★今度は問題の左チャンネルです。

2023. 2. 28 検査
2023. 3. 2 進捗1
2023. 3. 11 修理完了
2023. 3. 14 再調整完了

★ようやく修理完了です。                                   2023. 3. 11

今回も両方とも大変なことになっていました。これでよく音が出ていたものです。

まず、カップリングコンデンサー等の劣化から両チャンネルとも音が汚れています。上記進捗の通りコンデンサー類を音の良いものに交換することにより結構良い音になりました。 しかし、よく聴いているとやはり左チャンネルは何かおかしい。

電源かと普通は思いますが、電解ブロックコンデンサーは音を汚すほど劣化していません。まだ良い方です。
特に、今回音が割れるため修理に出された左チャンネルでは無く、右チャンネルのACバランス調整でメーターの指針が振り切れます。こんなことはこれまで見たことがない。恐らくベテランの技術者の方も経験が無いのではないかと思います。
いろいろ調べて、メーターの故障でもありません。ACバランス回路も正常にバランスよく電圧が来ています。。。もうお祓い?の境地です。

★それでは、チェックの経緯を見て行きます。
まずはACバランスメーターが振り切れる右チャンネルに集中です。


右チャンネルです。

左が高圧B1です。441Vで良好です。左から2番目はバイアス電圧です。-41.3Vで良好です。右2つはACバランス抵抗後の値です。どちらもよく似た値で良好です。

★修理後の内部です。

左チャンネルも上下ともカソード抵抗を交換しそれぞれの電圧を測っています。

右チャンネルと同じプッシュプルカソードフォロア管のカソード抵抗を計ります。

今度は有り得ない事に、上下両方ともカソード抵抗に導通がありません!
つまり、カソードフォロア管が動作しない状態で、上下の真空管の漏れた信号だけで音が鳴っていたことになります。この為、中音が割れた音になっていたのです。

こちらのACバランスは上下とも動作しない状態でバランスが取れていたので正常だったわけです。。。これに気付かなければ、やはりお祓いでした。

★それではACバランスのメーターが振り切れる右チャンネルから原因を探って行きます。

右端と右から2番目が当該の電圧です。どちらも371V近辺でバランスが取れています。

まず、ACバランス回路の上下のバランス抵抗前の電圧測定です。

同じくバランス抵抗後の電圧です。左右でそれほど大きく変わりません。バランスが取れているようです。

★ACバランス調整の時、出力を逃がす為のダミー抵抗を検査します。下の画像の左下あたりの焦げ茶色の一際大きいやつです。
普通、長くスイッチをACバランスの位置にするとこの抵抗から煙が上がります。


★音が割れる左チャンネルからです。

こちらの右テスターは高圧B3です。 140.7Vでこちらも少し低い値です。

こちらの右テスターは高圧B2です。 359.1Vでこちらも少し低い値です。

左の白いテスターはバイアスC電圧です。 -37.6Vと少し低い値です。右テスターは高圧B1です。 398Vでこちらも少し低い値です。

★こちらのチャンネルはACバランスのメーターが振り切れたので、先にこの回路の抵抗値を測ります。

★こちらも先に電解ブロックコンデンサーのチェックからです。


(2023. 3. 14)
★修理完了後まだ試聴を繰り返しています。

出力管を8本とも全てこちらのRCA EL34に換えて試聴していました。
かなり良くなったのですが、それでもこちらの#9k(改)とはやはり違うのでいろいろ調整を行っています。特に今回不具合があった左チャンネルでは無く右チャンネルの音の高域が落ちています。これが気になっていろいろチェックしていました。するとやはりNFBがプッシュプル動作の上下でバラついています。NFBのコンデンサーも不良でした。こんな細かい所も音には充分影響します。

最後に初段管と位相反転管を#9R純正?MARANTZのロゴが入った中国管から当工房ストックのTelefunken ECC88に換えてみました。やはり雑念が取れてスッキリとした音になります。

漸く納得の行く音になりました。














(2023. 3. 13)
★修理完了後の発送に当たって、念の為MARANTZのロゴが入った古い出力管を検査してみました。

3本は75近辺を示し良好ですが1本が廃棄値60以下に近い値です。

4本中3本は良い値ですが、この画像の1本だけ廃棄値に近い状態です。

交換部品です。

出力管を8本全てこちらのストック品のRCA EL34に換えてみました。これで左右全く同じ音で奇麗な音になりました。

★修理後の試聴エージング風景です。


当工房のMarantz9kや9Rと同じ良い音です。


プッシュプルカソードフォロア管の上下のカソード抵抗の値を調べています。

何と!上下のうちの片方の抵抗に導通がありません。これはプッシュプル動作の出力の上下どちらかの出力管に音声信号が行かず、B級動作の半分だけで鳴っていたことになります。(プッシュプルは上下のどちらか半分だけでも普通に音は鳴ります。)
この為、ACバランスメーターが完全にアンバランスと判断してメーターが勢いよく振り切れたのです。

★また右チャンネルに戻ってバランス電圧の違いの原因を調べます。

カソード抵抗を上下とも新しいものに交換しました。 小さいですがこれで規定通り2Wです。

ACバランス調整も普通にできるようになりました。

今度はバランス抵抗後の電圧測定です。

同じく右端と右から2番目のテスターです。左右で値が大きく違います。

★ちなみに、左チャンネルの値も測って見ます。

回路を詳しく調べると、何と!このダミー抵抗の配線が違います。本機はMarantz社が最終検査を経て出荷された製品です。#7kや#9kなどのキットではありません。こちらはまだメンテされない復刻のオリジナル状態です。なので修理の時、誰かが間違って配線ミスしたとは考えにくい。 こんなことが有っても良いのでしょうか?

