Marantz7 13000番台 レストア依頼機 I.T 様 概要

2018. 11. 22 初掲載検査完了
2018. 12. 5 レストア完了
2018. 12. 11 再レストア完了

★最初に電源投入前にブロックコンデンサーのチェックです。


★再レストア完了です。                                                                    2018.12.11


結局今回もレストア完了から1週間の間エージングを繰り返していました。しかしラインはとても良い音ですがフォノイコが何となく気になり始めました。
エーシングを繰り返すうちに音が少しずつ雑になってきます。
恐らくバンブルビーの0.1uFです。 この為オーナー様と相談の上、他のコンデンサーにすることになりました。

お勧めはGolden-BlackかAZ-CAPですが、AZはかなり(200h)エージングが必要です。
相談の末、AZのアリゾナキャパシタになりました。

以下の画像がその内容です。


★今回のレストアでは音に一番影響のある部分に良品Bumble Beeを使用しています。

この為オールバンブルビーと変わらない透明感、臨場感溢れる音になりました。

しかも出力調整ボリュームを介さず直接固定抵抗で繋いだことにより、これまで聴いたことの無い透明感が得られています。

これは驚きです。


これまで多くのオールバンブルビーのMarantz7の音を聴いて来ましたが、これ程の透明感はありません。

いかにボリューム類が音を曇らせるかがよくわかります。

本機はメインボリュームもA&Bに交換されていますが、決して純正クラロスタットだけが良い音では無く、寧ろこのA&Bや東京コスモス(当工房改)でも周波数特性をいじらない素直な音が出て良い音だと思っています。(純正クラロスタットは2kHzあたりを強調しているため良く聴こえる)

今回の本機はこの上無い絶品の音です!

交換部品です。

今回もたくさんの部品を交換しました。

トーン回路のカップリングです。
黄色の純正SPRAGUEに交換しました。

内部裏面です。電源の低圧用セレンはそのまま使用しています。
横一列の小さな赤いカップリングコンデンサーも音の良いGoodAll-TRWを使用されていて良品のためそのまま使用しています。

右の画像は電源回路です。

全ての電解ブロックコンデンサーを交換し、高圧用セレンも交換しました。

これにより電源回路は完璧です。

裏のパネルに付いている出力調整ボリューム周りです。
本機は前のレストアで片側のボリュームをA&Bに交換されていました。
このためこれまでオーナー様は出力をいっぱいに上げて使用されていたようです。
しかし一般にボリュームは中間付近が音が良く、初めと終わりの位置では周波数特性が悪くギャングエラーも出やすい傾向です。

今回も少し迷ったのですが、オーナー様との相談の上、この出力調整ボリュームを使わずに固定抵抗で受けることにしました。

この様子が左の画像です。

内部上面です。 メイン基板上に左から3,4本目のライン部にBumble Bee 0.22uF/400Vの良品を使いました。
また、同じくメイン基板の左側にフォノイコ 0.1uF/400VwをBumble Beeにしました。
これ以外の部分ではあまり音に影響が無いので、それでもかなり音の良いGoodAll-TRWを使用しています。
フォノイコのカソードバイパスコンも純正SPRAGUEの新品に交換しました。
RIAA偏差を決めるコンデンサーも画像ではBumble Beeが見えますが、このセレクターの中に特性の揃えた良品のマイカコンを仕込み、そこを通しています。
セラミックコンデンサーも特性を吟味したものに交換しました。

★レストア完了です。                                                                    2018.12.5


今回のレストアではオーナー様の希望でオールバンブルビーをお望みでしたが、残念ながら現在こちらでは一部の部品を切らしていてオールバンブルビー化はできません。
この為、音に重要なところだけをバンブルビーを使ってレストアすることになりました。

以下の画像がその内容です。






高圧B2です。260.8Vでこれも良い値です。

★以上のように現状では何とか聴ける状態です。

しかし、1時間位で音が荒れてくるのでやはりオーナー様も気が付いているのでしょう。
もう少し良い音にならないかと思われたと思います。



レストア方針としては、まずは電源回路のブロックコンデンサーを3本とも交換です。
ダイオードもできればセレンに交換したいところです。

あとはカップリングコンデンサーをどうされるかです。現状では音に一番重要なところにBlack-CATが装着されています。
なかなか良い音だと思います。

あとは裏面の0.01uFが4本とも GoodAll-TRWに交換されています。ここは余り音に影響無いところですが、私の好きなコンデンサーです。良い選択だと思います。

