★ C22 プリアンプ

★ヴィンテージアンプは全く補修の手が入らないオリジナル状態が良い、などと妄想を抱いている方へ。

なるほどそうであれば理想です。しかしアンプの部品には消耗品もあります。コンデンサー類です。
特に電源回路の電解ブロックコンデンサーが不良になるとアンプにとって大切なトランスや真空管までダメになります。

通常電源の電解ブロックコンデンサーの寿命は、持って20年です。それ以上は期待できません。
しかしビンテージアンプの、例えばMarantz7,8Bなどはすでに発売されて60年近い年月が経っています。
まともである筈がありません。 眠っている場合も有ります。未使用新品です。しかしこのようなNOSは経年劣化で100%不良です。

それでもオリジナル状態が貴重の如く自慢されるコレクターがいます。

アンプの電源回路の不良で一番最初にダメになるのは整流器の後の電解ブロックコンデンサーです。整流された大きな脈流を何段にも分けて直流に直します。
セレン整流器もよくダメになります。セレンがだめになって電解ブロックコンデンサーもやられます。

よく電解ブロックコンデンサーをケミコンと言う方もいますが、私はわかった様な顔をしてかっこ付けることは嫌いなので長いですが電解ブロックコンデンサーと言っています。
ついでにCR特性でよく使う時定数は何と読みますか?じていすう?私は[ときじょうすう]と学生の時に習いました。
少し気になったので時定数の読みを調べてみました。すると学術用語としては「じていすう」、JIS規格では「ときじょうすう」と読むそうです。なので私は若いときに刷り込まれた??ときじょうすうと気取って?言います。

電解ブロックコンデンサーは不良になると絶縁状態が悪くなり端子のプラス側とアース間で電流が徐々に漏れ始め、最悪は突然短絡状態になり大きな電流が流れます。
特に大きな電流のヒーター回路も危険です。 大電流が流れて電源トランスが焼き切れます。

★ヒューズがあるから大丈夫と思われますが、ヒューズの規格はJISやULでは定額の2倍以上の電流が1分間流れて切れればOKです。
トランスはこの前に発熱し、異常高温になり絶縁不良を起こして焼き切れる(焼損)のです。

レストア機の中にはヒューズが飛んだといわれた方がいましたが、予想通りトランスも切れていました。

Marantz2など古いアンプにトランス巻き替えが多いのも、上記の通りオリジナル状態に拘り最悪の状態になるまで聴き続けるからです。
パワーアンプの場合状態が悪くなってもあまり音に出ません。しかし、最悪の事態はある日突然起こります。
何か兆候があればまだ良いのですが、いきなり鳴らなくなります。その時が最後です。→ こちらですMcIntosh MC240

プリアンプの場合、ブーンやプツプツなどの異音が出たり音漏れが出始めて、おかしいなと気付くことがあります。



★なぜトランスがダメになるのか?
電源電圧が低下すると、真空管の各回路のバイアス動作点が変わることから真空管のプレート電流が異常に高くなります。この電流増加がトランスの異常発熱を引き起こし、巻き線の絶縁体であるエナメル被服を溶かし漏電が始まります。これが進むと巻き線間でスパークして銅線が焼き切れます。

トランスはアメリカのUL規格ではB種絶縁(クラス130)の取得が一般的なので約80度(環境温度40度)まで耐えますが、この異常発熱は電圧低下の量により簡単にこれを超える場合があります。
この状態ではヒューズは飛びません。



とにかくオリジナル状態だと思って喜んでいる方は要注意です。もう60年も経っているので賞味期限?は40年も過ぎています。
後で大手術にならないためにはきちんと直せるところへ見せましょう。

また、当工房が持つオリジナル仕様の部品を持たない所では、これまでのように大改造されることを覚悟してください。
NOSの純正部品も期待しないでください。言うまでもない事ですが有るわけが無く、数十年前から皆さん探し尽くして重箱の隅にも転がってはいません。

これまでレストア屋はオリジナル部品が無いから改造に走るのです。

老舗のショップの中には華麗な大改造を誇るベテランのレストア屋もいます。
皆さん改造の長い実績が有るでしょう。ただ今、ヤフオクやYouTubeにも自慢気にPRを出している所があります。

このベテランのレストア屋の手に掛かり長期に渡って改造されて来た大量のかわいそうなビンテージアンプを、当工房ではオリジナル仕様の新品部品を使って元の良い状態に戻しています。




価格等はこちらのレストア費用等のご案内を参照ください。

最近上記理由で電源トランスを交換したパワーアンプがあります。→#8B




★補足
レストア依頼機の中には外観や内部が極めて綺麗なのに電源トランスの漏電が極めて大きいものがありました。 → #5

持ち主の方は購入されてから20年程それこそ大事に使っていました。
余りにも綺麗で電源回路の状態も良いのに電源トランスだけ異常な漏電があるので、使用電圧を伺うと100Vでずっと使っていたそうです。

Marantz5は117Vなのです!