正式にはこちらが回路図通りの配線です。こちらで配線を直しました。よくこれまで異常もなく鳴っていたものです。これでも検査が通ったのですね。。。やはりお祓いです。

こちらは音が割れるという左チャンネルのACバラン調整のバイパスダミー抵抗です。15Ωが正常値です。こちらは正常です。

ところが、こちらはACバランスメーターが振り切れる右チャンネルです。0.4Ωしかありません。このためこの抵抗が飛んだのかと思って外して単体検査をすると正常に15Ωです。
どうなった?

出力波形です。まずまずの状態です。

とりあえず電源回路調整後の各部の電圧チェックです。
左の白テスターは高圧B1です。433Vで良い値になりました。中央はバイアスです。-42.1Vでこちらも良い値です。右は高圧B2です。390Vで良い値です。


★一通り内部の部品交換を行い、一先ず音を聴いてみます。

かなり良くなりましたが、まだこちらの所有機と音は違うので出力管を交換してみます。

★出力管交換後の試聴風景です。

JJからRCAに交換するとかなり良くなりました。右チャンネルのelectro-harmonixもシャープさが増して良い音です。

この後、いよいよ電源回路とACバランスメーターの修理です。

右チャンネルの使い込まれたmarantzのロゴが付いている中国製出力管です。これを外してこちらにストックしている新品のelectro-harmonix EL34の太管に交換してみます。

JJを外してこちらのストック品のRCA EL34に交換してみます。このRCAもほぼ新品です。

中に焦げ目が付着しているかなり使い込まれた右チャンネルの出力管です。

こちらは音が割れる左チャンネルの出力管です。前の修理屋さんが新しいJJに交換されました。

左チャンネルと同じです。

入口側と初段管後のカップリングには音の良いUSA仕様のコンデンサーに交換しました。

赤茶色がGoodAll-TRWです。中央の大きなコンデンサーがBLACK-CATの耐圧の大きいものです。

★右チャンネルです。

主なカップリングコンデンサーをオリジナルに使うマランツ純正GoodAll-TRWの新品に交換しました。中央のデカップリングコンデンサーは耐圧の大きいBLACK-CATに交換しました。

こちらはACバランス後の上下の電圧です。両方ともそれなりにバランスが取れて大きく値が違ってはいません。

こちらの右テスターは高圧B3です。 140.8Vでこちらも少し低い値です。

こちらの右テスターは高圧B2です。 359.6Vでこちらも少し低い値です。

こちらのブロックは抜けて容量が半分になっています。

左の白いテスターはバイアスc電圧です。 -38.2Vでこちらも少し低い値です。右テスターは高圧B1です。 399V出こちらも少し低い値です。

今回はACバランスのメーターが振り切れているので、回路に直接テスターを2台取付けてリアルタイムでバランス電圧を測ります。

両方とも異常ありません。

★電源を入れて各電圧を測ります。

低圧バイアスC電源です。こちらも両方とも良好です。

高圧倍電圧回路です。両方とも良好です。

こちらも容量が抜けています。

高圧のブロックコンデンサーです。

左右とも少し低く出ています。

★今度は右チャンネルです。

★こちらは位相反転管のプレート電圧です。

こちらは低圧C電源です。こちらも両方とも正常です。

★電源を入れて各電圧を測ります。

高圧の倍電圧回路用です。両方とも正常です。

高圧用電解ブロックコンデンサーです。

内部です。完全に(復刻の)オリジナル状態です。

★電源を入れる前に各電解ブロックコンデンサーのチェックです。

左のアンプの中音の音が割れるので修理を依頼されました。他に何件か修理に出したが真空管を換えただけで直せなかったので当工房に依頼されました。恐らくどこも部品を持っていないのでしょう。

早速音出しをしてみます。 言われる通り左チャンネルの音が割れています。左チャンネルばかりでなく右チャンネルも音が歪んでいます。恐らく消耗品のコンデンサー類が劣化しています。

★進捗です。最初の検査で電解ブロックコンデンサーに容量抜けがあるものの、                   2023. 3. 2
危険の無い範囲で電圧が確保できるので各回路周りから部品交換を行います。

右チャンネルのACバランス調整です。勢いよく振り切れて右端にカンカンと打ち付けます。調整ボリュームも全く効きません。大きな問題があるようです。

★まずは左チャンネルの検査からです。

こちらは問題の左チャンネルではなく右チャンネルのACバランス調整です。なんと!メーターが振り切れます。左チャンネルは正常です。この他のバイアス調整、DCバランス調整は両方とも正常です。

Marantz 9R 修理依頼 概要

左チャンネルです。

こちらも安定したACバランス調整ができます。

★以上の検査より、消耗品である各コンデンサー類に不良があります。この為コンデンサー類の交換が必要です。

また、ACバランスメーターが振り切れる現象は特に回路的にバランスが大きく違っているわけでは無さそうなのでメーター回路の不良の可能性があります。慎重に見て行く必要があります。