Marantz7 S/N 14000番台 修理依頼 概要

★トランス交換後の各電圧チェックです。


★やはり予想通り電源トランスの内部がショートしていました。


電源回路が酷い状態のまま使い続けると電源トランスもかなりのダメージを受け内部の巻き線はボロボロになってかろうじて電圧を出してきました。以前も何回も同じことが起きていますが、レストアで電源回路の部品を交換し各電圧が正常になると、これまでダメージを受けボロボロになった電源トランスは正常な電圧に耐え切れなくなり遂にはショートしてしまうことがあります。 これまでは早くて2,3時間、今回は2ヶ月でこうなりました。

以前からこちらのホームページに記載していますが、Marantz7の高圧B電圧の正規の電圧は280V近辺です。これが260V以下で使い続けると電源トランスに悪影響が出ます。特に電源電圧が117Vのところを100Vで使うと殆どの場合高圧B電圧は260Vを下回ります。これにセレンやブロックコンデンサーの劣化が加わるともっと下がり危険な状態になります。

本機は今のオーナー様が2ヶ月前にヤフオクで落札されノイズが出るので当工房にレストアを依頼されました。恐らく以前のオーナーは電源電圧も100Vで使い続け、ノイズが出るようになってショップに売りに出されたのでしょう。それをオークションストアがヤフオクに難有りとして出品されたようです。

通常Marantz7の部品としての電源トランスはどこにもありません。あるとすれば他のMarantz7から取り外したものです。当然そのアンプは再起不能に陥ったので部品取りになった筈です。そのようなアンプについていたトランスは同じように正常である筈はありません。
以前、某ショップから電源トランスが売りに出ていたので高額で取り寄せましたが1週間でダメになりました。

普通は電源トランスが逝って代替のトランスが無いので部品取りになるのです。

当工房では特注でMarantz7用新品の電源トランスを確保できます。


2023. 11. 2 検査
2023. 11. 17 修理完了

内部です。全く変わりませんが電源トランスを交換しています。

★修理後の試聴エージング風景です。


以前と同じ良い音を出しています。










出力波形です。綺麗な波形が出ています。

交換したオリジナル純正の電源トランスです。

こちらはこれから交換する純正の電源トランスで、念のため交換前のチェックです。画像は1次側のインダクタンスと1kHzでの交流抵抗値です。1次2次とも全て良好です。

こちらは取り外した不良の電源トランスです。こちらも単体検査をします。画像は同じく1次側のインダクタンスと交流抵抗ですが、やはり極めて低い値なので明らかに内部でショートしています。

同じく取り外したトランスの各絶縁抵抗を測ります。各極間で無限大です。漏電検査では検出できません。

取り外した電源トランスの高圧側リード線が継ぎ足されています。 恐らくこのトランスは以前交換されています。

それぞれの型番チェックです。年代が少し違うようですが同じオリジナル純正です。

左の白テスターは高圧B1です。283.7Vで良好です。中央はヒーター電圧です。18.13vでまあまあの値です。右テスターは高圧セレン直後です。325.1Vで良好です。

こちらの左白テスターは高圧B2です。260.7Vで良好です。

こちらの左白テスターは高圧B3です。238.3Vで良好です。

こちらの右テスターは低圧セレン直後です。25.92Vで良好です。

★ 修理完了です。                                            2023. 11. 17


交換する電源トランスについてオーナー様と相談の結果、当工房で確保しているオリジナル純正トランスに交換することになりました。

こちらは低圧のφ35です。こちらも3ブロックとも正常です。

高圧2段目φ35です。こちらも3ブロックとも正常です。

高圧先頭のφ25です。3ブロックとも正常です。






★前回交換した電源回路の電解ブロックコンデンサー等が破損していないかチェックします。

まず電源トランスの1次側のインダクタンスと1kHzの交流を流したときの抵抗値を測ります。インダクタンスは2/3まで落ちて交流抵抗は1.081kΩとほぼ無いに等しい状態です。電源トランス内部で巻き線の一部がショートしています。

因みに当工房所有機の正常な電源トランスの値です。インダクタンスは1742mH 交流抵抗値は36.8kΩです。

約2ヶ月前に当工房でオールバンブルビー化レストアを行ったMarantz7オリジナルです。今回突然大きなノイズと共にアースから火花が出たので修理を依頼されました。前回電源回路が非常に悪い状態だったので電源トランス以外の部品を全て交換しました。通常あれだけ悪い状態であれば電源トランスも逝ってもおかしくないところですが、他の部品の交換で正規の電圧が確保できたのと少し時間を掛けてエージングを行って問題無さそうなのでレストア完了としてお返ししました。
今回の症状を伺うといよいよ電源トランスが心配になります。

念のためコンセントN極 - アンプの筐体間の漏れ電圧を測ります。 AC5.87Vで極めてよい値です。