内部電圧は比例して2割以上低下し、電源トランスもそれだけ発熱します。パワーアンプはこれが顕著に影響します。

購入された老舗ショップでは100Vでも使えますよと言われたのでその通りで使っていたそうです。
このショップは何もわかっていません。(かなり有名なショップなので犠牲になったアンプは計り知れない数が予想されます)
結局このMarantz5の電源トランスは2台とも巻き替えすることになりました。

このようなショップにはお気をつけください。

改造例です。

これはこちらのmodel 2 の内部です。以前他でレストアされた状態です。青い2本のコンデンサーはバイアス用の代品コンデンサーです。
出力トランスの隣に追加の電解ブロックコンデンサーが見えます。
表のブロックコンデンサーが完全に抜けているので空いた所に押し込み追加されました。
改造後電圧調整のためボリュームも追加されています。
実は青い低圧セレンも不良でダイオードを並装されています。

当工房でレストア後の電源回路です。
オリジナル仕様の高圧電解ブロックコンデンサー(左上の画像)と低圧の電解ブロックコンデンサー(上の画像のシルバー)を交換し、セレンも交換しました。

当然追加されていた怪しいブロックコンデンサーと電圧調整用ボリュームは撤去しました。

これで極めてオリジナル状態に戻りました。

C22プリアンプは極めて変形的な電源回路です。この為、現在鳴っている個体は当工房レストア済以外は全て(大)改造されています。50年以上経って尚動作しているものは必ず修理の手が入ります。この時、同じ仕様の部品は確実に無いので、他のレストア屋さんは改造或いは新規(自分勝手)に電源回路を組み、音質を無視して何とか鳴らそうとします。これが現在皆さん聴いているマッキンC22なのです。

★こちらもmcIntosh C22の電源回路です。  →
これも某修理屋さんのサイトから抜粋しました。
(老舗の有名ショップです)
C22の部品は無いのでどこでもこうされます。

これはブロックコンデンサーを全て撤去して原形を留めないくらい改造されています。恐らくこの技術屋さんのご自慢の作業でしょう。

50年も経つと、まともに音を聴くためにはこうせざるを得ないのです。

むしろ上記画像の様に中途半端にチューブラコンをぶら下げるより、割切ってこのように全部作り変えてしまった方がよほど良い音になるかも知れません。

しかし、ビンテージアンプの品位は無くなり、売るときは叩かれるか売れなくなります。

ヴィンテージアンプは我々の寿命より長いので、いつかは必ず売ることになります。
その時に困らないようにしたいものですね。

セブン再生工房

★ Marantz #2

↑画像の左下の2本の黄色いコンデンサーは本来基板の表面に付いています。
手が入らないので改造されたようです。

Marantz 7編  (2023. 7. 5 更新)
Marantz 2,8(B)編 
(2023. 1. 4 追加)
McIntosh編
         
オリジナル状態の妄想について

2023. 7. 5 更新

       

★改造の最悪の状態です。これまでよくある事ですが、セレンにダイオードをパラ(並列)に接続されるとこうなる例を紹介します。

★これまでのレストア依頼機に有った、セレンにダイオードのパラ接続の例をもう少し掲載します。

  
【Marantz #2, #8B 編】

Marantz8Bオリジナル初期型の内部です。
初期型の場合、これだけ年数が経つと殆どの個体は電源回路が不良です。

結構オリジナル状態として良さそうに見えるものもありますが、まだ音に出てこないだけで必ずかなり劣化しています。
コンデンサー類は消耗品なので絶対60年は持ちません。

