Marantz7 レストア依頼機 21000番台 I.K 様 概要

本機のオーナーの方は約1年前にこちらで同じMarantz7オリジナルSN21000番台を修理レストア依頼された方です。
今度はこの2台目の21000番台がレコードを聴いていると突然右側から音が出なくなり、裏を覗くとV2の真空管が白化しているのがわかったそうです。
また、そのうちすべての真空管のヒーターが点灯しなくなり音が出なくなったそうです。

2018.7.10 新規掲載

2018.7.15 レストア完了

★ 検査状況です。                                                        2018. 7.10


2段構成のセレンです。

高圧B3でこれがフォノイコのドライブ電源です。
音に異常が出てくるのはフォノイコからが多く、このB3の電圧が低下することが原因です。
電圧が下がると抵抗やコンデンサーに負担が掛り劣化を促進します。
しかし、この位であればまだ十分な値です。
やはり2段目のブロックコンデンサーがまだ劣化が少ないため電圧を維持しているようです。

内部裏面です。
横一列の小さなカップリングコンデンサーもブラックビューティーに交換されています。全て良品でした。
電源回路はブロックコンデンサーと低圧セレンを交換しています。
気になった渡りの配線の結束も外し通常の状態です。


これで漸くいつものMarantz7オリジナルの音が蘇りました。
良い音です。

また、オーナー様のご依頼でフォノの真空管を一緒に送って頂いたMullardに交換してみました。
やはり中低域で厚みが増し、高域ものびのびと出てとても良い音だと思います。





2時間位エージングを行っています。なかなか良い音になってきました。
電源回路を全て一新したので音で大事な中音域が極めて透明で伸び伸びとした音に変わります。
電源はとても大事です。

いつものベートーベンの交響曲1番がホールいっぱいに鳴り響き、打楽器の低音がデーンデーンと響きます。
決してボン付かず力強い低音の轟き、そして爽やかなバイオリンのしらべ。


これがMarantz7オリジナルの音なのです。








内部ではフォノイコのカソードバイパスコンは全て純正SPRAGUEの新品に交換しました。
このコンデンサーの良否がフォノイコの音を変えます。
純正は殆ど値が膨らみ、中には抜けてしまっているものもあります。
こうなると音がぼやけ、音の輪郭も弱くなり汚い音になります。

電源のブロックコンデンサーと高圧セレンも全て交換です。
各カップリングコンデンサーは全て大丈夫です。
気になったイコライザーのフィルムコンデンサーですが、試聴ではなかなかの音でしたのでこのままにしています。
ボリュームも交換してありましたが特に問題は無く、純正クラロスタットのようにかなり上の方の角度で普通に聴けるので良い音です。
バランスボリュームもガリも無く滑らかな変化です。

裏面のトーン回路の特殊なカップリングです。
片側に亀裂が入っています。

レストア後最初の音出しで、低音がボン付いて中高域も汚い音なので気になっていました。

下記画像のようにいつもの純正SPRAGUEに交換しました。
やはり音は低域が締まり、歯切れのよい低音です。
全体のひずみも消えてとても良い音です。

フォノイコのB3です。とても良い状態です。

高圧B2です。これも良い状態です。

次に高圧B1です。
これも272.7Vを表示します。また、時間の経過と共に徐々に上がって行くのでとても良い状態です。

今度はヒーターセレン直後の電圧です。
25V以上出ているので十分です。


ヒーター電圧です。少し低い値です。恐らくセメント抵抗の値が増えているのでしょう。この程度であれば問題ないと思います。
各真空管のヒーターも正常に点灯しています。
また、このヒーター電源から採っているパイロットランプも明るく点灯しています。

最初に高圧セレン直後の電圧です。
324.6Vとまずまずの電圧です。

レストア完了                                                            2018. 7.15


最初にこちらに届いた時には電源不良のため真空管が全て点灯しなかったので音出しもできなかったので、まず全ての電源回路部品を交換しました。
このため、電源の修理後の各電圧の状態から紹介します。






