2019.10. 23 掲載
2019.11. 9 レストア完了


★レストア完了です。                                                 2019.11. 9

今回は思いがけず大幅に手を加えることになりました。

まず電源は高圧低圧のダイオードを除いて全て交換です。電解ブロックコンデンサー3本はフレームを含めてアッセンブリー交換しました。
気になる電源トランスも今後の事もあるのでオーナー様の了承を得て復刻用新品のトランスに交換しました。

各カップリングコンデンサーも主なところはいつもオリジナルのレストアに使う音の良いものに交換しています。

この段階で一度試聴すると、セレクターで音漏れが出ることに気付き、Marantz7に良くあるRCA端子の腐食からアース浮きを確認しました。
この為、全てのRCA端子に渡りを掛けています。

これでまた試聴しとても良い音でかなりの時間エージングを行っていましたが、今度は左右の音量の違いが気になりました。
本機のボリュームは復刻#7なので純正ではメキシコクラロが付いています。

経年の劣化で固着して回転も重く左右の抵抗値もかなり違っています。いわゆるギャングエラーです。
詳しく計ると最初から終わりまでリニアに抵抗値が大幅に違います。

今度もオーナー様の了解で、いつもお勧めしている東京コスモス製の新品に交換しました。
この抵抗はMarantz7オリジナルの19000番台あたりからの後期型に純正で使われているもので、#7kや復刻#7に使われているメキシコクラロより遙かに良い音です。

それでは以下に内容を紹介します。


最終の内部上面です。カップリングコンデンサーはGoodAll-TRWに交換し音の要にGoldenBlackとWE仕様TRWに交換しました。
フォノイコのカソードバイパスコンも全て純正SPRAGUEの新品に交換しました。
RIAA偏差のコンデンサーも音の良いマイカコンに交換しました。

RCA端子に渡りを掛けました。これでアーズ浮きは完全に解決しています。

交換した新品の復刻#7用電源トランスと電解ブロックコンデンサー3本組アッセンブリーです。

メインボリュームを音の良い東京コスモス製に交換しました。

内部裏面です。横一列の小さなカップリングコンデンサー4本も音の良いGoodAll-TRWの新品に交換しました。
ラインアンプ初段のプレート抵抗も音の良いAMRGに交換しました。

★レストア後の各部の電圧チェックです。

高圧ダイオード直後の電圧です。336.6Vを示し良好です。
電源トランス交換の効果が出ています。

高圧B1です。285.9Vでとても良い値です。

高圧B2です。267.0Vでとても良い値です。

高圧B3です。こちらも247.2Vでとても良い値です。

ヒーター電圧です。20.86Vを示しています。こちらはレストア前と余り変わらなく少し高い値です。
このままでも特に問題はありません。

低圧ダイオード直後の電圧です。28.23Vでこちらも電源トランスの交換とは関係なく少し高い状態です。
恐らくこれは整流ダイオードの特性に依るものかも知れません。

メインラインで筐体間に1.5Ωの抵抗を検出しています。

★アース浮きの検査です。

こちらはフォノイコのアースです。こちらも筐体間で19.0Ωもの抵抗があります。

← いずれもRCA端子の渡りで解決しています。

最終的な出力波形です。左右ともきれいなサインカーブを出しています。
見えにくいのですが測定器右下のミリバルのメーターには左右とも同じ出力電圧が出ています。

交換部品です。今回は大物が多くメキシコクラロもあります。
パイロットランプも暗かったので新品に交換しました。

★ただ今試聴しています。

とてもきれいな音になりました。

これは他の#7オリジナルよりも良い音です。復刻#7もここまでの音が出せるのです。
やっと納得の行く音になりホッとしています。



手前のジャケットはビバルディの室内楽で弦楽四重奏です。

湖畔の水辺に佇み静かに湖面を漂うかの如く爽やかな音を聴かせてくれます。

またJAZZも極めてダイナミックな力強い音を聴かせてくれ、レンジの広さを感じます。







★各カップリングコンデンサーは今のところ問題無い状態です。

やはり電源の電解ブロックコンデンサーは3本とも不良なのでこの機会に交換されれば良いかと思います。

しかしこれだけ悪い状態で音に余り影響が無いのは不思議です。
オリジナルであればかなりにぎやかな副音声(雑音)が出るでしょう。

恐らく高圧の整流はダイオードなので、セレンと違ってきちんと直流に直してくれていますからブロックコンデンサーが多少ダメでもハム音は出ないのでしょう。
リプルが乗って音が荒れて来るだけです。
ヒーターも昔はAC点火だったので脈流が出ようが電圧さえ出ていれば真空管は普通に動作します。

ただ、やはりMarantz7の音にはなりません。
折角のセブンです。きちんと良い音が出れば良いのではないでしょうか?


電源トランスが気になります。2次側にこれだけ高い電圧が出るのは1次側で一部の巻き線がショートしている可能性があります。
筐体の漏れ電圧(漏電)も高い値です。フロントパネルを触るとピリピリ感じます。(N極と筐体間でAC52V、L極ではAC198V)
その内、家の漏電ブレーカーが落ちるかも知れません。

ヒーター電圧です。20.96Vとこちらも少し高い値です。

購入してからかなり時間が経っているのでどういう状態か見て欲しいとのご依頼です。

最初に音だしをしてみました。
普通に復刻7の音のように聴こえます。しかし少し荒れた音で時間の経過と共に歪も感じます。
低音が膨らんでいます。
ノイズとか異音も感じません。

低圧整流ダイオード直後の電圧です。28.68Vとこちらもかなり高い値です。

高圧B1です。292.1Vでこちらも高い値です。

高圧B2です。271.5Vを表示しこちらも高い値です。

高圧B3です。こちらも251.3Vを示し高い値です。

左のダイオード直後が高かったのでトランス2次側出力電圧を計りました。291.0Vとやはり10V程高く出ています。
嫌な予感です。

高圧整流ダイオード直後の電圧です。341.9Vを示し少し高い値です。

←左右とも容量が1.5倍に膨れて不良です。

★電源を入れて各部の電圧を計ります。

高圧2段目です。こちらは3ブロックとも静電容量はありますが、不思議と3ブロックともESRは高く、不良です。

低圧用です。こちらも3ブロックとも計測不能で完全に不良です。

高圧先頭のφ25です。ご覧のように3ブロックとも計測不能の表示です。
完全に機能していません。

★フォノイコのカソードバイパスコンです。

裏面です。こちらも全く手を加えてありません。

★電源を入れる前の電解ブロックコンデンサー及びフォノイコの電解コンデンサーのチェックです。

内部です。殆ど手を加えていない状態です。

復刻Marantz7R  レストア依頼機 I.K 様 概要