先ず、MCトランスで必要な特性として昇圧比がありますが、これはトランスの一次と二次の巻数比で決まります。

DL103等の高インピーダンス機種では出力電圧が0.3mV程度なので、EQの入力感度が3mVだとすると10倍の昇圧比が必要になるので、巻数比は1:10になります。

初期SPU-GE等の低インピーダンス機種では出力電圧が0.05〜0.2mV程度なので、40倍前後の昇圧比が必要になり、巻数比も1:40になります。

次に、トランスのインピーダンスは巻数比の2乗に比例することが分かっているので、高インピーダンスタイプでは1:100、低インピーダンスタイプでは1:1600になります。

カートリッジの内部インピーダンスは、DL103が40Ω、SPU-GEが3Ωなので、そのままこの倍率を当てはめると二次側のインピーダンスは以下のようになります。

  ・DL103等高インピーダンス 40Ω:4kΩ
  ・SPU-GE等低インピーダンス 3Ω:4.8kΩ

しかし、MCトランスの二次側にEQの入力抵抗47kΩが接続されると、トランスのインピーダンスは相対的なものなので、実際の一次側インピーダンスは以下のようになります。
(MCトランスによっては、二次側に負荷抵抗を並列に接続していて、実際の負荷が47kオームより低いものがあるかもしれません。)、

  ・DL103等高インピーダンス 470Ω;47kΩ
  ・SPU-GE等低インピーダンス 29Ω:47kΩ

MCカートリッジの負荷インピーダンスは3倍〜10倍程度が良いと言われますが、これを見ると概ねそのようになっていることが分かります。
(個人的には、MCトランスを使用する場合では、音質面を考慮すると10倍程度をお勧めします。)

またこのことから、MCトランスの一次側インピーダンス表示値は、接続するMCカートリッジの内部抵抗の目安を示していて、実際のインピーダンスではないことが分かると思います。

もう一つ、トランスの重要な特性にf特性がありますが、一次側や二次側に接続する機器の内部インピーダンスによって変化するので厄介です。

MCトランスでは、二次側に47kΩの負荷抵抗を接続することを前提にして、一次側インピーダンス値の数分の1〜1/10の内部抵抗を持つMCカートリッジを接続したときにフラットなf特性になるように設計されています(そのハズです)。

しかし、このことを上手く利用すると、音質のコントロールをすることができます。

基本的には、MCトランスの一次インピーダンスとして表示されている値を、MCカートリッジの推奨負荷インピーダンスに合わせます。

MCカートリッジの推奨負荷インピーダンスより、MCトランスの一次インピーダンスが高めのものを選ぶと、高域が強くて元気の良い傾向になります。

逆に、MCトランスの一次インピーダンスが低めのものを選ぶと、かまぼこ型のf特性になって大人しい音質傾向になります。

一般的には、MCカートリッジに合わせてMCトランスをたくさん用意できないので、当工房オリジナルプリアンプMKe-1やイコライザーアンプEQC-1のように入力インピーダンスが選択できるEQであれば一次側のインピーダンスを音質的に適正値になるようにコントロールできます。

実際にこちらのOrtofon SPUで一般の47kで高域がきつく感じるカートリッジでもMKe-1で入力インピーダンスを33kのレンジで聴くとかなりやわらかい雰囲気になり、特にクラシックでは聴きやすい音になります。

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イコライザーアンプの入力インピーダンスとMCトランスの関係について

当工房オリジナル真空管式プリアンプ MKe-1。イコライザーカーブをレコードの各レーベルに合わせて36種類の選択ができます。Phono入力インピーダンスを5段階に調整できます。CR型回路によりウエスタンアンプのような臨場感があります。
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