この個体の電源回路では電解ブロックコンデンサーが不良のため、前のレストアされた方は黄色のSPRAGUEと青のチューブラコンを取り付けられています。

これでも現状では高圧電源は低下して音が荒れています。
結局、一時凌ぎで取り繕ってもすぐにだめになります。

低圧C電源もMALLORYの代品に交換してあリます。

当工房レストア後

当工房レストア後

(2023. 1. 4)
★今度は少し変わった改造劇を紹介します。一見普通のレストアのように見えますが、実は大変なことになっていました。

内部は過熱して交換された全ての国産フィルムコンは白化しています。当工房ではパワーアンプには必ず耐熱仕様のコンデンサーを使います。
特に右側のオレンジ色の抵抗の下のコンデンサーが白く、このコンデンサー側の出力管スクリーングリッドが焼けました。

バイアスメーターをバラして内部を交換します。

  
mcIntosh 編】

★こちらはmcIntosh C22の電源回路です。某ショップのサイトから抜粋しました。
このショップでレストアし、このC22を結構な高額で販売されているようです。

ヤフオクなどで中を見せないで検査修理済み動作良好と謳って高額で出されているものには、この様な物が多いようです。

電源回路はご覧の様に大改造されています。
まず、高圧セレンがダイオードに、低圧ダイオードはブリッジブロックに、高圧ブロックコンデンサーを1本取外しチューブラコンで代用しています。

電圧を合わせるために抵抗を多数追加しています。
このため本来の姿はありません。

ここまでぐちゃぐちゃに改造するといつ発火してもおかしくない状態ですね。

カップリングコンデンサーは全てSPRAGUEのビタミンQに換えてあります。

このビタQはSPRAGUEのコンデンサーの中で最も音が悪いのでこちらでは使いません。

 表面です。



形状は純正品とほぼ同じです。→

← 当工房で製作したプラスチックヨークと巻き替えたメーターコイルです。これで正常にバイアス調整ができ、アンプも元通りになりました。

★ Marantz #2 はマランツ最初期のパワーアンプです。このため電源回路はどれもかなり以前から不良になり、さまざまな改造が成されてきました。 まずオリジナル状態のものは皆無です。
仮に有ったとしても近いうちにどうにかなるか、当然満足の行く音では無いでしょう。

完全オリジナル状態のものは大変危険な状態にあると言えます。

当工房でレストアすることによって極めてオリジナル状態の当時のMarantz#2の音が蘇ります。


★ C20 プリアンプ

★上の画像は以前当工房でレストアしたMC60パワーアンプです。右の画像のように内部の電源回路は全て新規に作り直されています。
他の増幅回路もこのレストアされた方がMC60の本来の回路を一部変更して独自の回路に作り変えられています。コンデンサー類は一般に手に入りやすい国産品ばかりです。

このレストアされた方はMcIntoshの設計思想やポリシーを全く理解せず、自分本位の考え方で改造されました。
つまり、このアンプはMcIntosh MC60では無く、トランス類をMC60から流用したマニアの自作アンプの失敗作なのです。
パワーアンプは回路構成が単純なのでマニアは部品が無ければ都合のいいように改造します。

当然マッキンの音とは掛け離れているし、そもそもまともな音には成っていません。
(全ての部品は良品なので修理完了の最初からこの音です)
恐らく修理完成後は特性を一通り計っているでしょうが、数値がよければそれでよしとして深く聴き込みもせずオーナー様に返しているのでしょう。



★この後、当工房では少し時間が掛かりましたがオリジナル仕様の電解ブロックコンデンサーを手配し、カップリングコンデンサー類もMcIntoshやMarantz純正のGoodAll-TRW製或いはSPURAGUE製と交換して、できるだけオリジナル状態に再レストアしました。

オーナー様もやっとマッキンらしい元気な音が聴けたと大喜びです。

★こちらもMarantz7の電源回路を原型を留めない位大改造されたものです。

これでも電圧が低かったのか青い電解チューブラコンを追加されています。
ヒータ電源もブリッジダイオードに換えられ、電圧を合わせる為セメント抵抗を追加されています。

前にレストアされた方はかなりご苦労をされています。

この修理屋さんは電解ブロックコンデンサーを持たなかったために思い切ってこの様な大改造をされました。

★この様な修理屋さんに出したら折角のMarantz7オリジナルも価値のないゴミになります。

この後、当工房でブロックコンデンサーのアルミフレームまで製作し完全に元のオリジナル状態に戻しました。

これもMarantzに合うブロックコンデンサーがなかなか無いのでいろいろ改造されています。
こちらの工房では右の様に新品の代品を使いオリジナル状態に戻しています。

