レストア後の試聴では問題のブーンというノイズは聴こえません。イコライザーもかなりボリュームを上げても比較的静かです。
電源回路はまずまずの状態です。

音もオールバンブルビーらしいダイナミックで繊細な音ですが、少し荒削りの感が残ります。

今回はかなりのバンブルビーを残しています。このうちのどれかが音に影響を及ぼしているのではないかと思います。

もう少しエージングを繰り返し、幾つか交換してこの原因を探ってみます。







★レストア完了                                                         2017. 9. 4

荒削り感の解消では結局イコライザーの0.01uFバンブルビーを交換したあとロータリースイッチやボリューム全体に接点復活剤を塗布しました。これが功を奏して全体にスッキリとした音になりました。
特に裏面の出力用ボリュームが大きく影響します。ここはあまり回さないので固着することが多く、時には蚊の鳴くような音になったり音が出なくなることもあります。

この接点復活剤の塗布を嫌う方もいますが、長い年月が経つと接点やボリュームの蒸着炭素皮膜の表面が酸化や硫化してこの粉が接点に溜まり導通を妨げたり表面を削って益々劣化させます。
これを薬液で取り除き酸化硫化を防ぐ幕を作ってくれます。勿論、金属やプラスチックその他に悪影響はありません。


私は特にこの接点復活剤の回し者ではなく宣伝する積りはありませんが、現代化学の功績を認めています。


これでこのMarantz model7オリジナルSN10400番台も当時の音に近い納得の行く音になりました。





Marantz#7オールバンブルビー化レストア 10400番台 H.S 様 概要

裏面も小さなカップリングコンデンサーはライン部片側のみ交換しました。
低圧セレンもオーナー様が保管されていた復刻セレンに交換しました。しかし電圧が18.2Vと基準に1V程足り無く交換する前と同じ状態です。
とりあえず何とか問題なく使えそうなので今回一応オーナー様の保管部品を使うことにしました。

バンブルビーは何とか使えるものがあったので交換したものは少なく、イコライザーのカソードバイパスコンも初段は良品でした。
セラミックはいつもの様にSPRAGUEに交換しています。

問題の電源回路は殆どの部品が復刻の新品交換となりました。

右の茶色がこちらで用意した復刻の高圧セレンです。

ただ、この状態でも高圧B電圧は規定まで上がらず260V止まりです。1次側の漏れ電圧も高かったのでトランスがかなりヘタっているのではないかと思います。

もう60年近い年月が経っています。トランスも巻線がボロボロになり、どれも絶縁不良が起きてもおかしくない状態です。
パワーアンプの#2や#5、#8、#8B、#9などは巻き換えもできますが、この#7は密閉型なので代品を探すしか方法は無いようです。

トランスが元気でセレンやブロックコンデンサーが復刻の新品であれば確実にB電圧は280Vを超えます。
(電源投入後の初期電圧は350Vを超えます。このためブロックコンデンサーの初段の耐圧は400V必要です)

現在こちらではトランスの代品が無いので一応このまま使用することにします。

ブロックコンデンサーASYを外してみると大変なことになっていました。
このアンプは一度水に浸かっているようです。ブロックコンデンサーに泥水の跡が残っています。恐らく水を含んだまま電源投入され漏電したのでしょう。
高圧の電圧にコンデンサーの電解液が飛び散って周りが汚れています。配線も焼け焦げた跡があります。

Marantz model 7 オリジナル 10400番台総グリーンハンマートーン塗装の最初期型です。
いろいろ手を加えてあるものの最初期型として貴重なクラロスタットや裏のぶっとい0.33uFのコンデンサーは無事です。
SNのラベルや塗装、フェースパネル等は換えられているようですが、間違いなく本物の1040*番だと思います。
これ等の変更はこの貴重な個体を何とか蘇らせるための先人の方々の努力の賜物です。これ等変更点は最初期型としてのオリジナル状態に戻そうと思えばできなくは無い程度の変更なので、幸いにして致命傷にはなっていません。
現在では代品すら手に入らない事を変更されてしまっていたら致命傷と考えています。
こちらで言えることはクラロスタットボリューム、裏のぶっとい0.33uF、リヤパネルのRCAジャックの変更とテープヘッド調整ボリュームの削除等です。中にはセレクターのロータリースイッチを変更されている物も見かけたことがあります。残念ながら取り返しのつかない状態です。

症状は最初の電源投入後ブーンと異音が出るようです。
こちらでの最初の音出しでも確認できました。音も歪が出てバンブルビーは殆どダメなようです。

アルミブラケットの汚れを丁寧に落とし、全てのブロックコンデンサーを新品交換しました。

配線も新しく張替えです。抵抗も値が増加していたので一部交換しました。

また、高圧セレンがダメでした。順方向は抵抗値が高く逆方向でも導通があります。殆ど整流できていない状態でした。

このためオーナー様が保管していた青い復刻セレンに交換してみました。
しかしこれも順方向の抵抗値が高く、高圧B電源の電圧は規定の280Vには全く到達せず210Vが限度です。
これでは全く使い物にならないのでこちらで用意した復刻高圧セレンに交換しました。

以前からこの青い復刻セレンには悩まされました。不良率30%を超える位です。セレンの導通不良で時にはヒューズが飛ぶこともありました。

こちらでは何個も没にしています。

今回の様に将来のために保管し実際使って不良だとわかっても買ってから時間が経っている場合が多く、初期不良で返品することもできないかも知れません。

★検査後レストア中                                                       2017. 8. 29

フォノイコ最終段カップリングは仕様の違うバンブルビーに交換されています。
電源のブロックコンデンサーはマロリーに交換されていますが2本不良です。セレンもダメなようです。

異音が出るのは、まず電源がダメでこれに伴って他の部分が影響を受けてダメになるケースが多いと思います。