内部です。汚いですねー。60年超の埃でしょうか?異臭も放ちます。側面のスポンジがボロボロで朽ち落ちています。これだけの埃とこの付き方から察すると、これまでの64年間殆どメンテの手が入っていないことが推測できます。

私が最も気になるのが空中線フラットケーブルにテープが巻かれて、この裏に2本線が追加されていることです。これはこちらのレストア依頼機の50番台や他に60番台や90番台で見かけたことがあります。つまり2桁台半ば以降に稀にある姿ですが、このような1桁台でも有るのは初めてです。(尤も1桁台を見たのも初めてです)
当工房で所有している2桁台2台や、他の多くの2桁台は5芯フラットケーブルのままで裏の2本の線は直接配線しています。

なぜこのようなテープ巻き配線が有るのでしょう。恐らく組立て作業者の拘りです。一人偏屈?な人がいて、これがノイズの少ない方法と思ったのかも知れません。3桁台から透明チューブに入れて全てこの配線方法です。

鑑定団?の中にはクラロスタットボリュームの刻印から年代が違うと言う方もいます。鋭いところを見ています。。。
仮にこのボリュームが後の年代のものだとしても、何かの都合で後で交換したのかも知れません。1桁台はまだ試作途中でマランツ関係者が持っていた可能性も有ります。

裏板です。これはグリーンハンマートーン塗装なのでこれがオリジナル色です。

裏面です。こちらも2桁台以前のオリジナルで違和感はありません。かなり前に低圧セレンをブリッジダイオードに交換されています。
恐らく3〜40年前に交換されたのかも知れません。当工房でレストアの時、低圧セレンに戻します。

シリアル名板です。これが真贋の判定にはなりませんが、刻印の字体は当工房で所有する他の2桁台2台と同じです。
リヤパネルはこの画像のようにブラウンハンマートーン塗装です。これは殆どの2桁台グリーンに共通です。全面グリーンは3桁台からになります。

天板と側面は塗り替えられています。本来はグリーンハンマートーン塗装で、当工房の2桁台と同じ色です。中のスポンジがボロボロの状況からするとかなり前に塗り替えられたのでしょう。当時のことを良く知る方の話では船便の輸送中扱いが乱暴でかなり傷が付いて日本でメーカー(日本マランツ)が塗り替えたものがたくさんあったそうです。この為、最初期型には様々な色があるようです。
本機は恐らく後で塗られたものでしょう。本来はグリーンです。

こちらの左側面も塗り替えられています。本来はこちらもグリーンハンマートーンです。
これだけ全体にきれいなのは最初に買われた方がメンテをしないでずっと大事に持っていたからでしょう。

右側面です。こちらは本来はリヤパネルと同じブラウンハンマートーン塗装ですが、左側面や天板と同じ15000番台以降のブラウン色に塗られています。しかも、どれも完全オリジナル色なので恐らくメーカーが当時に塗ったのでしょう。
後年に他の業者が塗ったのではなく、まだオリジナルを販売している当時の日本マランツが塗っていることになり、これも謂わばオリジナルともいえるのではないでしょうか?このような経緯を想像しながら眺めるのもいいですね。

★最後に、本物である有力な証を紹介します。

配線にまた拘ります。セレクタースイッチから伸びているシールド線の1本がグリーン色です。
これは私が知っている10010番台と同じです。

電気に詳しい方なら当然ご存じだと思いますが、本来緑線はアース線で電気設備保安基準ではアース以外には使用禁止です。つまり緑のシールド線は有ってはならないのです。これはアメリカのUL規格でも同じ筈です。

マランツも最初の頃は知らなかったのか、たまたま手元に有った線を使い途中から気付いて(或いは指導を受けて)黒に統一されたのではないかと推測します。 Marantz7より前のMarantz Audio Consolette や model 1 も配線材には緑線を多用しているので、これ以前は規制が無かったのでしょう。

つまり、この緑線シールドの使用が10010番台以前の物であることを物語っています。
(我々同業者の間ではこの10010番台は本物と認識しています)



以上のことを踏まえると、この Marantz7 S/N 10007 は本物です。
















渋い外観です。パネルは勿論3桁台以前の薄板で角スリット、パテントNo.の入った茶ノブ、丸角つまみです。
このパネルは3桁台に多いゴールドでは無く、薄いシャンパンゴールドです。 
このウッドケースはオリジナルですがこの頃のものでしょうか?パンチングメタルに錆も無く全体にきれいなので後で組み込んだものかも知れません。どちらにしてもいい味を出しています。

Marantz7 S/N 10007番 当工房所有機 概要

セブン再生工房

2020. 11. 20 掲載


リヤパネルは傷は殆ど無くきれいです。電源コードが丸く硬いもので、これは3桁台後半から11000番台の特徴になりますがこの頃に既に有ったのでしょう。恐らく部品選定の候補だったと思います。最初期はまだ量産に向けての実験段階なのです。
当工房所有機などこの後の2桁台はやわらかいコードに四角いプラグです。
根元が切れて危ないので付け替えてこのまま使います。貴重なメッキ芯線のオリジナル電源コードです。

本機は1958年から登場し10001〜23000番台まで作られたMarantz7の中では正に1958年製 10007番です。

マランツセブンの7番です。 嘘っぽいですねー。 誰でもそう思います。増して1桁台が日本にあるなんて。。。
知り合いのマランツに詳しい同業者の方々からまるで鑑定会議さながらにいろいろな意見が出ましたが恐らく本物です。
鑑定会議?はまるで考古学のようです。

まだレストア前の状態をご覧ください。

バンブルビーに亀裂が入っています。俵形2段積の段付きリード線が付いたカソードバイパスコンは2桁台以前の特徴です。この上に緑色シールド線が飛んでいます。本稿最下段でこの緑線について言及しています。

電源の電解ブロックコンデンサーもオリジナルのままです。

フロントパネル裏側のシリアル印字です。最後の7の位置がチューブマウントの印字と違うと言う方もいます。 回転式のナンバリング機ではよくあることです。最初にチューブマウントに打って、こちらに打つとき修正したのでしょう。
1の後の最初の00が2つ接近しているのは2桁台と共通なのでこの印字は本物です。
この面にグリーンの塗装が飛び散った形跡が残っているので、やはり左側面は元々はグリーンだったようです。
この為、当工房では本機もグリーン機として扱っています。このような2色も2桁台以前の特徴です。
また、全面グリーンは3桁台からになります。当工房でも全面グリーンは2台所有しています。

電源回路です。特に問題は無く普通のMarantz7です。スポンジのカスがここまで飛んでいます。