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こちらは表の状態で電解ブロックコンデンサーは3本ともマロリーに交換されています。普通の状態です。

裏面の電源回路です。特にコンデンサー類を追加されているわけでは無いので最小限の変更のように見えます。

レストア依頼機の状況です。これもブロックコンデンサーの不良により以前レストアされた方はチューブラコンデンサーを2個追加されました。こちらでオリジナル状態に戻しています。

★これ等の青いセレンは当然どれも不良です。全てこちらで良品のセレンに交換しています。また、全ての電解ブロックコンデンサーも不良で交換になりました。

当工房でも以前はこの青い復刻セレンを使っていましたが、初期不良が多いのと数年でダメになる率が高いので今は茶色のセレンを使っています。

★また、今では復刻セレンを作るところは殆どありません。この為、復刻と言えどセレンは極めて貴重です。当工房にはまだ充分な在庫があります。

こちらは、まだ見えるようにダイオードを付けられています。白い絶縁チューブまで付いています。 悪戯にしては潔いです。

こちらはセレンの真下に付けられています。ヤフオク等で真上から撮ったら全く見えないでしょう。一番多い騙しの手口です。
セレンが下を向いていたら要注意。

こちらもセレンの真下です。しかもダイオードのリード線にマグネットリングまで付けています。ノイズ軽減のつもりかもしれませんが、高周波でも無いのに何の意味があるのでしょう。しかも極めて危険です。素人の付け刃です。

こちらはMarantz7オリジナルの高圧セレンにダイオードがパラ(並列)に接続され、セレンの下に隠されています。-> こちらにも掲載しています。

こちらもMarantz7の低圧セレン(緑)にダイオードを4本パラに接続し、裏面からも見えないように電源トランスの下に隠されています。

上の画像は改造されていた#8Bの電源回路を、当工房で右の画像のようにオリジナル仕様部品でレストアし#8B本来の状態に戻しました。
これは右下の画像のように#8B表面の電解ブロックコンデンサーも全てオリジナル仕様品に交換しています。 ↓

★こちらも改造されたMarantz8Bの電源回路です。本来のブロックコンデンサーを使用しないで茶色の3本を追加され、回路を大改造されています。しかしこちらの検査では電圧は規定より100Vも低下していました。
当工房で上右画像のように本体表面に付いている電解ブロックコンデンサーをオリジナル仕様の代品に交換することにより、右の内部画像のように正規の状態になり電圧も正常になりました。
上のレストア後の画像と同様、これが本来のMarantz8Bの姿です。

しかしこのアンプはこれまで改造された状態で、しかも100Vも低下した異常電圧で使用されていたため徐々に電源トランスの絶縁不良が進み、再レストアして正規の電圧になると遂にはこのトランスは断線してダメになりました。
幸い代わりの純正トランスが確保できたので交換し、全てオリジナルの状態になり良い音が蘇りました。
しかし、大変な大工事になりオーナー様もお気の毒です。

これだけ改造されていたので恐らく安く買われたのだろうと思いますが、きちんと整備されたものより遥かに高く付いたと思います。

青いバイアスセレンに電線をくるりと巻いて丸いダイオードがパラに接続されています。これが原因でしばらくしてバイアス異常を起こし大惨事になりました。

焼けて破壊された出力管スクリーングリッドです。このチャンネルの出力トランスも焼損で巻き替えになりました。

修理校正後のバイアスメーターです。正確に作動します。

← #2の当工房で交換済オリジナル仕様電解ブロックコンデンサー
   (Marantz#2,#5,#8,#9全て共通)

C20のレストア前の状態です。グチャグチャですね。小さくノイズも拾っています。青いコンデンサーは重いのでブラブラしています。
中には信号線にバンドで縛っています。黄色のコンデンサーも最終出力コンデンサーにくくり付けています。とにかくこのスペースに押し込むことでいっぱいのようです。かなり大変だったと思います。

当工房でレストアし全て良品のブロックコンデンサーに換えて正規の状態に戻しました。小さなノイズも消えました。

これが当工房でオールバンブルビー化レストアしたオリジナル状態のC22です。
高圧セレンはこちらで復刻の新品に交換しています。
低圧セレンはダイオードですが、C22後期型はダイオード4本組が正規の状態です。
当工房にはC11,C22初期型用の低圧セレンも準備しています。
茶色のチューブラコンは追加のように見えますが、純正良品で正規の位置に取り付けています。

