復刻Marantz7R レストア依頼機 S.M 様 概要
2018.11. 19 初掲載
2018. 11.28 レストア完了
2018. 12. 5 再レストア完了
★本機はMarantz7の復刻版(レプリカ)です。ワンオーナーのようで、お送り頂いた時入っていたダンボールは本機の製品のものです。
大切に仕舞われていたのでしょう。本体にも全く傷や汚れはありません。
復刻と言えどMarantz7の音を継承しています。真空管だけはMarantzロゴの中国製が純正で付いているので余り良い音ではありませんが、本機のオーナー様はしっかりTelefunkenのNOS6本組に交換されています。
恐らくMarantz7らしい、かなり良い音で鳴っていたと思います。
しかし、復刻ももうかなりの年数が経って、こちらにもレストアに入っているものがありました。本機もいよいよ各部が劣化しているようです。
カソードバイパスコンデンサー4本とも交換しました。
ラインのセラミックコンデンサーも交換しました。ここは音にかなり影響の有るところなので特性を見ながら選定しました。
★再レストア完了です。 2018.
12. 5
先のレストア完了からまだエージングを続けていました。
それからオーナー様から検査で良品だった部品を念の為に交換して欲しいとの依頼があり
1 イコライザの、カソードバイパスコンデンサ
2 トーン回路のカップリングコンデンサ
3 終段の、セラミックコンデンサ
を交換しました。
高圧B2です。257.2Vを表示し正規電圧258Vに近い値です。
★レストア後の各部の電圧です。
まずは追加されたチューブラコンを計ってみました。
何と!3本中1本はリークして不良です。(Leaky表示)
高圧2段目のブロックコンデンサーです。これも3ブロック中2ブロックで表示の通り計測不能です。ここまでの表示はめったにありません。ESRも異常に高い値です。
これも左の3ブロック中2ブロック目の表示です。
トーンのカップリングも黄色のSPRAGUEに交換しました。
★音にかなり影響のあるセラミックとトーン回路のカップリングを交換しました。
この為、これまでとは違った雰囲気が出ます。
これでかなりオリジナルの音に近付いたと思います。
交換部品も増えました。
背面の出力調整ボリュームです。この状態は中間位置です。
よくこのボリュームを最大位置にされる方がいますがボリュームは最初と最後はあまり音が良くなく、中間位置が最も良い音です。
本機のボリュームも中間位置が周波数特性が良い位置だったのでここに合わせておきました。
内部裏側です。電源部はアッセンブリー交換なので全て新品です。
横一列の小さなカップリングコンデンサーは音の良いGoodAll-TRWの0.01uF/400Vを使いました。
内部上面です。殆どの主なカップリングコンデンサーを音の良い新品に交換しました。
フォノイコのRIAA偏差を決めるコンデンサーもマイカコンに交換しました。
セラミックは検査の結果良品なのでそのまま使用しました。
セレクタースイッチ回りです。
音漏れ対策でフォノ2系統のみシールド線に張り替えてみました。
これは余り効果は無く、音漏れは別なところのようです。
Marantz7の良くないところは復刻にも出ています。
裏のRCA端子のアース浮きです。取りあえず全体に渡りを掛けて置きました。
これでかなり音漏れは小さくなりました。
★本機のレストアは先週のうちに殆ど終わっていましたが、音漏れを重点的にチェックしていたので完了が遅くなりました。
結果的には電源のブロックコンデンサーを全て新品交換したため変なノイズや音漏れは気にならなくなりました。
しかしフォノイコだけはAUX,TV等からの音が微かにきこえます。
上記画像のようにPhono1,2の入力線をシールド線に換えてみましたが効果はありません。
裏のRCA端子のアースもかなり浮いていたので念のため渡りを取っておきました。これは結構良かったのですがそれでもまだ音漏れが残ります。
最終的にはフォノイコの基板裏面の渡りが少し浮いていた(0.8Ω前後)のでライン側と繋ぎ、これがかなり効果がありました。
