックコンデンサーの検査ですが、高圧先頭のφ25は左の画像の様に3ブロック中2ブロックがLeaky表示で不良です。
高圧2段目は3ブロックとも容量がかなり落ちています。画像中央です。
低圧のヒータ用はこれも3ブロック中2ブロックがリークしています。画像右です。


カップリングコンデンサーは概ね大丈夫ですがラインの最終0.22uF/200Vに亀裂が入っています。
外して検査してみなければわかりませんが恐らく静電容量が膨れ上がっているのでしょう。
このため交換が必要です。

裏の0.01uF/400Vはラインのみ2本不良です。
フォノイコでは先頭の0.1uF/400Vが2本とも少しリークしています。
RIAA偏差の0.0056uFは2本とも容量アップで不良です。

本機で唯一メンテされているカソードバイパスコンは下の画像の様に計測不能となって不良です。
交換されてから年数が経っているのでしょう。4本とも交換になります。



裏のトーン回路の0.33uFも2本とも容量が倍に膨れて不良です。

セラミックコンデンサーも容量が抜けて不良です。

次に高圧B電圧で一番高い電圧も218.7Vとかなり低い値です。
規定値は280Vで限界値を大きく下回っています。

これに伴ってラインやフォノイコのプレート供給電圧も大きく減衰しています。(上記画像中央と右)

★本日最初の音出しを行いました。                                                              2018. 2. 15

音は特に歪などは感じません。きれいな音です。
しかしバンブルビー独特のダイナミックさや煌びやかさは感じません。

何となく薄い感じで低音も弱く全体に雑な音です。
恐らく電源が良くないのかも知れません。

レコードは低域が弱くRIAA偏差が崩れています。

しかし、こんなものだと思えば一応Marantz7の音なので特に異音が出ない限り普通に聴けます。



この後各部の検査を行いました。

まずトランス後の交流電圧は270V位出ているのでトランスは大丈夫です。

しかし高圧セレン後の電圧は260.6Vとかなり低い値です。
通常は310V位必要です。

この為この高圧セレンは不良です。

実際のヒータ電圧は15.59Vとかなり落ち込んでいます。
このヒータ電圧の規定は19.8Vです。

内部も完全なオリジナル状態です。2桁台特有の配線でフラットケーブルの空中線が見えます。
フラットケーブルで足りない分の配線を基板から2本余計に渡り線が出ています。
フォノイコのカソードバイパスコンが変更されています。恐らくこの程度のメンテで済んでいたのでしょう。

真空管はTelefunken<>有スムースプレートです。
チューブケースも光沢がありとても良い状態です。

本機もMarantz model 7 史上最初期2桁台の10080番台グリーンハンマートーン塗装、博物館行き超プレミアム級の逸品です。
当工房の保有機10070番台とSNは5番しか違いません。
しかもこちらの70番台と同じ色のグリーンハンマートーン塗装色です。

フロントパネルも2桁台特有のアルミ研磨仕上げの薄いゴールドアルマイト処理を施された薄板です。
これは3桁台の普通のヘアーライン加工とは違い、よりコストを掛けた豪華仕様となっています。


全体的に殆ど手を加えていないオリジナルで大変良い状態です。大変珍しい機種なので画像も沢山撮りました。


裏面のトーン回路のカップリングで3桁台400番以前に特徴のぶっとい0.33uF/100V SPRAGUE製です。

側面のウレタンスポンジです。経年劣化でボロボロです。
まさにオリジナルです。

3桁台以前で特徴のポッチの2つ付いた純正クラロスタットのメインとバランスボリュームです。
きれいです。

このクラロスタットから伸びているシールド線も3桁台以降とは違います。

良く見ると残念なことに天板と底板は後で再塗装されています。
しかもグリーンでは無く普通のブラウンハンマートーンです。

板の縁に以前のグリーンハンマートーンの塗装跡が残っていました。

天板や底板はとてもきれいです。

画像では見難いのですが電源コードも最初期型純正です。
400番台以前で共通のものです。
一見12000番台以降で良く見かけるもののようですが差し込み口の形状が違います。

←取り外した元の0.33uF/100Vです。経年でボロボロです。
 静電容量は膨らみ絶縁抵抗も殆どありません。

内部上部です。電源回路は全て交換しました。高圧セレン、電解ブロックコンデンサー3本。各電圧も上々です。
バンブルビーはフォノイコ最終の0.47uF/200Vを除いて全て交換です。
特に最初の検査で漏れ電圧測定ではまあまあ良かったものの静電容量が膨らんで周波数特性に影響のあった0.22uF/400Vを後で2本とも交換しました。画像では基板上右端から3,4本目です。ここが音に特に重要です。
フォノイコのカソードバイパスコンも4本とも交換。イコライザー偏差の0.0056uFも誤差15%以内の良品バンブルビーに交換です。これはなかなか無いものです。堂々のSN.2桁台です。気合が入ります!