各出力管のバイアス調整を行っています。メーターも正確に作動しています。

メーターを仮組し校正を行っています。

左AチャンネルHOT側です。 6.891H とかなり少なく出ています。

同じく左AチャンネルCOLD側です。 こちらも6.949Hです。

相変らずバイアスセレンにダイオードがパラに接続されています。 恐らくこれが今回の大事に至った根本原因のような気がします。

2022. 4. 23 検査
2022. 4. 27 検査画像追加
2022. 5. 13 画像追加
2022. 7. 13 進捗1
2022. 8. 20 進捗2
2022. 9. 13 修理完了

★進捗です。                                                 2022. 8. 20

★マランツのパワーアンプは熱が激しいので熱硬化性樹脂でモールドされた耐熱仕様のコンデンサーで無ければ使用できません。

今回、特に熱が溜まりやすい筐体の左隅にある左チャンネルのコンデンサーの内部が先に溶けてショートし、これがトリガーとなって出力管のスクリーングリッド抵抗の焼損を招いたと考えます。


★当工房ではパワーアンプのカップリングコンデンサーは必ずMarantz純正GoodAll-TRWの耐熱仕様のコンデンサーを使います。
 

こちらは10年前に他でレストアされた時に交換された国産のフィルムコンデンサーGolden-Blackです。本来は透明だったはずの殆どのコンデンサーの表面のフイルムは熱で白化しています。



こちらのオレンジ色の抵抗の影に隠れているコンデンサーが特に白くなっています。このコンデンサーが繋がっている出力管のスクリーングリッド抵抗が今回焼損を起こしました。

★出力トランスのチェックです。

★内部です。

左Aチャンネルのスピーカー端子の取付けビス(黒)が垂れ下がっています。

まだ電源を入れていないにも拘わらずバイアスメーターが振り切れて固着しています。メーターの故障です。 また、このバイアス調整用のセレクトスイッチもバネが飛んで元に自動で戻りません。

かなり改造されています。ご苦労の跡が滲み出ています。殆ど普通に手に入る国産のフィルムコンデンサー類で構成されています。

★試聴エージング風景です。


今回同時に修理に来ているMarantz7kに繋いでいます。

両方とも良い音になりました。









 

修理後の各電圧チェックです。

左の白いテスターは高圧B電圧です。 425Vを示し良い値です。右のテスターはバイアス電圧です。 -46.7Vで良い値です。

大量の交換部品が出ました。

筐体とコンセントN極間の漏れ電圧です。 AC42.1Vで良い値です。

出力管4本ともきちんとバイアス調整ができます。


修理完了後の試聴で音が悪かったので入力側のコンデンサーもブラックビューティーとGoodAll-TRWに交換しました。外して単体チェックでは4本とも絶縁不良でした。

全てのカップリングコンデンサーはMarantz8B純正GoodAll-TRW(赤茶)の新品に交換しました。問題の煙が上がったスクリーングリッド抵抗はHOT,COLDとも新品交換しました。ショートした出力トランスも巻き替えています。

表の電解ブロックコンデンサーもオリジナル仕様の特注品に交換しました。

左右と奇麗な波形が出ています。

出力波形のチェックです。

電源回路はオリジナル仕様のブロックコンデンサーに交換しました。

高圧整流ダイオードは4本とも新品交換しました。低圧のバイアス用電解コンデンサーもオリジナル仕様の新品に交換しました。バイアス用セレンにパラに接続されていたダイオードを外し、今度は新しいダイオードのみの整流回路に変更しています。残っているセレンは使用せず端子台代わりに足1本のみ使っています。

★まずは最終的な内部です。

電源廻りは高圧の電解ブロックコンデンサーを3本とも交換し、高圧整流ダイオードも4本とも交換しました。低圧バイアス回路も電解ブロックコンデンサーをオリジナル仕様に交換し、ダイオードも交換しました。各回路のカップリングコンデンサーは全てMarantz8B純正GoodAll-TRWの耐熱仕様新品に交換しました。

