Marantz#7オリジナル 11000番台シルバー 概要

充分なエージングを経て最近改めて音の検証をすると、こちらにある他の#7オリジナル初期型と比べて特に音に深みが感じられます。どれも透明で臨場感が溢れてとても素晴らしい音ですが、本機の場合しっとりとした情緒が加わり何ともいえない素晴らしさです。
以前から音質で私が最も気に入っている逸品でしたが、改めて他と聞き比べてその微妙な違いを確信しました。

いろいろその違いの原因を探って、わかったことは電源の高圧B電源のブロックコンデンサーが純正SPRAGUEに2本とも交換されています。
オシロで波形を見るときれいな直流であり、負荷変動にも充分追従でき完全に良品であることがわかります。
以前からこのブロックコンデンサーを探していましたが純正SPRAGUEは見つかりません。しかも同形異種もありません。そのためブロックコンデンサーに容量不足が生じた場合は、同じ容量のチューブラコンデンサーを追加するしか方法は無いようです。
本機には奇跡的に純正SPRAGUEのブロックコンデンサーに交換済みのため大変貴重な逸品です。

また、最終段のカップリングに使用されているセラミックコンデンサーも純正SPRAGUEのNOS良品に交換し、より一層透明感とダイナミックさが増しました。このため音は世界に数あるMarantz#7オリジナルの中でも最高レベルと自負しています。


目をつむり静かなクラシックを聴いていると、切れの良い音の中からふわっとした臨場感が漂い、ずっしりとした重低音が心に響きます。
同じ音を他のトランジスターアンプで聴くと何か音色がわからない音がスピーカの前で平面的にただ鳴っている、そんな感じです。
このあたりの差は音源の多い交響曲が最も顕著に感じられます。他のジャンルはガンガン鳴っていればどれも同じかもしれませんが。

クラッシックで重低音を意識できるのは意外でしょう。バスドラムとチューバやコントラバスがほぼ同じテンポで演奏される場合などはどれも聞き分けられます。普通はドゥワン,ドゥワンで一体で聴こえますがボンボンとドンドン、ブゥーンが別の音で聞こえ、しかも床に反響する音が重なる響きまでも感じることができます。

それにバイオリンなどの調べがまるで春のそよ風のようにさわやかな雰囲気を漂わせています。他の真空管アンプからは感じられません。恐らくMarantz#7オリジナルの特徴的な音です。この音こそが聴く者を魅了してやまない仕掛けなのです。
(SACDやDACからのデジタル音源です。昔のレコードはここまでクリヤな音ではありません)


いろいろ聴き比べた結果この仕掛けの張本人は純正クラロとバンブルビーです。
この音の絶対条件は17000番台までの純正クラロが付いて、特に主要カップリングがバンブルビーの完全良品で構成されているものに限ります。

そして・・・本機の音の素晴らしさは、どの高級アンプも右に出るものは無いでしょう。

      これが当時の本当のMarantz#7オリジナルの音です。
今回の出品は1958年から登場し10001〜23000番台まで作られたMarantz#7の中では超初期型の11000番台の貴重な1台です。
本機はこちらでは音が一番気にっている秘蔵品です。そのため出品に当たってはかなりの高額な値を付けています。
勿論、価格に見合った価値は充分あります。
真空管の後ろに横一列4個並んでいる小さなコンデンサーがバンブルビーです。
特にこのコンデンサーが劣化しやすく、ほとんどのレストア機は他のコンデンサーで代用しています。

左下2個の黄色のSPRAGUEコンデンサーも新品に交換しました。このコンデンサーも音質に大変重要なコンデンサーです。
不良になると低域がだらしなく膨らんできます。
このコンデンサーの規格は特殊なので純正でもバンブルビーではなく他の種類を使用しているようです。こちらでレストアした6台でも3種類ありました。








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本機は60年近くの歳月を考えると外観はきれいです。特にフロントパネルは他の#7オリジナルとは違う光沢の有るシルバーで大変きれいです。
全体として派手さよりも高貴なたたずまいを感じます。

消耗品である電源コードはオリジナルそのままなので多少ヒビが入っていますが使用には問題ありません。コンセントプラグは独特なカラス口です。
超初期型の11000番台までの電源コードは硬いので劣化し易く、破損すると2度と手に入らない貴重な部品です。

ケースも塗装面の傷は少なく比較的きれいですが両側面に擦り傷があります。
最高級ビンテージアンプの貴賓が漂っています。 ツマミも傷や腐食は少なくきれいです。
#7オリジナル用木製ケースもきれいです。
使用感はありますが、これがビンテージアンプの良さでもあります。シリアルナンバーは超初期型11000番台の大変貴重な個体です。
コンセントプラグは独特なカラス口です。電源コードは破損すると2度と手に入らない貴重な部品です。
真空管ケースは純正の新品に交換しました。
上から見た内部で、基板上にバンブルビーコンデンサーの良品が並んでいます。状態の良いクラロスタット製ボリュームと右端に良品の赤いセレン整流器があります。音の臨場感と透明感に大きく貢献しています。

音質重視のためフォノイコ周りのコンデンサーも#7純正のSPRAGUE新品に交換済です。これはとても劣化のしやすい電解コンデンサーでレコード再生の音質に大きく影響します。

見えにくいのですが音の周波数特性にとても影響のあるセラミックコンデンサーも純正SPRAGUEの新品と交換しています。
こちらでレストアする前の#7オリジナルは全て不良でした。
これは入手が極めて困難なので他では殆ど手を加えていないようです。不良になると低域が弱くなり中高域が妙に強調され、これが#7の音の特徴と勘違いされている方が多いようです。良品に交換するとしっかりとした重低音と臨場感が堪能できます。

右端のブロックコンデンサーの中央と上部の小さいタイプの2本が純正SPRAGUEのラベルの貼ってある良品で極めて貴重な部品です。
今では絶対に手に入りません。