セラミックが劣化して容量不足です。この為ラインの低音が弱くなっています。

トーンの0.33uFもかなり膨らんでいるのでしょう。低域の弱さに反してトーンで低域を上げるとぼんやりとした低音が出ます。

Marantz7本来のダイナミックな歯切れの良い低音ではありません。

フォノイコに影響の有る高圧B3です。240.6Vとこれも良い値です。

高圧B1です。279.5Vでなかなか良い値です。付加されたチューブラコンだけで頑張っているようです。

表面のフォノイコのカソードバイパスコンです。
全部交換されていますが、初段は上の画像のように容量が1.5倍です。
正規の値は200uFです。

★いよいよ電源投入です。

セレンからダイオードに交換されたダイオード直後の電圧です。
見難いですが334.9Vを表示して良好です。

低圧ヒーター用ブロックコンデンサーです。
3ブロック中2ブロックで表示の通りリークしています。
これが全部リークすると音漏れが発生し始めます。
普通レストアでは代品が無いので無視されるのでしょう。あまりこの低圧にチューブラコンを付けられるレストア屋さんはいません。

高圧1段目φ25です。これはチューブラコンが付いた状態での値です。
表示の通りLeakyでリークしています。
恐らくチューブラコンは大丈夫ですがφ25がリークしているのでしょう。

高圧2段目です。全体に表示の通りかなり膨らんでいます。
本来は50uFです。
普通はまだ使えると判断されるでしょうが、このφ35ブロックコンデンサーは音にとても重要なところです。
できれば交換をお勧めしています。
最初に1時間位聴いていると音が荒れて来たのも主にこのコンデンサーが温まって特性が変わってきたと推測します。


★早速検査です。

出力調整ボリュームの下段右側がA&Bに交換されています。
普通なら左右とも交換するのですが、恐らくまだ早い時期に右側だけガリが出たのでしょうか?
まだ新しそうなので最近かも知れませんが。

内部裏面です。電源の先頭のブロックコンデンサーにチューブラコンがパラに接続されています。
電圧が足りなかったのでしょうか?

内部上面です。以前他でのレストアで主なコンデンサー類は交換済みです。やはり歪のないきれいな音が出ています。
ボリュームがA&Bに交換されています。高圧セレンもダイオードに交換されています。
以外だったのは出力レベル調整の右側ボリュームがA&Bに交換されています。左右とも出力は最大になっていたので、音には問題無いとは思いますが、本来はボリュームは中間位置が一番良い音です。

最終出力レベル調整ボリュームに黒蓋が被っていたので気になって外してみました。
左右のレベルが違います。

使われている真空管です。右からV1, V2, V3, V4, V5, V6と並びます。
フォノイコには NATIONALE の刻印の12AX7A 3本、ラインには Philipsが2本で最終カソードフォロア管にお馴染みの松下12AX7Tが装着されています。

なぜわざわざ説明するかと言いますと、最初の音出しでフォノがRIAAが崩れているもののなかなか良い音だと思いました。
Telefunkenの煌びやかさとMullardの落ち着きがあります。

このNATIONALE の刻印は初めてみました。私もオーディオにはブランクがあるので知らない間に発売されていたのかも知れません。

以前から国産管は軽視していましたが、最近松下管12AX7Tの良さも再認識しています。

全体にきれいです。

Marantz7オリジナル 13000番台です。

本機は特に聴いていて問題は無いが、現状がどういう状態かともう少し良い音にしたいとのご意向です。

早速音出しをしました。
ラインは低音が少し弱く、上の画像のように最初の状態を観察するとトーンの低音を上げてあります。
やはりこの状態がベストのようです。
フォノイコは奇麗な音ですがRIAA偏差が崩れて、低域は弱く高域が目立っています。
全体には細い音です。

やはりMarantz7のダイナミック且つ繊細で奥行きのある音ではありません。
1時間位聴いていると音が次第に荒れてきます。電源です。


ヒーター電圧です。17.24Vでかなり下がっています。
本来の正規電圧は19.8Vです。
やはりブロックコンデンサーがダメです。
普通はこれでも許容範囲内なのでこのままにされますが、いずれ近いうちに限界が来ます。

ヒーター用低圧セレン直後の電圧です。
24.95Vと充分な値が出ています。良品です。