★幸い代わりのトランスがすぐに見つかりました。

すぐに取り寄せ、それぞれの巻き線抵抗値を計りました。

右の画像がそれぞれの値です。

今回の不良品の1次側がOL表示で抵抗値無限大、つまり切れています。
これ以外は両方ともほぼ同じ値です。



やはり、この電源トランスは最初の検査の時高圧B電圧が既定の100Vも低い値なので変だと思ったのですが、限界が来ていたようです。

この電源回路は倍電圧回路なので仮に片方のダイオードが切れていてもこんなに中途半端な電圧降下にはならず、半分位の電圧になる筈です。

今回はダイオードの逆方向にも数メガΩの導通があったことから、まだ整流はできていたはずです。
しかし、こんな100Vも電圧降下は起こしません。

また、負荷側に異常電流が流れた場合ヒューズ(3A)が飛ぶはずですからレストア後の回路異常でもありません。
当然アース間、各負荷間の抵抗値等は検査確認して通電します。また、上記画像のようにほぼ正規の値です。
しかし、このレストア後の各電圧の値も若干低いので既に兆候が出ていたのかも知れません。


やはり電源トランスの長年の絶縁不良から通電後の温度変化でショートし断線が起こったのだと推測します。

ビンテージアンプはこの様に古い部品を使い続けているわけですから何が起こっても不思議ではありません。

修理レストア依頼 Marantz8Bk I.T 様 概要

セブン再生工房

2018. 12. 4 掲載
2018. 12. 5 検査完了
2018. 12.12 レストア完了
2018. 12.13 トランス交換完了

最初に電源トランス直後の高圧電圧です。219.2Vを示し良好です。

高圧のダイオード直後の電圧です。440Vを示しこれも良好です。

高圧B1の電圧です。425Vです。少し落ちていますが充分な値で良好と言えます。

★電源トランス交換完了です。                                                       2018.12.13



まずは各電源回路の電圧測定です。

★左右のACバランス、出力管4本のバイアス調整も難無くできました。

とても良い状態です。

同様に高圧B2の電圧です。388.7Vを示しています。

電源トランスを取り出して検査しています。

代品のマロリーに交換されている低圧C電源用電解コンデンサーです。
ご覧のように片側がリークしています。(Leaky表示)

この画像と右の画像は初段管のカソードバイパスコンです。左右どれもLeaky表示でリークしています。ESRも高い値で不良です。

本来は無限大の筈ですが、値の示す通りリークしています。

★以上のように電源回路はいろいろ改造されているにも関わらず異常なくらい電圧が落ちていました。

本来ここまで電圧が落ちると過電流が流れヒューズが飛ぶはずなのですが、念のためヒューズを調べると、3Aのヒューズが装着されています。
規定では2.5Aですが同じものがすぐに手配できなかったのでしょう。

しかし電源トランスには規定より大きな電流が流れていた筈です。
この3Aのヒューズで何とか持っていたと考えられます。
しかし大変危険な状態でした。


★それでは各電解コンデンサー類の検査です。

配線がかなり改造されています。

音出しをする前に出力管を交換したのでバイアス調整を行なおうと思いましたが、電源投入後10分経過でもバイアスは4本ともこのメータのように針が低い状態のままです。

この画像のようにバイアス調整用ボリュームは4本とも最大まで回して左の画像のようにメーターは上がってきません。

★レストア完了です。                                                       2018.12.12

大工事になりました。


まだ新しい筈のカップリングコンデンサーの一部がこげて変色しています。真空管に異常があるのでしょうか?

低圧C電源です。-46.3Vとこれも充分な値です。素晴らしい!

