McIntosh C20レストア依頼 S.N 様 概要

セブン再生工房

2018. 3. 12 新規掲載
2018. 4. 1 レストア完了

★本機はMcIntosh C20の初期型で大変状態の良い逸品です。
こちらの所有機と比べてもその美しさが一際輝いて見えます。
本機はボリュームにガリがあるので交換し、検査して悪い所があれば直して欲しいとのご依頼です。

早速音出しを行いました。
まずライン部でAUXからCDの入力で試聴しました。全体にバンブルビーの音ですが低域が膨らみ中高域が尖って歪が出ています。
次にフォノイコ部です。特にライン部程異常は感じません。RIAA偏差も大きく崩れてはいないようです。
約2時間程試聴を続けていますが、次第に歪が大きくなって行くようです。
また時折左側からガサゴソと異音が出ます。

内部はオールバンブルビーでまだカップリング系に手は加えてありません。残念ながら幾つかのバンブルビーは代品交換になります。

こちらの画像は電源回路のレストア後の高圧B1の電圧です。
正規の電圧250Vを少し上回って252Vを表示しています。
完璧です。

★ レストア完了です。                                                                       2018. 4. 1

今回も大量の交換部品が出ました。

バンブルビーもかなりの量です。

ヒータ用電解コンデンサーを単体で計測しました。ご覧の様にLeaky表示で計測できません。ESRもかなり高い状態です。

外してみるとケースは紙管でした。これは外部からの湿気を吸いやすくリークし易い形状です。胴体を摘まんでみても少し柔らかい感じで通常のアルミケースでは無さそうです。
交換した代品は通常のアルミケースなので外部からの湿気は入りません。

こちらの保有機のC20も同様にリークしています。

このためC20は殆ど電源の電解ブロックコンデンサーは全滅と推測します。

ヒータ電圧も規定5.6Vのところ5.43Vとまずまずの値です。レストア前は4.8Vでした。

かなりの数のカップリングコンデンサーが交換になりました。できるだけバンブルビーの音を変えたくないのでフォノイコは何とか使えるものは残しています。

電源回路は全てオリジナルの状態です。

★ 4連ボリュームと漸く入荷した高圧用電解ブロックコンデンサーのオリジナル仕様特注品に交換しました。

★一通り検査をしました。

今回は電源部を全てオリジナル仕様の特注品に交換予定のため詳しい検査はしません。

以前から手配しているC20用ブロックコンデンサーの入荷まではカップリングコンデンサーの交換作業から始める予定です。


★これから不良部品の交換になりますがC20は部品交換が大変なのできれいなベゼルに傷をつけないよう黒テープで養生をします。

★電源のブロックコンデンサーは全てオリジナル仕様に交換するため付いていたチューブラコンは撤去です。

漸く下の配線が見えてきました。
こうしないと最終段真空管周りが測定検査できません。

ここは正規仕様のブロックコンデンサーに交換した後検査し不良であれば交換します。

★次に一通りカップリングコンデンサーを検査しました。

使えそうなバンブルビーは半分ほどです。
特にライン部に不良が目立ちます。やはりこれが音にも現れていました。

★まずは高圧B電源電圧の測定から。

画像のように237.4Vとまずまずの値です。正規電圧は250Vです。
この後のB2,B3,B4の電圧も比例してまずまずの値です。
これは恐らく追加したチューブラコンデンサーだけで出している値のようです。
ブロックコンデンサーに並列にチューブラコンデンサーを取り付けてあるので計測ポイントが判り辛かったのですが何とか取り出せました。

しかしこれはとても危ない状態です。
長く伸ばしたリード線だけで大きなチューブラコンデンサーを支えています。
少し揺らすとブラブラして、込み入った配線はショート寸前です。

★ 検査終了です。                                                                       2018. 3. 18


★全体にとてもきれいです。

★各部の電圧を確認して、いよいよ試聴です。

交換したボリュームはMarantz7のクラロスタットの様に通常聴くレベルでは12時辺りがベストな音量です。
この辺は以前の音量に慣れた耳では物足りなく感じるかも知れませんが、音的には良い方向です。

電源がしっかりしてきたので中低域は滑らかに響きます。中高域も歪も無く、レストア前は尖っていた音が円やかになりきれいな音に変わっています。

本日午後から3時間位エージングを行っています。
なかなか良い音になりました。

こちらではいつもクラシックで試聴していますが、煌びやかな調べはさすがにC20です。





 


★電源投入後の初期状態のつまみの位置です。
バランスが左に傾いています。音出しでは逆に右が弱くこの反対の状態で普通に聴けました。
恐らく左右どちらかの真空管の増幅率が変わっています。
これがカップリングの劣化かプレート抵抗の膨らみか検査をしてみなければわかりません。
トーンも音出しでは高音低音とも10時半位に絞らないと普通に聴けません。
かなりトーン回路のコンデンサーの値が変わっています。
気になるのが上段右端のAURAL COMP(一般にはLOUDNESS)が1を指しています。FLATでこちらでは聴いています。
回すとこの上は硬くて回りません。

★見事にオールバンブルビーですが幾つかは代品交換になります。

C20はバンブルビーでも特に高価なカップリングコンデンサーを多数使います。
このため本気でオールバンブルビー化するとMarantz7の倍位の費用が掛かります。
これは本体相場価格の倍以上の修理代が掛かることを意味しますので残念ながらお勧めではありません。

当工房では(元)所有機C20初期型を実験台?として代品交換でバンブルビーの音に近づける試みを行っています。

グチャグチャの電源回路です。
よく見ると各チュブラコンのアースポイントはどこでも構わない風の取り方です。
ダイオードの上にもかぶっていますね。ノイズを拾いますヨ。
出力最終段カップリングにチューブラコンをくくりつけています。
真空管のソケットピンとチューブラコンの脚が接近しています。
高圧なので接触しなくてもスパークしてショートします。
トーン回路の信号線に電源部品を縛らないで。。。
やれやれ、できれば見たくない回路状態ですね。怖い怖い!

こちらではこれを元の状態に戻します。

★内部は電源回路がかなり手を入れてあります。全てのブロックコンデンサーにチューブラコンを追加されています。
音漏れは無いのでブロックコンデンサーのショートは無さそうです。恐らく全てのブロックコンデンサーは抜けてチューブラコンだけで生きているようです。
C20の高圧電源は整流管で低圧ヒーター電源はダイオードの全波整流です。この為電源回路の不良は主にブロックコンデンサーになります。