★それでは電源各部の電圧検査です。

★以上が検査結果です。

概ね、電源部を殆ど交換すれば元通り音が出ます。
また、フォノイコのカソードバイパスコンも4本とも交換です。

カップリングコンデンサーは以前レストアされたのですべて良品と判断して交換する必要はありません。
しかし、音質的には160Pなのであまり期待できないでしょう。この辺りはオーナー様と相談です。

このオーナー様はレコードに力を入れている方なので、こちらとしては気になるところがいろいろあります。
特にRIAA偏差に影響する0.0056uFはフィルムコンデンサーに交換されています。
できればこれをマイカコンに変えたいと思います。並列に入っている抵抗もOhmiteかAMtranceに交換すれば歯切れのよい低音が期待できます。
Marantz7独特の正帰還のコンデンサーもマイカに変えるとどうなるか、今回はこの辺りを気合を入れて調整してみたいと思っています。









これは低圧セレン直後の電圧です。通常は25V位ですからこのセレンもかなり劣化しています。

どういう訳かボリュームはメイン、バランスとも交換されています。
本機はオリジナル後期型で純正は日本の東京コスモス製です。

中を見ると、以前どこかでレストアしたのでしょう、すべてのカップリングコンデンサーはブラックビューティー(160P)に交換されています。
簡易検査では全て良品です。
電源ではセレンが交換されています。しかも直列2段構成です。恐らく耐圧が心配だったのでしょう。セレンは直列に配置すれば耐圧が上がります。
その他では、些細なことですが基板との渡り線がすべてインシュロックで束ねてあります。電源線は問題ありませんがフロントパネルに繋がる信号線を束ねると左右の音のクロストークが悪くなり臨場感が損ねます。
Marantz7の配線の取り回しは、敢えて平行線で配置し音に重要なところは左右を離して配線することにより圧倒的な臨場感を得られています。これに対してMcIntoshの配線はかなりいい加減で、至る所でツイストさせているのでクロストークが悪く臨場感は期待できません。
今回の本機の結束も後でレストアの時すべて外します。

しかし、ヒータ電圧は上記の様に15.83Vあるのでヒータは普通に点灯する筈ですが上記画像の様に全て点いていません。

念のためすべての真空管のヒータ抵抗を計ってみましたが、右の画像の様に規定の値が出ます。

勿論配線も異常ありません。


考えられるのは電源のヒータ用ブロックコンデンサーの中でどれかが極端にリークしてアースと短絡状態になってしまい、電流が充分に供給されないのではないかと思います。

恐らくブロックコンデンサーを交換すれば正常に戻るでしょう。

最後にヒータ電圧です。規定は19.8Vですが、ご覧のように15.83Vしかありません。
やはり電解ブロックコンデンサーの不良から電圧低下を起こしています。

高圧B1の値です。268.6Vを示しています。
規定は280Vです。
まだこちらで定義している限界値240Vよりも高く、この値なら正常値と言っても良いくらいです。

高圧B2の値です。B1の低下に伴ってこの値も低下しています。
しかしB1の低い値の割にはまだ良い状態です。

まず最初にセレン直後の電圧です。
電源投入後5分経過の安定した電圧での値です。
テスターでは313.1Vを示しています。
通常は330V位ありますから、少し低下しています。

しかしまだ300V越でましな方で、結構300V以下のものもあります。

フォノイコ2段目のカソードバイパスコンの右側です。計測不能を示しています。
左側は何とか正常です。
このためV2の真空管の白化はこのバイアス系に問題があったのが直接の原因かも知れません。
抵抗類の焼損があるのかも知れません。後で詳しく診ますが電源異常からくることが殆んどです。

フォノイコ初段のカソードバイパスコンは左右とも容量が倍に膨れ上がっています。
規定は200uFのところ405.4uFを示しています。

まず高圧B電源の初段電解ブロックコンデンサーφ25です。3ブロック中2ブロックでご覧のようにLeaky表示で不良です。しかもこれはESRが異常に高い値を示しています。
高圧2段目のブロックコンデンサーは3ブロックとも良品でした。

電解ブロックコンデンサー最後の低圧ヒーター用です。
ご覧のようにこれも2ブロックがLeaky表示で不良です。

次に信号系の電解コンデンサーを調べます。

これがゲッターが白化したV2の真空管です。何らかの原因で真空状態を維持できなくなったようです。