★ただ今試聴しています。開始から1時間経過で今のところ異常ありません。

音はやはりMarantz8Bの音です。しかも予想通り極めてクリヤーな音です。
低域もどっしりとした重低音が堪能できます。
入口側のバンブルビーが効いています。

この音はこちらにあるMarantz #2 #9kとも違います。
#8Bは音全体にダイナミックな感じです。

いつものMarantz8B + TelefunkenEL34 + Bumble Beeの音です。

いいですねぇ。




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交換部品です。大物が増えました。

全てのバイアス調整とACバランスDCバランス調整を終え試聴に入ります。

★暫く順調に良い音で鳴っていました。

しかし、10分程経つといきなり両チャンネルともスーッと音が消えて行きました。
すぐに電圧検査をしました。

電源投入後バイアス調整を行っています。
画像のように4本ともきちんと調整できます。

バイアスC電圧です。 -49.2Vを示しやはり少し低いようです。

同様に高圧B3の電圧です。371Vを示しています。

高圧B1の電圧です。これも421Vを示しまあまあの値です。

整流後のダイオード直後の電圧です。
435Vを示し、まあまあの値です。

持ち込みのTelefunken EL34と奥に交換した新品の電解ブロックコンデンサー2本が見えます。

赤いコンデンサーは純正GoodAllのTRW製で、黒いバンブルビーも見えます。

★レストア後の各部の電圧です。

交換した新しいダイオード4本とバイアス用低圧C電源の新しいブロックコンデンサーです。

改造されていた電源回りも元の状態に戻りすっきりとしています。

全ての電解ブロックコンデンサーを正規仕様代品の新品に交換しました。
高圧のダイオードも交換しました。
全てのカップリングコンデンサーもGoodAll-TRWの新品に交換しました。
特に入口側のカップリングは良品バンブルビーに交換しました。
真空管初段のカソードバイパスコンもSPURAGUEの新品に交換しました。

不良トランスと交換用トランスの検査です。

← こちらが電圧チェックの画像です。トランス直後の交流電圧です。
数ボルトから今のメーター指示の0.889Vを経過しほぼ0Vに近付いています。
トランスの絶縁不良から電圧が落ちていきます。

これは電源トランスの異常です。巻き線が切れたのでしょう。


以前のレストアで追加改造された電解コンデンサーも調べてみると、容量がどれも47uFの筈が画像では28.21uFと半分に減少しています。3本ともです。
やはり追加されたものはどれも早く劣化するようです。

本機は#8Bkなので電解ブロックコンデンサーの色は黒ですが、状態を調べると静電容量が無く (not measured 計測不能) ESRも異常に高い値なので不良です。

これはダイオードが不良です。画像のように逆方向にも導通があります。
ダイオード4個中2個が画像のように逆方向で導通があり不良でした。

まずは高圧B1からです。
330.6Vを表示し異常に低い値です。既定では435Vなので100V以上も落ちています。

余りにも電圧が低いのでダイオード直後の電圧を計ってみると333.8Vで、ここは447Vが普通です。

低圧C電源です。表示は-51.5Vでこれもマイナスが大きすぎます。規定では-45Vです。
高圧が落ちているのでこのようにマイナスが大きくなるのか、コンデンサーか抵抗が不良なのか

全体をまとめたものです。ラベルに X 印が貼ってあるものが不良です。

出力管のカップリングに不良が多いですね。

取り敢えずカップリングはこのままでも音は普通に鳴りますが、出力管のカップリングは完全に抜けると大変危険です。

当工房ではパワーアンプのカップリングは安全のためなるべく全て新品に交換するようにしています。






★各カップリングコンデンサーの検査です。
下の3つの画像は不良の状況を示し、下の大きな画像は全体の状況をまとめたものです。

★検査完了です。                                                          2018. 12. 5

状態が非常に悪いので細かい所は電源の修理後になりますが、まずは各部の電圧をチェックしました。

梱包を開いて真空管を挿そうと思ったのですがB2用がセンターピンが折れて本体の真空管ソケットに刺さったままになっていました。

センターピンが折れた真空管と本体ソケットに残った折れたセンターピンです。

内部です。電源周りがかなり改造されています。 各カップリングコンデンサーも交換されています。

★バイアスが上の画像のように上がってこない状態でも何とか音出しはできました。

しかし、やはり音が小さくフルに出ている状態ではありません。
これは電源の高圧の電圧が異常に低い状態です。

また、このような電源電圧が極端に低い状態では、極めて貴重な出力トランスと電源トランスにかなりの負荷がかかり危険です。

せっかくの新しい真空管を装着したので壊さないためにも、長い間の動作は控えて短時間で音出しは終了しました。

入力端子も交換されています。

恐らく本体表の電解ブロックコンデンサーは全てダメなのでしょう。その代わりのコンデンサーがブロックコンデンサー分追加されています。
配線も全てのブロックコンデンサーから追加の電解コンデンサーに張り替えて有ります。

★結局無理に折れたものを挿さず、交換用に同梱されていたTelefunken EL34に出力管を4本とも交換しました。
この交換用Telefunken EL34はNOS未使用品のようです。

入力端子が改造されていますが出力端子は良い状態です。

Marantz8Bkです。 概観は年代相応の使用感がありますが大きな傷などは見当たりません。錆もまだ出ていない方です。

調子が悪いので診て欲しいとのご依頼です。