WE300Bシングルアンプ 修理依頼 概要

2021. 11. 25 検査
2021. 12. 20 再検査
2022. 3. 25 進捗
2022. 5. 16, 26 進捗2
2022. 6. 20 進捗3
2022. 6. 24 修理完了

2次側高圧です。140.02mH ESR4.76kΩです。

2次側バイアスC電源です。 23.42mH ESR 1.023kΩです。

★かなり時間が経っています。この為、進捗状況を掲載します。                                 2022. 3. 25

いつものトランス巻き替えをお願いしているところに相談すると、カンノのトランスは巻き替えできないと言われました。
この為、色々検討しましたが近くにトランスを作る所があり、何とか巻き替えはできるということです。 しかし、エポキシで充填されているのでこれを何とかして巻線を解けるようになっていたら可能と言われました。

そこでこちらで分解しました。その画像を掲載します。


何とかトランス本体だけになりました。しかし実はここからが大変です。隙間にもエポキシが充填しているのでコイルを取り出すには鉄芯のコアを割らなければなりません。当工房のマシニングセンターでコアの切削切断を行いました。

これを復元するには新規に製作になります。








1次側です。 5.157mH ESR 0.541kΩ

★各トランスの中で特に左右で数値の違いが顕著なものを下記に掲載します。電源トランスです。

★入力のRCAジャックが赤のものです。

出力トランスの1次側です。良好です。

出力管DC点火用ヒーター巻き線です。良好です。

初段管AC点火用ヒーター巻き線です。良好です。

★電源を入れて各部の電圧を計ります。

高圧です。良さそうです。

★2台目の正常な方です。

★音出し試聴風景です。やっとここまで辿り着きました。

いつものカンノWE300Bシングルの良い音です。

抜群の臨場感で、TANNOY Monitor RED 15 の音が部屋中に冴え渡ります。

★電源トランスをケースに入れて外観を撮ってみました。これで修理完了です。             2022. 6. 24

ほぼ違和感なく見られます。




★電源トランス内部の配線を直し、アンプに取付けて音出しをしました。                                   2022. 6. 20

約1時間の試聴でトランスからのうなり音も無く上々です。まだ段ボールとガムテープで固定していますが、最後には左側に置いてあるこちらで製作した奇麗なケースに入れて完成です。

上段左より、スピーカー端子の残留ノイズです。0.004Vと良い値で安定しています。上段中央はバイアスC電圧です。-65.2Vで良い値です。上段右は高圧B電圧で 325.7Vとこちらも良い値です。
下段左アナログテスターはバイアスの電流値です。シャント抵抗を介して1Vを示します。上段の各値はこの1Vの状態です。下段右は300Bのヒーター電圧です。DC5.27Vで良い値です。

電源トランスの配線を組み直してチェック後アンプ本体に取付け各電圧のチェックです。

★電源トランスを組上げました。                                       2022. 5. 26

ほぼ本体と同じ色です。

いい感じです。

こちらはカンノ製オリジナルの電圧で左はC電圧、右が高圧B電圧です。

今回こちらで製作した電源トランスの電圧です。左が高圧B電圧で少し高く出ていますが正常値です。左はC電圧です。カンノ製の倍の電圧が出ています。仕上げの配線で並列を直列で繋いでしまったようです。バラして接続し直しです。

★ まずは真空管を抜いて無負荷で各電圧を測ります。

★これ等を総合的に見ると、やはり入力ジャック赤の方の電源トランスが漏電し、各インダクタンスも高くなっています。電源トランスの巻き替えが必要です。

最初の検査でチョークトランスの値に差があったのはテスターの接触抵抗によるものでした。今回再度測ると左右とも似たような値です。
また、入力トランス、段間トランス、出力トランスとも同じく良い値です。

各整流ダイオードは左右とも良品で異常はありませんでした。


ただ、先週の残留ノイズの計測では白ジャック側アンプに電源からのノイズを拾っていました。まだ別の所にも問題があるかも知れません。


新しいコアとボビン、ケースも新作です。色も塗装屋さんで調合して貰っています。

漸くこれからコイルを巻く段階です。


本体と並べても一見同じ色に見えます。


この後まだ大仕事が待っています。全体調整と音の確認調整です。


★ 漸く新しい電源トランスができました。                                   2022. 5. 16


先日よりトランスを製作して貰うところで私も一緒にコイルを巻いていました。 このトランス屋さんで各電圧の簡易チェックも済ませています。
本日当工房でリード線の接続を行い本体の完成です。

ケースも塗装屋さんで色の調合を行ってもらいました。

取り敢えず予備を含めて2個です。

下のべろべろ状態はトランス本体を切断したものを色見本として出したものです。これを元に塗装屋さんで色の調合を行ってもらいました。
やはり餅は餅屋ですね。

コアを割ってボビンを取り出し、コイルを解いた後の状態です。

ケースは切断です。

大変な事になっています。

★入力のRCAジャックが赤のものです。

★入力のRCAジャックが白のものです。

2次側高圧です。111.68mH ESR 6.45kΩです。

2次側バイアスC電源です。 16.809mH ESR 1.259kΩです。

★上の数値を比較すると、入力のRCAジャックが白のものより赤のものが2次側の高圧とバイアスのインダクタンスが高く、この時の1次側は逆に低く出ています。 (上記計測は全て1kHzの交流信号による測定結果です。)




