いろいろチェックするとこのツェナーダイオードが飛んでいます。

ここは、レプリカ初期型からツェナーダイオードで減圧しています。
恐らく降伏点を越えた電流が流れたのでしょう。

幾ら3W仕様だからと言ってここにツェナーダイオードを入れるのはリスクが高すぎるのではないでしょうか?

特に熱の出るパワーアンプです。ツェナーは熱に弱いのをご存じの筈です。
高温になると降伏点の前でも飛ぶことがあります。
(ここは筐体の角なので熱がこもり易いのでは)

コストダウンもわかるけど、プレート抵抗のワット数を間違えたり
マッキンの設計の方、しっかりして!



恐らくレプリカはこの様なトラブルが多発しているのでは。。。




右が不安定になるのはこれです。

電源トランスの液漏れもこれが原因で出力管に常に大電流が流れていたのかも知れません。

★初段管後のプッシュプル電圧増幅管のプレート電圧です。概ね良好です。

★ 内部です。 レプリカとしては恐らく最終モデルでしょう。

全ての配線は基板上で行い大物部品との接続はファストン端子接続です。
初期の頃のレプリカは右小画像のようにまだ真空管からの配線は空中接続ですが、本機は真空管ソケットも全て基板上に配置されています。
レプリカの配線方法は4種類あるそうで、いずれも回路図は公開されていません。

レプリカはオリジナルとかなり回路が違います。使用するドライブ管も違っています。
この為、一般に公開されているオリジナルの回路図はあてになりません。

★こちらは出力管の手前のプッシュプルカソードフォロア管の各プレート電圧です。

(2019.12. 17)
★カップリングコンデンサーを全て外してチェックです。

V10のバイアスです。良好です。

★ mcIntosh MC275SE-G ゴールドの大変きれいな逸品です。 購入してまだメンテしていないのでどんな状態か見て欲しいとのご依頼です。

本機も珍しいのでたくさん撮りました。

★最後にエージングを行っています。

特に左右の不安定さもなく良い音で鳴っています。


検査の途中で何度か聴いています。
最初の頃はこちらにMC275オリジナルもレストアに来ていて聴き比べることもありましたが、特にオリジナルに比べそん色は無く寧ろこちらの方が力強く中高域も奇麗に感じています。

オリジナルと比べると電源のコンデンサーの容量が格段にこちらの方が大きく、カップリングコンデンサーも一見見慣れない色と形ですが、これはドイツ製の極めて優秀なものです。

レプリカの最終モデルに拘りを見せてくれるマッキンの設計者は、改めて見直しています。
(前にかなりコケ下ろしましたが。。。)

こちらで交換した高級品のプレート抵抗も中高域の奇麗さに効果を発揮しています。


エージングで鳴らしている曲を、JAZZから今度はクラシックに替えてみました。
やはりきれいな中高域は心を和ませます。
しかも奥行きも深く、雄大な響きです。

このレプリカは決してオリジナルに引けを取りません。















★プッシュプル電圧増幅管2段目のプレート電圧です。こちらも概ね良好です。

各抵抗を交換し、再度組付けです。

★これより電源を入れて各部の電圧を計ります。

交換部品です。

今回は大変な割には少ない交換部品でした。

各値の測定です。
左右ともきれいな波形が出ています。


他のプレート電圧と同じ259.2Vを示します。

赤く四角いコンデンサーを全て外して絶縁検査を行いました。全て良品です。
この赤いコンデンサーはヨーロッパでは圧倒的に認知度が高く音が良いWIMAでドイツ製です。

茶色く焦げた抵抗があります。V2とV5のプレート抵抗です。4個とも焦げています。

何処にも無いMC275レプリカ最終モデルの回路図です。
当工房で作成しました。

レプリカの初期型の回路図は知人から頂き参考になりましたが、このレプリカ初期型は真空管構成が違うので参考程度です。

本機は後期の最終モデルのため真空管もレプリカ初期型の12AZ7は12AT7に変更になりました。
この為プレート抵抗やバイアスの抵抗が全て違い、各電圧も違ってきます。

1/2Wなのでワット数が足りないのか4個とも焦げています。普通どのアンプもここは1W以上です。
右が不安定になるのはこれが発熱して抵抗値が変るのかも知れません。
1Wの容量の大きなものに交換します。