左上の某ショップの画像と比べると随分違いますね。両方とも同じC22オリジナル後期型です。

上のC22の画像で表面です。ブロックコンデンサーを1本取り外して改造されています。
本来は丸いタワー形が3本並んでいます。

★マッキンの改造劇(例)は尽きません。あなたのマッキンも必ず改造されています。
こちらのC22も改造されたものです。

上の画像は電源回路の表面、右はその裏面です。
まず表面の3本ある電解ブロックコンデンサーのうち1本を取り外し、市販の電解コンデンサー3本を束にして元の場所に装着してあります。

しかも右の画像のように裏面でも細長い市販の電解コンデンサーをパラに追加しています。
そしてラグ端子も追加し、このラグ端子には高圧セレンの代わりに恐らくダイオードが取り付けられているのでしょう。
つまり全く別の電源回路を構成して各回路に電源を供給しています。

このレストアされた方はマッキンの部品を何も持たずに日本で手に入る汎用部品だけで修理されました。普通は皆さんこうなります。


このようにマッキンは改造の宝庫です。こんな中途半端な改造ではすぐにだめになりますが、知らずにこのような改造されたものを手に入れたユーザーはお気の毒としか言いようがありません。


★こちらは巧妙に改造されたC22です。こちらのレストア依頼機です。一見オリジナル状態に見えますが全く別回路を組まれています。

★上の画像は当工房で修理前のC22の画像です。一見特に大げさな改造はされてはいないように見えます。こちらの検査では普通に各電解コンデンサーをチェックし1本だけ不良とわかったので修理に掛かりました。しかし詳しく配線を見てみると不良の1本だけ交換するわけには行きません。回路状態が全く違うのです。

C22は極めて特殊な電源回路です。低圧回路から倍電圧で高圧回路を形成し、電解ブロックコンデンサーも何と1本に高圧用と低圧用のブロックが混在しDUMY端子まであります。

前のレストアされた方は修理の時、通常出回っている高圧用と低圧用の別々の汎用電解ブロックコンデンサーに交換されました。しかも全く違う仕様です。こうなると配置は全くオリジナルとは異なり完全に別回路を組むことになります。しかもどういう訳か低圧回路もわざわざ表に付いている抵抗を外し回路の流れを逆に取りつけてあります。

この様にC22の電源回路では極めて特殊な電解ブロックコンデンサーが使用されている為、修理ではオリジナルの部品が無ければ(ある筈が無いのですが)これまでの例のように適当に電解コンデンサーを追加するか大改造するしか方法はありません。

現在普通に鳴っているC22は 100% 大なり小なりの改造の賜物であり、皆さんマッキンC22では無い音をC22と思って聴いている事になります。

また、この様な改造劇がベテラン技術者の方々の仕事であり、いかに華麗な改造を施すかによって優劣を競っているのでしょう。
何も知らないユーザーは、ウマにシカ??を見ています。あなたも。。。


★当工房では完全オリジナル仕様の電解ブロックコンデンサーを確保できます。このため完全に元の状態に戻すことができ、華麗なマッキンサウンドを蘇らせることができます。

一般的な補修状態です。

ヒーター用ブロックコンデンサーが無いので市販品を束ねて代用しています。

こちらは高圧1段目φ25のブロックコンデンサーが無いので青い市販のものを束にしています。

 
★ オリジナル仕様のブロックコンデンサーが無かったら。。。改造例を一挙公開。

こんなひどいことになっているものもあります。

★ 上記改造例はどれも他のレストア屋さんでは正規の部品を持たないため必ずこうなりました。

当工房では電源回路の全てのオリジナル仕様の新品部品を確保できますので、完全オリジナル状態にレストアできます。

ご安心ください。

まず日本では手に入らないSPRAGUE製のチューブラコンデンサーです。
本機がまだアメリカにある間に追加されたようです。

内部です。どこかのレストア屋さんがきちんとレストアされました。しかし使った部材が悪かった。交換したカップリングコンデンサーに国産のフィルムコンを使われました。こちらもバイアスセレンにダイオードをパラに接続されています。この為、しばらくしてバイアス異常から出力管に過電流が流れ内部が過熱状態になり、交換した国産フィルムコンの内部が溶けて出力管スクリーングリッド抵抗が焼けヒューズが飛びました。この時は電源トランスの損焼は辛うじて免れましたが、グリッド抵抗が焼けた側の出力トランスは巻き替えになりました。しかも、もっと大変なのはバイアスメーターまで過熱で内部が溶けて使用不能になりました。
バイアスメーターが使えなくなるとバイアス調整ができないので、普通はこれでこの個体は臨終で部品取となります。

