Marantz7 14000番台 レストア依頼機 K.S 様 概要

★持ち込み部品の検査です。

先ず、復刻の高圧セレンを予備品として保管されていたので使えるかどうか検査します。

2018.9.8 初掲載
2018.9.8 検査完了
2018.9.13 レストア途中経過
2018.9.20 レストア途中経過2

2018.10.4 レストア完了


★レストア完了です。                                                                    2018.10. 4

前回の掲載でメインボリュームをオーナー様持ち込みのクラロスタットに交換しましたが、ガリがひどくいろいろやっても治らないので相談の上元のバイオレットに戻しました。

これで漸くおとの調整ができました。
結局、やはり音が悪いので基板上の主なカップリングコンデンサーは全て交換しました。

左画像が交換した電源トランスです。

ほぼオリジナルと変わりません。

内部上面です。
電源のブロックコンデンサーを3本全て交換し、高圧セレンも交換しました。
ライン部の漏れがあった0.22uF/400Vの160PをGoldenBlackに交換しました。
フォノイコの1段目カソードバイパスコンを正規仕様の200uF SPRAGUEに交換しました。

この後、メインボリュームとRIAA偏差コンデンサーの交換が残っています。

★以上のように電源回路はセレンを含めて電解ブロックコンデンサーなど主要部品は全て交換です。

少し疑問なのは以前レストアされた方はカップリングコンデンサーは交換されたものの、電源にはあまり手を加えていなかったようです。
この状態で何とも思わなかったのでしょうか?

低圧ヒーター用電解ブロックコンデンサーです。
これも3ブロック中2ブロックでリークしています。

このブロックコンデンサーは復刻代品もありません。
他では不良になると無視するかチューブラコンを付け加えて凌ぎます。

当工房では正規仕様の代品を確保できます。

★それでは各部の電圧測定です。

★ただ今最終調整で試聴を繰り返しています。

全体の音はいつものレストア機とほぼ同じになりました。とても良い音です。

しかし、元に戻したバイオレットのボリュームは回転方向にガタがあります。
ある角度で音量と周波数特性が不安定になり大幅なギャングエラーもあります。

我慢すれば使えないこともありませんが、これもまたオーナー様と相談になります。

今回は電源トランスを始め電源部の全ての部品は交換になりました。

カップリングコンデンサーも基板上は全て交換です。

これが持ち込みされたクラロスタットのメイン、バランスのボリュームです。

箱も刻印もクラロスタットですが、良く出回っているボディが緑の怪しいクラロスタットも同じように箱や刻印はCLAROSTAT made in U.S.A. となっています。

恐らくこれ等は元々不良品が何らかのルートで出回ったものと推測します。

そうでなければMarantz7オリジナル本体から外したもの以外に、部品である筈の無いものが存在する筈がありません。

トランスを交換した後の高圧B1の電圧です。
正規電圧280Vより少し高い285.8Vを示しています。正常です。

この高圧B1に伴い、他のB2,B3なども同様に正常です。

これもトランスを交換した後のヒーター電圧です。
正規電圧19.8Vに対し少し低い19.3Vを示しています。これも正常範囲内です。

右はオーナー様の持ち込みに依る交換したボリュームです。

純正クラロスタットはポッチが付いていますが、このボリュームは改良版なのかポッチは付いていません。しかし本物のクラロスタットのようです。

オーナー様が長い間苦労して手に入れたNOS品だそうです。

しかし、装着して音出しをするとスピーカーを壊すほどの大音量のガリが出て使い物になりません。

未使用で長い間保管されていたのか蒸着抵抗の表面に酸化被膜がぶ厚く覆い腐食状態なのでしょう。接点復活剤を塗布して何回も回し、当りを付けても回復しませんでした。



Marantz7や他のビンテージアンプでもオーナー様が将来のために純正部品を確保して保管されていることが多いのですが、こちらの経験では殆ど使い物にならないケースが多々あります。
特にボリュームは極めてデリケートな部品です。

残念ながら保管中の経年劣化も進行しているようです。

依頼事項の中にヒューズボックスが甘くて留らないので改善できないかというのがありましたが、きちんと押して回せば普通に留まりました。
不良ではありません。

電源トランスとボリュームを交換した後の内部上面です。


★レストア途中経過の2回目です。                                                           2018.9.20

現在の状況を掲載します。
レストアは進み、電源トランスを交換し一先ず正常に鳴るようになりました。

1次電圧100Vでトランスの2次側のヒータ用電圧です。19.72Vとかなり低い状態です。

取り外した高圧用セレンです。
3.8MΩ/4.3MΩと全く整流していません。

1次電圧100Vでトランスの2次側の電圧です。252.0Vを表示しています。
少し高めです。

1次電圧117Vでトランスの2次側の電圧です。283.9Vを表示しています。
異常に高い状態です。

内部裏面です。
低圧のセレンを交換しました。

さて、いよいよ電源投入です。
しかし、電源を入れると高圧が異常に高く、電源投入時の高圧B1は410Vに達します。
暫く安定するまで待って高圧B1を計るとそれでも320Vで正規の280Vに対しかなり高い状態です。
これは1次電圧117Vでの値なので100Vで試すと少し高めながらなんとか正規の電圧に近い状態です。
もしかするとこのトランスは復刻7や7k用100V仕様のトランスかと思いましたが、ヒータ電圧がセレン後19.7Vと異常に低く100V仕様では無さそうです。
考えられることは2次側がトランス内部でショートしている可能性があります。
このままでは危険です。


