当工房オリジナル MKe-86 WE300B プッシュプルアンプ

セブン再生工房

2022. 4. 6 初掲載

★ Western Electric 86Aアンプは、これまでも幾つかのリプロ品がありました。通常はできるだけオリジナル回路に忠実に作ります。しかし、私が聴いたウエスタンのアンプはどれもパッとしない音に感じます。臨場感は抜群ですが解像度についてはこちらでレストアしたマランツやマッキンの方がクリヤのような気がします。(私感です)

★ウエスタンの回路をよく観察すると、今回の元になるWE86Aアンプはインプットトランス(618C)で受けてバランス入力をシングルに変換し、普通にシングルの電圧増幅を行い各段はこれも普通にカップリングコンデンサーで繋ぎます。そして電圧増幅管の後に段間トランスで漸く上下に分割して300Bプッシュプルで出力します。

この分割方法だけは他のプッシュプルアンプとは違います。この違いは結構効いて、誰もが納得するウエスタンの音になっているのでしょう。しかし、当然NFBを充分掛けてノイズや周波数特性を改善すると同時に、いびつさも普通に付加してしまっています。

悪く言うと、このウエスタン86Aアンプの回路は、折角のバランス入力をシングルに変換し、位相の変わるカップリングコンデンサーで繋いで最後に漸くトランスで分割しています。しかもカップリングコンデンサーで位相が変わった音にNFBを掛ける。これでは音が良い訳がありません。

ウエスタンも133Aアンプになって漸く気が付いたのでしょう。入力トランスで上下分割してプッシュプル電圧増幅を行いますが、残念なことに段間はやはりカップリングコンデンサーで繋いでいます。ウエスタンがどれもパッとしない音と感じるのは経年でくたびれたカップリングコンデンサーを使い続けていることにも起因しています。


★私が考えている300Bプッシュプルは、入力トランスで上下分割、或いはXLRバランス入力をそのままプッシュプルで電圧増幅し、位相のずれるカップリングコンデンサーを使わずWプッシュプルの段間トランスで繋いで300Bプッシュプルの出力管に信号を送ります。

このように全ての増幅回路はプッシュプル動作で(完全プッシュプル) 全段トランス結合です。
この為、位相のズレは無く、適度なNFBを掛けることによってダンピングファクターの効いた力強い音が期待できます。これなら300Bシングルでは力不足な低能率大型スピーカーも楽々と唸らせます。



★シングルのような極めてストレートでピュアな力強い音になります。 先に開発した当工房オリジナル MKe-124Aアンプの音がこれを証明しています。





★これまで300Bの完全プッシュプルのアンプはありません。Wプッシュプル専用の段間トランスが無いからです。ただ今こちらで開発中です。




★まだ形だけですが、WE300B プッシュプルの MKe-86アンプを、既に製作している MKe-1086 ラックの上段に入れてみました。今回はラインアンプを含まないパワーアンプのみの形式でメーター付きです。

ドライブ管のシールドケースはWEオリジナルです。本来はこのシールドケースの後ろに出力トランスと段間トランスが並びます。現在、仕様の検討中です。

このメーター仕様の他に MKe-124Aアンプと同じように、ラインアンプ付きではコントロール用のツマミが付きます。

こちらの出力管は WE300B ロットNo. 8139 ベルマークです。 このアンプ用に奇跡の同ロット4本クワッドで入手しました。整流管も WE274B です。

Western Electric 86Aアンプと同じように、シャーシーはアルミです。