Marantz8Bk 修理依頼 概要
2次側高圧です。577.4μH 1.30Ωです。インダクタンスは単位が違います。完全にショートしています。
2022. 10. 24 検査
★以上の検査の結果、予想通り大変なことになっています。
まず、バイアスメーターのコイルが焼けてヨークが溶けて指針が固着しています。マランツのパワーアンプのバイアスメーターが使えなくなるとバイアス調整ができません。バイアスメーターの部品は当然ながらどこにもありません。この為、普通ならこれでこの個体は再起不能で部品取りとなって葬られてしまいます。 当工房では、このメーターコイルとプラスチックヨークは以前製作しているのでまだ在庫があります。
バイアスメーターに直接高電流が流れていることから、出力管の電流値も異常に高くなったと推測されます。この為、電源トランスもチェックすると、上記のように1次巻線がショートし、2次側の高圧B電源とバイアスC電源の巻線もショートしています。
しかも、どういう訳か出力トランスの右側の2次側がHOT,COLDともショートしています。
電源トランスと出力トランス1台が巻き替えになります。
★原因を考えます。
バイアスC電源の整流ダイオードの不良でバイアスが浅くなり、出力管のプレート電流が異常に大きく流れバイアスメーターと電源トランスの破損に繋がった。一般的にはこう考えるでしょう。
気になったのが高圧B電源回路に大容量の電解ブロックコンデンサーが追加されています。容量が大きければリプルが少なくなり良い音になると考えられたと思います。昔の技術雑誌にはこう書かれ、見習って付けられた方も多いと思います。
しかし、今回長期休眠状態で無通電時間が長くなるなど、コンデンサーに完全に電荷が無い状態で、且つトランスの経年劣化も加わり、電源を入れると高容量のコンデンサーでは最初の充電量が莫大になるので、大きな突入電流が電源トランスに流れます。これにより電源トランスの1次側がショートし、2次側に異常な高電圧大電流が発生しバイアスメーターが焼け切れた。しかも出力トランスの電源に近い側の2次側も高圧B電圧が最初に直接掛かるのでショートしたと考えます。突入電流位の瞬時の電流ではヒューズは飛びません。マランツのトランスは巻線が細いので経年でボロボロになり、過電流で切れやすいのも特徴です。
また、マランツの電源には電源サーミスタが入っていませんが、マッキンのパワーアンプには必ず入っています。大容量の電解ブロックコンデンサーの突入電流を緩和させるためです。この大容量の電解ブロックコンデンサーがマッキンの元気な音を作っています。電源サーミスタは最初は抵抗値が大きいため電流を余り通さず、温まってくると徐々に抵抗値が無くなり通常通り電流を流します。
マランツは恐らく音に影響するのでサーミスタを入れず、その代わり電解コンデンサーの容量を押えて多段で抵抗を入れ、突入電流を小さくしています。これにむやみに大きな容量の電解ブロックコンデンサーを追加すると、、、こうなるかも知れません。
★今度は出力トランスのチェックです。
バイアスメーターが大変なことになっています。コイルが焼けてプラスチックのヨークが溶け針が固着しています。
バイアスメーターの部品はどこにも無いので、普通ならこの個体はこれで再起不能です。
こちらも高圧倍電圧のもう片側です。 65.37uF 0.73で良い値です。
★各電解ブロックコンデンサーをチェックします。
右チャンネル1次側のHOT側です。 20.77H 136.9kΩです。 これは左チャンネルの1/20のインダクタンスです。恐らく過熱で絶縁被覆がボロボロになりコイルとしては作用していない状態です。
右チャンネル1次側のCOLD側です。こちらも20.82H 136.8kΩです。
左チャンネル1次側のCOLD側です。660.4H 146.5kΩです。
バイアスC電源のコイルです。815.7μH 288Ωでこちらはまあまあの値です。
★まずは電源トランスのチェックです。
こちらは高圧のダイオードの一部で逆方向に導通があります。
こちらはバイアスC電源のダイオードです。逆方向にも導通があり不良です。
バイアスC電源のブロックコンデンサーです。10.191uFで容量が半分に落ちています。
こちらのブロックも容量が半分以下になっています。
★各整流ダイオードのチェックです。
こちらは高圧整流直後の倍電圧の片側です。64.98uF 0.77で良い値です。
同じく高圧φ35の他のブロックです。こちらは追加は無く単体の値です。43.86uF ESR 1.26でまあまあです。
高圧のφ35です。追加の電解コンデンサーの値を含めて116.32uFです。これが2ブロックあります。
左チャンネル1次側のHOT側です。779.8H 146.2kΩです。
こちらも右チャンネル2次側8Ω端子です。 54.72mH 0.264kΩでまあまあです。
左チャンネルの2次側8Ω端子です。 49.87mH 0.384kΩでまあまあです。
1次側です。2.335mH 40.5Ωで異常に低いインダクタンスと逆に高い巻線抵抗です。巻線が一部でショートしています。
火花が筐体側面にも飛び散っています。
電源に追加された大きな黒い電解ブロックコンデンサーです。
バイアスメーターが焦げて、抵抗が焼き切れています。
内部です。大きな電解ブロックコンデンサーが追加されています。