★レストア途中経過です。                                                           2018.9.13

現在の状況を掲載します。
レストアは進み、電源回路と以下の画像の内容を交換しました。

フォノイコのカソードバイパスコンは1段目が左右とも静電容量が150uF程しかありません。
単なるバイパスコンなので気にしない方もいますが、、、私は拘ります。
無くても良いくらいですがsoul marantzの設計です。こういうところが隠れた音質の成果だと信じています。


後でレストアの時、交換時に確認すると以前レストアされた方は150uFと違う値のものに交換されたようです。
今回正規の200uFのSPRAGUEに交換します。


★各部の検査を済ませいよいよ最初の音出しです。

先ず電源を入れて真空管が上がってくると同時にブーンとハムノイズが出ます。
やはり電解ブロックコンデンサーが平滑していないため脈流が真空管のプレートに乗り音に出ています。
特に高圧2段目も検査では良品のようでしたが、このように音にハムノイズが乗る場合、
この2段目の後に脈流が出ているため、やはり新品に交換する必要があるようです。

音そのものは何とか聴けそうですが、少しひずみも感じられます。
トーン回路の0.33uFが元のままなので恐らく抜けているかも知れません。

フォノイコは低域が弱いのでRIAA偏差を決めるコンデンサーの容量が膨らんで不良です。

ボリュームは特に問題なさそうですが、驚いたことにバランスボリュームの中点位置が右にほぼmax位置でずれています。
下の画像の赤丸矢印が正規の中点位置です。

これに伴って裏の出力レベル調整ボリュームの角度の違いも理解できます。
右がmin左がmax状態でした。

2018. 9.11追記
取り外した低圧セレンを単体で測定しました。
左が順方向で5.97kΩ、右は逆方向で36.35kΩです。

今回は高圧と違って単位はキロオームです。
順方向は良いのですが、逆方向は最低でも70kΩ以上は必要です。
今回の36.35kΩではマイナス方向の電圧も出ていることになり、これがヒーター電圧を下げる要因です。

左の画像はこちらで保管している未使用新品の復刻セレンです。

ラベルのように順方向11kΩ、逆方向55kΩです。

これも電圧が下がるので使用できません。

逆方向の抵抗値です。 4.49MΩです。
通常良品は15MΩ〜∞(無限大)です。

順方向の抵抗値です。 3.11MΩでまずまずの値です。

の持込された復刻セレンは双方向とも導通があり整流できないので不良です。

これをこのまま使用すると電圧低下と電解ブロックコンデンサーに直接交流を流すことになり、ブロックコンデンサーがパンク(爆発)します。
過去にレストア依頼機でブロックコンデンサーが爆発したものや中の電解液が漏れ出たものがたくさんあります。



各カップリングコンデンサーの漏れ電圧チェックです。

概ね良好ですが、ライン部の重要な0.22uFが両方とも1V以上あります。
160Pの不良です。

これは低圧セレン直後の電圧です。
通常は26V位あるのでかなり落ちています。

このためこの低圧セレンも不良です。

低圧セレン直後の電圧が落ちているので、ヒーター電圧もご覧のように15.38Vしか出ていません。
通常は19.8Vが正規の電圧です。

このようにヒーター電圧が低い状態で鳴らし続けていると真空管の劣化が早くなります。

Marantz7の場合真空管はTelefunken<>有の貴重なNOS管を使われる方が多いと思いますが、ヒーター電圧にはくれぐれも注意しないと、ある日突然6本ともダメになる日が来ます。

高圧セレン直後の電圧です。
269.4Vを示しています。ここの正常値は320V以上です。

このため、この高圧セレンは不良です。

高圧B1です。
なんと238.7Vでこれまでこちらで検査した値では最下値です。
正規電圧は280V位です。

高圧B2です。
B1の低下に伴ってこれも低下しています。

高圧B3です。
当然これも低下します。
この値は真空管ドライブ電圧の限界値をかなり下回っています。
この状態を長く続けると真空管の劣化が早くなります。

高圧2段目です。
3ブロックは何とか生きています。
静電容量とESRはこの通りですが、実際は音にかなり影響するので音を聴いてみないと完全に良品とは言えません。

高圧1段目です。
3ブロックともご覧のようにLeaky表示です。
しかもESPも異常に高い値です。

つまり、このブロックコンデンサーは全く機能していません。

このφ25の電解ブロックコンデンサーはもはや枯渇状態で、復刻新品は他ではなかなかありません。
またMarantz7はセレンがダメになると必ず初段のこのφ25がやられます。


当工房では充分な量を確保でき、将来に渡って安定補修ができます。

★検査完了です。                                                                    2018.9.8

先ずは通電前の電解ブロックコンデンサーの検査からです。

裏面のカップリングもオレンジドロップです。

以前レストアされた方はこの画像中央上のコンデンサーを160Pに交換されています。
ここはHiパスフィルター回路なので現在では使うことはありません。
なぜここを敢えて交換されたのか、疑問です。
無駄な作業と言えます。

Marantz7オリジナル SN.14000番台です。全体にやはりきれいです。ウッドケースもきれいで大事に使われている様子が伺えます。

今回はオーナー様がお持ちのクラロスタットのボリュームに交換します。

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主にオレンジドロップと160Pでレストアしてあります。残念なことにボリュームが交換されています。
上の画像のように出力レベルの違いは恐らく160Pの劣化とプレート抵抗の値の変化に拠るものと推測します。

バランスボリュームは純正のクラロスタットです。

裏面の出力レベル調整ボリュームが、左右のレベルが違います。 →

今回こちらにレストア依頼される前にオーナー様が自身で交換された低圧の復刻セレンです。