メーターの校正風景です。
電源トランスは無事だったので電源が入れられます。全てのテスターを集めて各値の同時チェックです。新しく製作したバイアスメーターはきちんと正確な値を指しています。
この時点では出力トランスは巻き替え前なので片側の出力は出ません。

溶けたプラスチックのヨークベースを社内の5軸マシニングセンターで新規製作し、コイルも社内で巻きました。 漸く少し前が見えてきました。


★進捗です。                                                 2022. 7. 13

メーターのコイルが焼けて周りのプラスチックも焦げています。ここからも煙が上がっていたようです。







 

プラスチックのヨークが溶けて針の磁石に覆い被さっています。これでは正常な形を保ったまま分解できません。 再起不能です。

分解しました。

アンプ本体からメーターを外した所です。 物悲しい表情です。。。

★高熱で白化したカップリングコンデンサーの画像を載せてみます。                           2022. 4. 27


オリジナルの小さい電解ブロックコンデンサーが無いので改造されました。

★以上の通り左Aチャンネルの出力トランスがショートしています。 巻き替えが必要です。

こうなった原因はAチャンネル側が筐体の隅に位置して熱が籠りやすく、特に以前他でのレストアでバイアスセレンが不良と判断されダイオードをパラに接続されています。しかし不良のセレンを外してダイオードだけなら良かったものの、不良のセレンを残されました。これにダイオードをパラに接続すると、脈流が不良のセレンも通ることから後に異常電圧を発生させます。 このためこちらではセレンにダイーオードのパラ接続はタブーと以前から言っています。

バイアス電圧が変ると出力管のプレート電流が異常に高く流れ全体に高温になります。また、以前のレストアでは国産のカップリングコンデンサーを使われていますが、よく見るとAチャンネル側の被覆が白くなっています。相当高熱に晒されたのでしょう。恐らくこのコンデンサーも中で溶けてショートしています。

今回、内部の高熱状態はバイアスメーターにも影響が出ました。#8(B)のメーターの内部はプラスチックでできています。高熱はプラスチックを溶かしコイルと磁石が変形して動作できなくなりました。 当然ながらメーターの交換部品は皆無です。 このメーターが無いとバイアス調整ができません。

出力トランスの焼損が起きると、この出力トランスに直接高圧B電源を供給している電源トランスの高圧側巻線もショートします。この為ヒューズが飛んだのでしょう。これまで何台も#8(B),#9でこういう事がありました。 

恐らく電源トランスも巻き替えが必要です。

また、以前他でのレストアではコンデンサー類を国産のフィルムコンデンサーに交換されていますが、内部が高温になり易いパワーアンプではこの様なコンデンサーは使用できません。当工房では必ずMarantz純正(GoodAll-TRW)の耐熱仕様のコンデンサーを使います。 この為全てのコンデンサー類の再交換が必要です。








今度は右BチャンネルHOT側です。 15.234H でこちらも幾分小さく出ています。








同じく右BチャンネルCOLD側です。 同様に15.168H と小さい値です。

聴いていると突然ヒューズが切れ煙が上がったので修理を依頼されました。

★漸く修理完了です。                                       2022. 9. 13

今回も大変時間が掛かりました。


★バイアスメーターをバラしてみました。                           2022. 5. 13

こちらは右Bチャンネルです。 Aチャンネルとは逆に5.42mH で異常に低く巻線抵抗も 0.699kΩと極めて高い値です。

問題の左Aチャンネルの出力トランス2次側、スピーカー端子の8Ω側インダクタンスを測ります。 49.95mH 0.287kΩ とインダクタンスはまあまあですが巻線抵抗はかなり高い値を示しています。

★出力トランスの1次側を検査します。

同じく左Aチャンネル出力管COLD側のスクリーングリッド抵抗が交換されています。日本製の大きな物です。表面の塗装が毛羽立っているのでこちらもかなり熱くなっていたのでしょう。

出力トランスが心配です。

煙の上がった個所を特定する為に内部を隈なくチェックすると、左Aチャンネル側の出力管HOT側のスクリーングリッド抵抗が焼けて破壊されていました。

Marantz 8B 修理依頼 概要