Marantz7のアースラインはかなり変なので、復刻では完全コピーはできなかったのでしょう。
恐らく全ての復刻#7共通の問題です。
厳密には、やはりフォノイコにAUXの音が漏れます。しかもボリュームをかなり上げないとわからない位です。
こちらの#7オリジナル2台も確認すると同程度の音漏れがあるので、これがMarantz7なのかも知れません。
これまで余り気にならなかったのですが、やはりMarantz7は変なアンプです。
しかし良い音が出ます。
本機もこれまでレストアして来た#7同様、中高域が煌びやかでどっしりとした低域はとても良い音だと思います。
ヒーター電圧です。20.11Vを示し少し高い状態です。しかしこの位の方が良いと思います。正規は19.8Vなので0.3V多い程度です。
低圧のダイオード直後の電圧です。
27.91Vと少し高いですが充分良い値です。
高圧B3です。238.3Vを表示し正規電圧240Vに近い値です。
復刻#7に使用されているブロックコンデンサーです。
AeroM ASSEMBLED IN MEXICOと表記されています。
純正とは言え意外に早く完全パンク状態になりました。
この銘柄はMarantz純正との宣伝文句で最近汎用品で売られています。
よく見るとφ25の初段の値は30+30+20uFでオリジナルの正規の値ではありません。しかも先頭のブロックの耐圧が350Vと低く、やはり寿命は短かったようです。
電源投入直後は整流後の電圧が370V以上まで上がるので、ここは絶対400V必要です。
オリジナル#7の純正SPRAGUEも先頭の耐圧は350Vですが、やはりこのφ25のブロックコンデンサーがよく壊れます。
こちらで使用する代品のブロックコンデンサーは全て耐圧400V以上なので当分の間持つと思います。
今回の交換部品です。
ブロックコンデンサーアッセンブリーと殆どのカップリングコンデンサーです。
この他に小さな抵抗類も交換しています。
まずは高圧のダイオード直後の電圧です。
337.4Vと充分良い値です。
高圧B1です。277.2Vを表示し正規電圧280Vに近い値です。
電源の電解ブロックコンデンサーを3本ともアッセンブリーで交換しました。
低圧は検査ではまだ何とか使えるかも知れなかったのですが、他がもうパンクしている以上これも異常を来たすのも時間の問題なので3本とも交換することになりました。
ただ、復刻の場合低圧のブロックコンデンサーはφ25の小さいタイプを使用しています。
この為こちらではオリジナル用φ35の大きいタイプしか準備していなく、コンデンサーベースを含めたアッセンブリーで交換することになりました。
右画像は全てのブロックコンデンサーをオリジナル仕様で交換した状態です。
これで音漏れは激減しました。しかしまだ少し残っています。
どこか他にアース浮きがあるようです。
こちらもラインアンプの最終のカップリングです。
1.096MΩでこれも絶縁抵抗は無いに等しい値です。
(この測定器では4000MΩ以上がOL表示で無限大です)
ここはプリアンプ最終のカップリングなのでこのままでは、例えばマッキンのパワーアンプに繋ぐとスピーカーに異常が出ます。
Marantzのパワーアンプは大丈夫ですが、McIntoshのパワーアンプはどれも入力安全用カップリングを割愛されています。
マッキン考になりますが、C20やC22なども新しい場合は良いですが最終カップリングが劣化すると同じ様に危なくなります。
Marantzは後のことも考えて全てのパワーアンプには安全用カップリングコンデンサーが入っています。当時は危ないプリもあったのでしょう。
しかしこういうものは無い方が音は良い筈なので、それぞれの考え方に依るようです。
★完全無傷と言ってよいほどきれいです。外観は真空管ケーズ以外はほぼ新品状態です。
それでも磨けばまだ光沢は出て元通りきれいな状態になります。
復刻の真空管ケースは年数が経つと割れてきます。よく見るとこれはオーナー様が最近交換されたようです。
元はEBYですが、本機はCINCH U.S.A.になっています。これなら割れて外れることはありません。
★まず事前にお聞きした症状をそのまま上げてみます。
