Marantz7-19000番台 レストア依頼機 M.T 様 概要

後ろのパネルの左右出力ボリュームが違う方向になっています。どちらかのゲインが低いようです。
真空管は6本ともMullardの新しいタイプです。このため真空管には問題は無さそうです。

2019. 7.10 検査完了
2019. 7.27 レストア完了

交換部品です。今回は電源廻りを中心にかなりのパーツの交換になりました。

★Marantz7-19000番台です。症状は聴いていると時々左の音が出なくなったりパチッという音が出るようになったそうです。

実際にこちらでも再現できました。一度電源を切ってまた入れるとちゃんと音が出るようになります。

最初の音出しでは、フォノの場合少し高域がきつくキンキンした音です。AUXからCDを聴くと普通に良い音が出ています。
このためラインアンプは特に問題は無さそうです。

高圧B3です。こちらも246.6Vを示し良い値です。

高圧B2です。こちらも264.6Vを示し良い値です。

★次に、電源を投入して各部の電圧を計ります。

★それでは電源投入前に各電解ブロックコンデンサーの検査から行います。

★レストアも終わりエージングを行っています。

漸くまともな音に戻りました。
今はビルエバンスのバラードを静かに奏でています。

バラードが終わり軽快なリズムに変わると途端に躍動感が溢れてきます。
歯切れの良い低音が響き渡ります。

勿論クラシックはさすがのMarantz7です。極めて透明感があり凛とした輝きを放っています。



























高圧セレン直後の電圧です。331.3Vを示し良好です。

★各電圧チェックです。 こちらは全て電源電圧は117Vで検査しています。

最初の音出しで左側の音が弱かったのは本機のボリュームがメキシコクラロの交換されていてギャングエラーが大きく、左右のレベルが大きく違うことがわかりました。
各回路のゲインを測定しても大差ありません。

低圧セレン直後の電圧です。28.94Vと良い状態です。

ヒーター電圧です。18.68Vとまあまあの値です。

高圧B3です。245.4Vを示しこれもいいですね。

高圧B2です。263.8Vを示しこれも良好です。

高圧B1です。287.2Vを示し良好です。

電源トランスの交換により電源N極-筐体間の電位は26.7Vと劇的に下がりました。

これは他のアンプの画像ですが、本機はこの細いレンチ棒(見易くするため)で支えている黒い撚り線が筐体とこの線の奥のブロックコンデンサーのベースの間に挟まって締め付けられていました。
これにより時折スパークしていたようです。
このスパークと短絡により片側の音が出なくなったりパツパツと言うノイズが出ていました。
いつの段階でこうなったのかはわかりませんが、以前レストアをされた方はこの線が挟まっていることに気付かずに組付けられたようです。
この様な状態は測定器やオシロでもなかなか状況が掴めません。かなり難儀でした。

裏面です。音に躍動感を増すために電源の抵抗を一部高級品に交換しています。
低圧セレンも劣化していたので交換しました。

こちらが交換した代品の電源トランスです。電解ブロックコンデンサーも正規仕様の代品と交換しています。
既に劣化の始まっていた高圧セレンも交換しました。

最終的には電源回路は全て交換になりました。電源トランス、電解ブロックコンデンサー3本、高圧低圧セレン。躍動感を出すために抵抗類も交換しています。
カップリングコンデンサーは最初の簡易検査では良品でしたが、個別に計ると静電容量がかなり変化しているものがあり、最終的には音に影響のあるところをGoldenBlackに交換し、フォノイコのまだ残っていたバンブルビーも、かなり音にトゲがあったので敢て160Pに交換しました。
カソードバイパスコンも#7純正SPRAGUEの新品に4本とも交換しました。
フォノイコのRIAA偏差用コンデンサーと抵抗を音の良いマイカコンとbishayの抵抗に交換しました。

★漸くレストアが完了しました。                                                                         2019. 7. 27

今回も思いがけず大変でした。

以下に最終的な状態を掲載します。
ここまでに至るまでなかなかの道中でした。




高圧2段目です。本来50uFのところ表示の通り75.00uFを示し1.5倍も静電容量が膨れています。このまま放置すると破裂して惨事になります。

今度は低圧のブロックコンデンサーです。ご覧のように3ブロック中2ブロックでLeaky表示が出てリークし不良です。
このようなリークはアース漏れが発生し各回路から漏れて様々なトラブルが発生します。

裏面です。こちらも横一列4本の小さなカップリングコンデンサーを160Pに交換されています。こちらも検査では良品です。
この他はオリジナルのままです。

ヒーター電圧です。17.10Vと少し低い値です。本来は19.8Vが正常値です。

低圧セレン直後の値です。25.21Vを示しこれもまあまあの値です。

★以上の検査の結果、電解ブロックコンデンサーがリークしていますが今のところ特に異常が来す程の状態ではないと思います。

念のため電源コンセントとアンプ筐体との漏れ電圧を計ってみると、右の画像のようにAC87.3Vもの漏れがあります。
ウッドケースに入っていると分からないかも知れませんが、つまみを回すときも指にぴりぴり来るのでもしかすると、と思っていました。
これは電源トランスの漏電です。

高圧の電源電圧も特に問題は無かったのでおかしいと思いオーナー様に使用電圧を伺うと前回他でのレストア後10年程100Vで使用していたそうです。
このレストア屋さんから100V使用で大丈夫と言われたのでこうしたそうです。
皆さん勘違いされています。

今回こちらでは勿論117Vで検査し、特に電力の食うヒーター電圧が17.1Vで低いため、これが100Vで使用されればこのヒーター電圧は恐らく15V以下になっていたことが推測されます。

こうなると電源トランスもかなり負荷が高く高温状態がずっと続いていた可能性があります。
このためじわじわと絶縁不良を起こし始めていたと考えられます。

トランスの絶縁不良は各回路に悪影響を及ぼします。
普通はまず動作電圧の低いフォノイコのどちらかのチャンネルが影響しますが今回はラインアンプです。
恐らくどこか端子のアース浮きも若干あるのかも知れません。

もう少し詳しく見てゆきます。

高圧B1です。284.3Vを示し良い値です。

高圧セレン直後の電圧です。322.2Vを表示しています。
少し低いですが何とか大丈夫です。

回路基板の表のフォノイコのカソードバイパスコン初段左側です。
こちらも規定200uFのところ304.3uFもあり不良です。

こちらは右側で同じく325.8uFで不良です。

高圧の初段φ25です。3ブロック中2ブロックでご覧のようにLeaky表示でリークしています。

内部です。以前どこかでカップリングコンデンサーを160Pに全て交換されています。
今回の検査では殆どのカップリングコンデンサーは良品でした。
また高圧セレンも交換されています。電源の電解ブロックコンデンサー3本はオリジナルのままです。
フォノイコのRIAA偏差のコンデンサーも交換されています。またフォノイコの真空管2段目のカソードバイパスコンのみ交換されていて初段はオリジナルのままです。表面に塩を吹いています。