Marantz7レストア依頼 10200番台 S.S 様 概要

2017.4.11

レストア修理完了です。
今回は通常リストアと言うことなので全面的にバンブルビーの交換ではなく、こちらで気になったところだけを代品のコンデンサーを用いてレストアを行いました。
まず音に一番影響のある0.22uF/400VのカップリングはGoldenBlackに交換しました。最近のコンデンサーでは一番気に入った音です。
また、セラミックもSPRAGUEに交換しました。
これでライン部はまずまずの音です。
フォノイコもカソードバイパスコンを正規のものに交換しました。
最後に問題のボボボボッ!と言うノイズですが検査経過にも記したようにブロックコンデンサーの飽和による共振です。
とりあえずこちらの#7オリジナルからアッセンブリーで交換してみました。予想とおりノイズは消えました。
また取り替えるのも面倒なのでこのままにして、元の#7オリジナルには高圧用φ25、φ35とも代品に交換して装着したところ、これも異常なく良い音で鳴っています。
ヒーター電圧は18.6V位なので少し低いですがとりあえず問題ないと思います。

★レストア完了 2017.5.11

上記の状況では高圧B電圧はセレン直後は315Vありましたので電源トランスやセレンの異常では無くブロックコンデンサーの経年劣化によるESR(等価直列抵抗)の増加と容量低下です。これはφ25, φ35とも不良です。
またヒータ電圧もセレン以降は23.4Vを示し、ヒータセレンも健在です。したがってこれもブロックコンデンサーの異常で、特にこのブロックコンデンサーは高容量タイプにも拘わらず静電容量がほぼ無いに等しい状態でした。
外観ではこの電源回路には全く手が加えていないようなので3本とも単純に経年劣化に因るものです。

ただ、困ったことにこちらでは高圧用φ25とφ35は在庫で持っていますが、ヒータ用φ35はありません。
恐らく代品も見たことが無いので完全に枯渇状態です。

この状況は現在同時にレストアしている
Marantz #7Kでこちらでも同じです。

Marantz #7オリジナルで致命傷と考えられる一つの要因がこの電源回路の高圧B電源用φ25とヒータ用φ35のブロックコンデンサーです。最早、世界中で完全枯渇状態になり代品すらありません
後は純正クラロスタットボリュームです。これもかなり以前から完全枯渇です。
これまで辛うじて復刻版として少量生産されていたセレンも、現在生産終了となり今後枯渇状態となります。
電源トランスも同様です。
バンブルビーに関してはご存じの通り代品がいろいろあります。ただ純正バンブルビーの良品も極めて希少です。

こちらでは何とかブロックコンデンサーφ25と純正クラロスタット、セレンそして各種バンブルビーの良品を保有しています。




この後、各カップリングコンデンサーやその他のコンデンサー類、抵抗類の検査を行います。




最初の音出しでは低域のトーンコントロールつまみの切替でドーンと言うスクラッチノイズが出なかったので0.22uF/400Vは大丈夫かなと思ったのですが、残念ながら全くの不良でした。(この画像では5.5と2.6の数字の書いてある右から3,4本目のものです)

一般にこのスクラッチノイズが出るとこのコンデンサーが不良と言われますが、以前から私が申していますようにトーン回路全体の組み合わせです。一つの目安にはなりますが今回のようにノイズが出なくても不良の場合があります。

最終段の0.22uF/200Vは多少不良でも音には余り出ないので最初の音出しで歪を感じたのは裏面の0.01uFの不良かと思ったのですが、やはり音に一番影響するこの0.22uF/400Vでした。
このカップリングコンデンサー以外は完全に抜けていない限り多少絶縁抵抗値が良くなくても歪が出るほど音が悪くなることはありません。透明感が無くなる程度でそれなりに聴けます。
#7オリジナルを持っている方は殆どそれで満足されていると思います。




これまでどの#7オリジナルを検査しても残っているバンブルビーはこの様に殆ど不良です。
バンブルビーが付いているから良い音と思うのは間違いで、むしろ他のレストアされる方のように割り切って他のコンデンサーに換えた方が確実に良い音になります。

バンブルビーで良い音が出るのは奇跡に近いと認識していただければと思います。






基板表のバンブルビーは少しは生き残っているかと思ったのですがご覧のように全滅です。(数値は絶縁抵抗値を表し単位はMΩ)

画像左端の160Pは何とか1000MΩ以上あるので良品と判断します。

この画像の奥に少し見えますが、カソードバイパスコンデンサーが何故か2本束になっています。前回の他でのレストアの時、正規品が無かったのでしょうか?
今回のレストアでSPRAGUEの正規品に交換します。

基板裏面のライン部のバンブルビーもご覧のように不良です。
フォノイコ部は他での以前のレストアで160Pに交換されています。
0.01uFの値を意図的なのか0.0063uFに変更されています。
恐らくRIAA偏差の0.0056uF不良の低域補正と表面0.47uF不良で高域強調をキャンセルさせたかったのでしょう。

功を奏してこのフォノイコの音はあまり違和感無く聴けています。

今回のレストアで全て正規の状態にしたいと思います。

★検査経過 2017.4.14

★検査経過 2017.4.13

こちらはヒータ電圧です。16.37Vを示しています。正規電圧は19.8Vなのでこれもかなり下がっています。
1時間経過で不安定になり最低電圧が15.7Vまで低下しました。
これがボボボッ音の直接の原因のようです。

つまり正規の電圧が掛からないので真空管から異音を発しています。

高圧B電源の電圧が230.2Vです。ここの正規電圧は280Vなので50Vも電圧が下がっています。
こちらでは1次側電源電圧は117Vなのでこれでもかなり異常です。
しかも1時間経過で不安定になり場合によってもっと下がります。
ここまで下がったのを見たのは初めてです。

内部はまだバンブルビーが残っていますが、音は歪がかなり入っているので殆ど不良です。
残念ながらボリュームは2個とも純正ではありません。

また、よく見ると基板上の配線が正規の状態ではありません。恐らく前回他でのレストアで基板を外したのではないかと思います。
再組付けの時、前回の状態に戻さなかったようです。
ボリュームへの配線も少し違います。アースラインが正規のルートではありません。
この辺りが異音の原因ではないかと考えています。

今回のレストアは最初期型10200番台の、しかもグリーンハンマートーン塗装の逸品です。
下の画像のように両側面と後面がこちらの70番台と同じ渋いグリーンハンマートーン塗装です。
フロントパネルも同じように少しグリーン掛かった薄いゴールドです。

今回のレストア依頼は、現状で音にボボボッと言う異音が出るため直したいのと、ボリュームがこちらにある純正クラロスタットに交換したいとのことです。
コンデンサー類は費用がかさむため最低限の変更に留めたいというご希望です。

最初の音出しではやはり歪が多く、時間が経つとボボボッという音が確認できました。

ブロックコンデンサーをアッセンブリーごと交換しました。
ブロックコンのベースの色と四角い抵抗の色が以前と違います。

最近では大変希少なφ25のブロックコンデンサーはこちらにたくさん用意してあるのでいつでも交換できます。








最近よく見るボデイが緑色のものです。

このタイプは以前こちらでレストア時に特性を計りました。 そのデータはこちらです