出力管グリッド電圧です。こちらも4本とも453V近辺で良好です。
グリッド抵抗の交換が効いています。

逆サーミスタも新品交換です。

出力管プレート電圧です。4本とも同じ様に442V近辺で良好です。

初段管の高圧B3です。124.9Vと良好です。

ん?こちらは値が違います。

交換したプレート抵抗はAMRGの高級品2Wです。
これで音は良くなります。プレート抵抗は音質にとても重要です。

★それではもう一度各電圧のチェックです。

(2019.12.19)
★取り敢えず焼けたPP増幅管のプレート抵抗と出力管のグリッド抵抗を交換しました。


V11のバイアス電圧です。少し浅めです。バイアス調整が必要です。

こちらも少し高いようです。

V6です。少し高いようです。

こちらは右の先頭V5です。良い値です。

V3です。かなり下がっています。

同じくV3の2局目です。こちらも下がっています。

左先頭V1です。 少し高い値です。

V9のバイアス電圧です。少し深めですが何とか良好です。上のグリッド抵抗がバイアスにも影響しているのかも知れません。

V8のバイアスです。良好です。

V9のグリッド電圧です。 14.87Vしか上がりません。上の画像のグリッド抵抗が切れている為です。この出力管は正常に機能していません。

こちらは正常なV8のグリッド電圧です。471Vを示し良好です。
他のV10,V11も同様に良好です。

こちらはV9のグリッド抵抗です。何と!切れています。OL表示は導通が無い状態です。

こちらはV8のグリッド抵抗です。規定通り220Ωを表示します。他のV10,V11も同じ様に正常です。

殆どの電解コンデンサーは異常ありません。

★今度は全て元に戻し、主な抵抗を計ります。

基板を外した後のシャーシです。

こちらは基板の裏面でソケット側です。全ての真空管ソケットは基板に半田付けされています。

★一斉に電解コンデンサーの足を摘まみチェックします。

外した基板の表面です。

フレームを伝って裏蓋に流れ出ています。この形跡から外部にも落ちています。

殆どの電解コンデンサーは日本のルビコンが使用されています。
電源の電解コンデンサーの容量はオリジナルの10倍近くあり、かなりダンピングファクターを意識しています。

ビンテージアンプとは違う形状のカップリングコンデンサーです。

★本格的な検査はまだ時間が掛かりますが簡単なチェックから行います。

電源回路一部の電解コンデンサーのチェックです。
このコンデンサーは静電容量はありますがESRが少し高いようです。





電源の逆サーミスタの検査です。6.8Ωを示し不良です。
最低でも16Ω以上は必要です。

★電源を入れる前に各電解コンデンサーのチェックを行います。
完全基板なので、コンデンサーの状態を検査するにはこの基板を外して裏側のピンより測定器をクランプします。
このため基板を外します。基板を外すには表の出力管の根元の黒い襟巻も外さなくてはなりません。

フレーム上に黒い液が滴り落ちてべとべとです。

黒い液は電源トランスの穴から滲み出ています。

ボリュームやセレクトスイッチ類は基板化されコネクター接続になっています。
これ等が壊れるとやっかいです。

電源回路内にヒューズが挿入されています。

これは電源トランス1次側のノイズフィルターでしょうか?

McIntosh MC275SE-G レストア依頼機 A.T 様 概要

2019. 10. 12 初掲載
2019. 11. 26 検査完了
2019. 12. 17 追加検査
2019. 12. 19 レストア途中経過
2019. 12. 24 レストア完了

★漸くレストア完了です。                                                       2019. 12. 24


手配中の部品も入り交換しました。

これで特に気になる問題点も無い状態です。

★音出し風景です。

V9のグリッド抵抗が切れているのでV9は正常に働いていません。しかし特に音には影響は無いようです。

右側の出力管の前段のプレート電圧がAB級反転それぞれで電圧が大きく違っています。この為正常な出力になっていません。
右側の初段管のプレート電圧も異常に高く、左のPP増幅管のプレート電圧もバラついている為、各抵抗の交換と調整が必要です。
また、出力管バイアスもマッキン特有のユニティーカップルドサーキットを組んでいる抵抗類を一部交換して再調整の必要があります。

2時間程試聴していますが、電源トランスの発熱は殆どありません。
シャーシ内部に絶縁材が垂れ流れるほど高温になったとは考えにくいのですがどうなったのでしょう。


MC275オリジナルの音と比べると余り大差は無いようですが出力ゲインが少し低いようです。


(2019.11.27)
検査の翌日再度電源を入れて試聴すると、立上りから小さくブーンと唸り音が聞こえ音もかなり歪んでいます。
オーナー様に伺うと特に右の音量が不安定になるそうです。
恐らく各カップリングコンデンサーが劣化しているのかも知れません。

V7です。こちらはかなり下がっています。

こちらは逆に上がっています。

内部チェックではこの液が手に付くのでティッシュで拭き取ります。
こげ茶色なので電源トランスの絶縁材かも知れません。高熱で溶け落ちたようです。