本来のMC60の内部です。

電源回路を大改造されたMC60です。以前他でのレストアでチョークコイルを移動させ、本来付いている元のブロックコンデンサーの配線を全て撤去し、新規にフレームを作って国産汎用のブロックコンデンサーを追加されました。


   

【Marantz #7 編】

★セレンが不良になると電圧が落ちます。この為、これまでレストア屋さんは代品のセレンを持たないので、不良のセレンにダイオードをパラに繋いで電圧を稼いでいます。昔、素人マニアの誰かがこうしてみたのでしょう。それでうまく行った(ように見えた)ので、その後ベテランになってもまだ華麗なテクニックを誇るかのようにこうされています。 今もやっている有名ショップがあります。セレンが付いていることを見せてアンプを高く売りたいのでしょうか? それで上の画像のように、ダイオードを巧妙に不良セレンの下に隠しています。

我々電気技術者の間では、ダイオードの並列接続は絶対にやってはいけないタブーです。ダイオードの並列は相対的な抵抗値が下がるので一時的に電圧は上がります。しかし、電流が大きくなると抵抗値の微妙な違いからどちらかのダイオードに全電流が流れ、何れ必ず破損します。特にアンプでは元々ダイオードより抵抗値の少ないセレンです。こちらに電流が集中し時間経過と共に必ずセレンは完全にショートします。

★この記事の見出しで最悪の状態になるとは、セレンが不良になると、正方向だけでなく逆方向にも電流が流れます。実はこれが電圧を落とす原因なのです。回路上このセレンの後にはφ25電解ブロックコンデンサーに繋がっています。電解コンデンサーは極性があり逆方向の電圧が掛かると絶縁不良を起こし、逆方向の電圧の大きさに依っては最悪はブロックコンデンサーが破裂します。(一度破裂した状態のMarantz7を見ました)

特にMarantz7の高圧セレン直後の初段φ25電解ブロックコンデンサーはこのセレンの真下にありますが、この狭いスペースにはこのφ25の小さなブロックコンデンサーしか入りません。これは極めて希少で、(当工房以外は)代品は殆どありません。

つまり、ダイオードのパラ接続は代品の無い貴重なブロックコンデンサーを壊し、これが原因で上記多数掲載の画像のように大改造されるのです。また、この様な電源回路の不正状態で長く聴いていると、これも極めて貴重な電源トランスまで逝ってしまいます。こうなると殆どの修理屋(ショップ)はトランスが無いため修理不可能となり、それでその個体は終わりの宣告をされます。そして欲しくもない代替機の購入を迫られます。
(当工房にはいつでも電源トランスがあるので直せます)

★また、上の右の画像では緑色の低圧セレンにもダイオードを4個パラに接続されました。今回初めて見たので特別に掲載しています。この修理依頼機では、パラに接続されたダイオードが原因で低圧の電解ブロックコンデンサーの内部がショートし、ヒーター電圧が15Vと異常に落ちています。ここまでヒータ電圧が落ちると真空管Telefunken ECC83 <>有では動作しないものも出てきます。何度かこの様なものを修理しています。

この様にセレンにダイオードを並列に接続すると電源トランスまでやられ、後で高価な代償を払う事になります。(下に掲載しているMarantz8Bは極めて最悪の事態になっています)


★皆さんご自分のMarantz7や他に持っている真空管アンプを確認してみて下さい。もしセレンにダイオードが付いていれば惨事になる前に至急こちらに再修理に出してください。 また、相変らずまだこの様なレストアをされているショップには近付かない事です。最下段に掲載している電源電圧100Vでも使えますと言う所と同様に、いつも何も知らない客を騙そうと構えている処です。

★ Marantz #8B

当工房で修理後の内部です。赤茶色のコンデンサーが耐熱仕様のコンデンサーです。赤くて気持ち悪いかもしれませんが、これはMarantz純正Good-Allの現代はTRW社がライセンス生産している新品です。音も抜群に良いです。バイアスセレンは予算の関係でダイオードで単独使用です。勿論、電源の電解ブロックコンデンサーは全てオリジナル仕様の新品に交換しています。

これでまた良い音が当分の間聴けます。

★ MC60 パワーアンプ