Marantz7 レストア依頼機 21000番台 I.K 様 概要

検査の結果セレンが完全に壊れていました。順方向の抵抗も大きく、逆方向も導通していたため整流が行われず、これに伴ってブロックコンデンサーが全て抜けてしまっています。 このためノイズが大きくなったようです。
また、音漏れの原因はヒーター用低圧のブロックコンデンサーの異常です。これに伴ってヒータ回路から音が漏れて他のチャンネルの音が聞こえます。
今回時間が掛かったのはこの低圧用ブロックコンデンサーの入荷待ちでした。一般には100%交換されません。(できません)

セレンは復刻の新品と交換です。

基板表のバンブルビーは全て交換になりました。今回通常レストアのためバンブルビー以外の代品でレストアしています。
こちらでは組み合わせでバンブルビーに近い音が出せますが、今回裏のカップリングにビタミンQが使われていましたのでこれにあわせてコーディネートしました。ラインアンプは0.22uF4本ともGoldenBlackです。
オーナー様のご指摘で、トーンコントロールが効かなかったのもこれで解消しました。

セラミックは今回SPRAGUEの小さいものに交換です。これで音が締まってきます。
他のショップで同じSPRAGUEの大きなものに交換されていますが、気持ちダラーとした音に聴こえます。以前レストアの時オーナーの方の持込みで交換しました。

フォノイコは前段中段のカップリングはGoodAll(TRW)に交換、終段カソードフォロア後のカップリングはバンブルビーの良品に交換しました。ラインアンプと同じGoldenBlackにすると音がきつくなるし、前段のGoodAll(TRW)にするとぼやっとした音になります。
ここはやはりバンブルビーです。
RIAA偏差用0.0056uFは高級マイカコンに交換されていましたが検査の結果良品です。音もしっかりしています。

ボリュームも交換されています。ボリューム本体はどれも良品でしたが配線がいまいちです。アースの取り回しを変えました。

これが入力端子に入れられた抵抗です。

今回のレストアでオーナー様から試聴の感想を頂いていますので原文のまま掲載します。


この度のレストアでは、大変お世話になりました。

お陰様で我が家の#7は、生き返りました。
オールカラーコードへのレストアではありませんでしたが、森川様の様々なトライで素晴らしい仕上がりにしていただきました。

心より御礼申し上げます。

今日、日本盤ですがEPICのチャーリー・ラウズの『YEAH』を聞いておりましたが、
ペック・モリソンのウッドベースが重くふくよかに聴くことが出来ました。

正に森川様の仰る【モリカワチューン】であると思いました。
レストア後の私の印象をご報告方々お伝えさせていただきます。

またの機会にもどうぞよろしくお願い致します。

ありがとうございました。











★ こちらの依頼では聴いているうちにザーとノイズが出ると言う症状です。
また、以前のレストアで電源にコンデンサーが追加されているので電源回路も見てほしいとのことです。

早速音出しをしました。
電源投入後5分程でザーとブーンと言う音が混ざったノイズが発生し、どんどん大きくなってきます。
ボリュームを絞っても変わりがないので急いでプリのみ電源を切り収まりました。

★恐らくセレンが異常でしょう。少し時間が経って温まってくると抜けるようです。
これに伴ってブロックコンデンサーも異常となりますが、これまで何とか何本かは持ちこたえて、以前レストアされた方はチューブラコンを2本追加されて何とか音は出ていたと推測します。
しかし、今回はとうとうセレンが全く整流できなくなりブロックコンデンサーも過大なリップルで全てがダメになったようです。
恐らく追加されているチューブラコンデンサーも抜けています。

★内部を見てみるとボリュームの周りのアースが1本断線しています。前回ボリュームが交換されているのでこのときの配線ミスと考えられます。
また、
入力端子に抵抗が入れられています
恐らく音漏れがありこれを防ぐつもりで入れられたのでしょうが、前のレストアされた方は音漏れの原因が電源不良にある事が知らなかったのかも知れません。

一般にMarantz7オリジナルは音漏れが普通だと思っている方が多いと思いますが、そんなことはありません。
電源が異常です。電源回路のブロックコンデンサーのどれかのブロックがリークしています。

★音は少し低域が膨れているので裏の0.33uFが膨張しているでしょう。
また、表はバンブルビーですが全体に少し丸みを帯びた音です。恐らくどれかのバンブルビーはかなり抜けています。
コンデンサーは不良になってもぼやっとした感じで或る程度音は出ます。歪が出てくるのは完全に抜け切った場合です。

電源回路にチューブラコンデンサーが2個追加されています。

★ レストア完了です。                                                    2017. 8. 13

今回かなり時間が掛かってしまいました。
不良のヒータ用ブロックコンデンサーの入荷が遅れていました。

入力端子に追加されていた抵抗は全て外しました。アースもかなり浮いていましたが念のため渡りを取って置きました。

基板裏の一列のカップリングはビタミンQに交換されていますが良品なので再利用です。
下の2個のオレンジ色のコンデンサーは少し容量が膨らんでいましたが何とかまだ使えそうなのでこのまま使用します。