この状態で、改めて筐体-コンセントN極間の漏れ電圧を測ってみました。

1次側です。 8.65mH ESR 0.419kΩ

★今の所、上の電解ブロックコンデンサーの検査のように特にまだ消耗品の劣化は考えにくく、逆にノイズが出ないと言われている側のアンプで、電源投入後アンプ本体の恐らく入力トランス辺りからチリチリ音が出るのが気になっています。

今回残留ノイズの計測で電源タップにノイズフィルターを入れてノイズが変化するので外部誘導を引っ張るのでしょう。電源トランスの絶縁状態が心配になってきます。

両アンプとも外部の電源事情でノイズが乗ってくるのは、やはり経年でトランス類の劣化が進んでいる可能性があります。
カップリングコンデンサーの無い完全トランス結合アンプの劣化はこういうところに出てくるのかも知れません。

益々チョークトランスが怪しくなります。しかも普通はチョークだけ不良になることは考え難いので電源トランスや、ダイオードの劣化がトリガーになった可能性も考えられます。 Marantzのパワーアンプでもダイオードが飛んで電源トランスが焼損した例がいくつかあります。

もう少し詳しく見て行きます。








★本日改めて各トランスのインダクタンスを測りました。

★入力のRCAジャックが白のものです。

こちらはノイズが出ていると言われ今回修理を行うアンプです。しかし入力ショートでの出力の残留ノイズは AC 0.002Vと完全に何も出ていない状態です。スピーカーに耳を当てても何も聞こえません。

こちらはノイズの出るRCAジャックが赤の方です。

ノイズフィルターをRCAジャック白のアンプに入れ、RCAジャック赤はその隣に挿しています。

こちらはノイズが出ない方のアンプですが、実際にはブーンとジーが混ざったノイズが出ています。画像のテスターでは AC 0.006Vを表示して明らかにノイズが検出されます。

入力のRCAジャックが白の方です。


★試聴しながら再検査を行っています。                                         2021. 12. 17〜20

回路図が手に入ったので、各部品の値を確認しながらノイズの出方を見ていました。

以下に、入力に何も繋がずにショートした状態での残留ノイズを測ります。

(2021.12. 1)
★オーナー様から1時間程経ってから異音が出ると伺いましたので、本日午前中から鳴らしています。
すると問題のアンプは無音時にスピーカーから時折パツッと言いながらツツツツと言う音が小さく出ています。
やはり何かがおかしいようです。

★全体に良い状態ですが気になる点は、異音の出る方の高圧用チョークトランスのインダクタンスがもう片方より1.5倍に膨らんでいることです。整流後の先頭に位置する為まだリプルが乗り、振動を起こしているかも知れません。

左テスターは高圧のプレート電圧です。少し低めですが良好です。中央のテスターは出力管のヒーター電圧です。こちらも少し低めです。右の白いテスターは高圧B2です。良い値です。

こちらもバイアス電流のチェックポイントの電圧です。取りあえず1Vで良好のようです。

バイアスC電源です。良さそうです。

高圧のチョークです。1台目の2/3程です。

高圧B1用の1ブロック目です。良好です。

高圧B2用の2ブロック目です。良好です。

出力トランス1次側です。良い値です。

電源トランスのバイアスC電源の巻き線です。こちらも良さそうです。

高圧チョークです。後の異音が出ない方のチョークの値に対して約1.5倍ほどに膨らんでいます。中で巻き線がショートしている可能性があります。

高圧B1の2段目です。良好です。

高圧B1の1段目です。良好です。

高圧B2の1段目です。良好です。

カンノ製作所が作ったWE300Bシングルアンプです。左CHのアンプの本体から異音が出始め、これが真空管を共振させ左スピーカーから共振音が出るようになったそうです。とても美しいアンプです。

筐体-コンセントN極間の漏れ電圧です。 AC42.9Vを示し漏電しています。

こちらは同じくAC9.73Vで非常に良い値です。

こちらは上記のノイズの出る方(RCAジャック白)の右の画像のように電源タップにノイズフィルターを入れて測った値です。
AC 0.005Vと少し下がりました。スピーカーからもジーが消えてブーンだけ出ています。

初段管カソードバイパスコンです。良好です。

★各トランスのインダクタンスです。

高圧B2用の1ブロック目です。良好です。

★こちらもまず各電解コンデンサーのチェックです。

こちらはバイアスのチェックポイントの電圧です。カンノではこの値を1V以下を推奨しているそうです。取りあえず0.75Vで良好のようです。

左テスターは高圧のプレート電圧です。少し高めですが良好です。中央のテスターは出力管のヒーター電圧です。良好です。右の白いテスターは高圧B2です。良い値です。

ヒーターの巻き線です。良さそうです。

★電源を入れて各電圧を計ります。

電源トランスの高圧巻き線です。良さそうです。

初段管のカソードバイパスコンです。こちらも良好です。

★各トランスのインダクタンスを計ります。

高圧B2の2段目です。良好です。

こちらはヒーター回路です。ブリッジで直流点火です。この先頭の電解コンデンサーですがチェックするとOL表示で機能していません。

同じく2段目の電解コンデンサーです。こちらもOL表示で計測できません。

内部です。綺麗な配線です。

★各電解コンデンサーのチェックです。

★まずは異音の出る方から検査します。