1 音漏れ
入力端子により、もれ方が違います。
PHONO入力は、ボリュームを絞ってもかなり、もれます。
FM-AM入力は、ほとんどもれません。
FM TV AUX は、かなりもれます。
2 雑音
FM TV AUX は、ザーというノイズが出ます。
3 発信音
FM TV AUX は、電源入力後、初めのころは、発信音がでます。
その後、時間とともに、ほとんど出なくなります。
スイッチの切り替えなど、振動があると、でます。
FM-AM は、ほとんどでない。
4 スイッチ切り替え時のノイズ
入力切替スイッチの TAPE HD と FM-AM に切り替え時。
ハイカットフィルター OFFと5Kの切り替え時。
症状から推測すると、スイッチの切替ノイズはカップリングがどこかで不良です。それ以外は電源が異常でしょう。
★レストア完了です。 2018. 11. 28
この画像は前にレストアされた方が高圧先頭のφ25ブロックコンデンサーの配線を全て外し、チューブラコンデンサーに換えられたことを表します。
このφ25ブロックコンデンサーは一般に同じ仕様のものは代品では無く、いつもレストア屋を泣かせます。
高圧2段目はよく似た仕様の代品がマロリーから出ているので一部のレストア屋さんは回路を改造して凌いでいます。
当工房では完全正規仕様のブロックコンデンサーを使い、これ等改造されたものを元に戻し、Marantz7本来の卓越した良い音を取り戻しています。
★いつもは電源回路の各部の電圧を計測しますが、本機はブロックコンデンサーの極端な劣化不良から、電源投入が危険な状態だと判断します。
これだけ悪い状態では、最悪ではトランスと真空管を破損する恐れがあります。
事前にご指摘頂いた症状も納得できます。
このため、電圧チェックはブロックコンデンサーを交換した後で行います。
電源回路で、高圧先頭のφ25ブロックコンデンサーが抜けていたのか前にレストアされた方はこのコンデンサーからの配線を全て外し、新規にチューブラコン3本を追加されました。取付け用のラグ端子まで追加されています。
復刻純正のメキシコクラロスタットのボリュームです。外観は奇麗です。
電源は前のレストアで一部改造されているようです。
★内部上面です。殆どのカップリングコンデンサーは経年で色が変色し、一部膨らんでパンク寸前です。
★以上のように本機は外観の奇麗さとは裏腹に状態は非常に悪く、オリジナルほど年数は経っていないにも関わらず、現状では危なくて電源も入れられない状態です。
しかし、オリジナルのようにセレンを含めて電源回路を全て交換する必要は無く、カップリングコンデンサーもいつもこちらで使う代品を組み合わせれば安価にて正常な#7オリジナルと変わらないくらい良い音になります。
楽しみです。
これはフォノイコの2段目増幅管後のカップリングコンデンサーです。
表面では唯一OL表示で無限大を表し良品です。
ただし、ここはフォノイコの音質に大きく影響する所です。できれば音の良いものに交換したいところです。
フォノイコの最終カップリングコンデンサーです。
本来はインフィニティ(∞)ですが、ご覧の通り29.87kΩと絶縁抵抗は無いに等しい値です。
表面の主要カップリングコンデンサーです。
画像のように3本とも膨れ上がりパンク寸前です。
低圧ヒーター用ブロックコンデンサーです。Hi Cで正常です。
しかし、通常音漏れはこのブロックコンデンサーの異常の場合が多いので、音を聴いてみなければ良品かどうかわかりません。
ブロックコンデンサーは新品でも測定値が正常で不良の場合があります。音響用は特に注意が必要です。
★早速検査です。
←前にレストアされた方はMarantz7の「音のスピード」を理解されていなかったようです。
追加されたチューブラコンは一般的な常識で考えられて仕様の違う39uF/450Vを選択されました。
本来ここは20uF/400Vです。この為、純正と同じ仕様を3本選択されれば高さの低い小さなコンデンサー済み、ラグ端子の追加までも必要なかったはずです。
やはりリプルを嫌って、どうしても容量の大きいコンデンサーを選びたくなったのでしょう。
これではMarantz7の音は出ません。