抵抗も数本交換しました。



以上の結果、音はとてもきれいな良い音です。電源がしっかりしているのでオールバンブルビーと比べても遜色なく、ダイナミックさは少し劣りますが澄み切ったクリアーな音です。



改めて内部です。青いカソードバイパスコンは4本とも交換しました。

苦肉の策だった低圧セレンは代品に交換しました。
ついでにオーナー様の要望でトーン回路の0.33uFも黄色のSPRAGUEに交換しました。

★今回も最後にノイズに泣かされました。
まさにまさかの展開です。普通の部品を使ってあれば起きない現象です。
やはりビンテージアンプ、しかもプリアンプは正常な音を出すだけでも至難の業です。どのレストアされる方でも大変なご苦労をされていると思います。

今回は残念ながらそのご苦労が仇となってしまったようです。
こう言うことは新品のアンプでは考えられない事柄です。どの設計者も思いもよらないでしょう。
私も良い経験をさせて頂きました。




最終的な音はとても良いものです。
いつもバンブルビーに聴き慣れていますが、これはなかなかの音です。
真空管がムラードなので特に中音域に厚みがあり雄大な音です。またバンブルビーの様にクリヤーで臨場感に溢れています。







★今回はオールバンブルビーではなく通常レストアなので交換用コンデンサーはいろいろなものを選択してなるべくバンブルビーに近い音を目指しています。

まず、一番音に影響のあるライン部の0.22uF/400Vと最終段カソードフォロア後の0.22uF/200VはアムトランスのGoldenBlackにしました。

このコンデンサーは160Pなどよりも遥かに良い音です。音の抜けが良くバンブルビーに近い音だと思っています。
ただ、全部をこのコンデンサーにすると少しきつい音になり、特に大事な中域が薄く感じられます。
このためこちらではGoodAll-TRWや今回のようにビタミンQなどと、セラミックで調整しています。

今回も先に付いていたビタミンQを最近流行の高級なメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサーに換えてみましたが
予想通り全体に薄い音になり、また元のビタミンQに戻しました。
いつもは最終段0.22uF/200VGoodAll-TRWにし、その他をGoldenBlackにして中域の厚みを出しています。
今回はこのビタミンQが音の厚みに一役買っています。
 
フォノイコはもっと難しく、オールバンブルビーでもなかなか良い音にはなりません。
今回は0.0056uFにマイカーコンが付いて良品でしたのでなかなか面白い構成です。
前段にGoodAll-TRW、中間は付いていたビタミンQ、最終段はやはりバンブルビーです。
これで何とか宿敵?EMTのフォノイコと勝負ができます。(EMTの回路構成はmodel7と同じですが色付けが違うようです)
勝手に思い込んでいます。

しかし音は良かったのですがノイズの関係で最終的にはマイカコンは外して普通のフィルムコンデンサーにしました。

セラミックもいつもの純正SPRAGUEでは無く同じくSPRAGUEの小さいタイプを選んで締まりを出しています。


これ等の選定で、音は自分ではかなり満足しています。 これぞ!モリカワチューンです。

これなら自信を持ってオーナー様にお返しできます。

★ 再レストア完了です。                                                           2017. 8. 17

レストア完了と思い最後にエージングを行っていると、しだいにフォノイコ回路からのノイズが気になり始めました。
もう一度各部の見直しです。

最初のレストアで見送った青いカソードバイパスコンがやはり2本不良でした。前回他でレストアされた時交換されたようでしたが早くも不良です。
しかしこれはノイズとは直接関係ありません。

次に交換を見送ったRIAA偏差用0.0056uFのマイカコンですが、これを代品の普通のフィルムコンデンサーに交換すると幾分ノイズは小さくなりました。
やはりここもセラミックと同様に仕様の違う部品に交換すべきではないようです。

最後にまだ交換していない低圧セレンですが、これは前のレストアの時セレンが不良だったのかダイオードが並列にブリッジでこのセレンに取り付けられていました。代品が無かったのか苦肉の策のようです。
一応簡単な検査では機能しているようなので交換しなかったのですが、今回改めてこちらで代品に交換すると途端にノイズが消えました。
やはりこのセレンでした。いくらダイオードで組んでもセレンから逆方向の電流が漏れれば整流にはなりません。
これがアースと干渉して一番敏感なフォノイコ回路に影響が出たようです。

今回も電源部を初めたくさんの部品を交換しました。

高圧セレンとブロックコンデンサー3本は新品交換です。

ヒーターセレンは不良だったのかダイオードが並列に入っています。
一応機能しているので交換せずに再利用しました。