★ブロックコンデンサーに付いて:
こちらの工房では上の画像中央の様にUSA仕様のφ25 20uFx3や低圧ヒータ用ブロックコンデンサーを多数保有しています。
左の画像はMarantz7の配置ですが、この縦に3本並んでいる下と真中が高圧B電源のブロックコンデンサーで不良になりやすい物です。
特にこの下のφ25の小さなものはほぼ代品がありません。この位置に装着できるサイズでこの容量の組合せのものが無いのです。
当工房では代品ですがこのブロックコンデンサーの新品を多数確保することができます。
ビンテージアンプではこれらブロックコンデンサーを長年使用すると必ずESR(等価直列抵抗)が増加し、音が荒れて悪くなったりこれが進むとボボボッと異音が出るなどの異常が発生します。まだ大丈夫と思って手を加えなくても気が付かないうちに音はしだいに荒れて雑な音になり、しかも異常は突然やってきます。
この為一般には異常が起きた場合、上の画像の右の赤円の様にチューブラコンデンサーを追加します。
極めて貴重な3桁台や2桁台でこんな状態では品位が落ちますね。
できればブロックコンデンサーは古い純正やオリジナル状態よりも、代品でも良いので同じ形でESRの無い新品を使いたいものです。
新品であれば音色で特に重要な中音が安定してとてもきれいに出ます。
★★ 音楽に聴き入るとは、良品のバンブルビーは勿論のこと、こう言う状態で初めて心が動かされるのでは無いでしょうか。
★Marantz7オリジナルで完全に枯渇状態の部品が下記の純正クラロスタットと、このφ25及び上記画像左の上の長いヒータ用ブロックコンデンサーです。
これ等が不良若しくはクラロスタットが代品に換えてあればMarantz7オリジナル初期型としては致命傷と言えるでしょう。もう元に戻すことは不可能に近いので。
★Marantz7で良く出る症状で音漏れが有ります。セレクターを回して隣の音が聞こえたり、ボリュームを絞っても音が出ている現象です。
これはアースが浮いているためですが、この原因は電源のブロックコンデンサーの不良も大きな一因です。
ブロックコンデンサーの不良では容量不足、上記ESRの増加に加え絶縁抵抗不良があります。
この絶縁抵抗不良が音漏れに関係してきます。特にヒーター用低圧ブロックコンデンサーです。
このブロックコンデンサーが絶縁不良を起こすと信号がアースを経由してヒータから回り込み最終段カソードフォロア回路から出力します。
このヒーター用ブロックコンデンサーが不良になると他のショップでは上記画像の様にチューブラコンを並列に追加しますが音漏れには効きません。
当工房のオリジナル仕様の代品が無ければ不良のブロックコンデンサーを外してチューブラコンを束にして組み直すしか方法は無く、ビンテージアンプの品位はガタ落ちです。
レストア依頼機の中に、RCA入力端子全てに抵抗を入れたものがありました。レストアされる方は悩んだ末の苦肉の策だったようです。
こちらのページにこれまで他のショップで改造された例を掲載しています。
★純正クラロスタットは、音にあまり影響の無い、電気的にはただの可変抵抗器(ボリューム)です。(・・・の筈です)
しかしこのボリュームの特徴は、つまみの角度が11時位から音が上がってきます。ボリュームは一般的に上限と下限はあまり精度も良くなく中央付近が一番音が良いといわれていますが、特に最初の下限から立ち上がる国産やメキシコクラロでは左右の音量に差がでる、いわゆるギャングエラーが出やすく音質的にもボリュームを絞った控えめな音では余り良くない音になる傾向があります。
そのためこの中央付近から立ち上がる純正クラロスタットはボリュームの一番良い所を使うため抜けが良く音の中に含まれる情感を消さずに通過させることができます。この為臨場感や透明感のあるよい音が得られているのだろうと考えています。
しかし、不思議な音になります。ピーっと言う音ではピャーと聴こえます。好き嫌いがありますが、高価ですね。
(この音は#8をオールバンブルビーにすると顕著になりました。そのため全体に音の抜けが良くなるとこのように聞こえるのが特徴のようです。)
メキシコクラロは復刻版に付いていますが、オリジナル後期型の色付けの無い国産の東京コスモスの方が良い音のように思います。
このメキシコクラロやボデイが緑色のクラロスタットは下記公開データの様に角度によって周波数特性が変わる粗悪品です。
Marantz7も年数を重ねるうちにコストダウンのため粗悪品を使うようになり、音質と比例して人気も落ち会社も衰退の一途を辿ったとも言えます。
ちなみに、見分け方ですが純正クラロスタットは左右ケースの片方か両方に丸いポッチが付いています。Marantz7の内部写真ですぐわかります。
4桁台はポッチが1個で3桁台や2桁台ではポッチが2個です。
メキシコクラロは左右ケースの間に白い半透明のコーキング材が挟まっています。これ以外はA&BかクラロでもMarantz7オリジナル用とは違うものでしょう。
A&BはMarantz7の補修部品として当初から出ていたようですが、やはり下から音が上がってきてギャングエラーが出やすく、音もメキシコクラロよりはマシな程度のようです。
以前ヤフオクにメキシコクラロが出ていましたが、最終落札価格が20万円超です。皆さん純正クラロと思い込んで群がったようです、狂気ですね。お気を付け下さい。
2017.1.10追加:
最近レストア依頼でボデイが緑色のクラロスタットの刻印が入ったボリュームに交換しました。
この検査測定データを公開します。 → こちらを参照
★ Marantz7に使用されているボリュームの種類です。
左の画像はMarantz7の青いセレンですが、赤矢印の丸円にダイオードがパラに接続されています。
よく他のレストア屋さんはセレンが無いとこの様にダイオードを並列につなぎます。
電気屋ならわかる事ですが、セレンが不良の場合は殆どが逆方向にも導通があります。
これが電圧を下げるのですが、この逆方向の導通に依ってマイナスの電荷が次の電解ブロックコンデンサー掛かり電解ブロックコンデンサーが不良(リーク)になります。
電解ブロックコンデンサーには極性があります。逆方向に電流が流れると導通不良を起こし、最悪は破裂します。これまでのレストア依頼機に何台か破裂に至ったものがあります。
長期間逆方向の電流が流れ続けていたのでしょう。
この様にダイオードを並列に繋いでも何の意味も無く、不良のセレンから逆方向の電流が流れるのは同じなのです。
交換するセレンを持たない他のレストア屋さんはダイオードを並列に繋ぐことにより一時的に電圧が上がったかの様に見えるので良しとするのでしょうが、我々電気屋ではダイオードの並列接続は絶対やっていはいけないタブーなのです。
直列は耐圧を上げるので良いのですが並列ではバランスが取れないのでどちらかに全電流が流れて破損します。
今回は片方がセレンなのでこちらの方が抵抗は少なく、すぐに導通不良です。
このため結局先頭の貴重なφ25電解ブロックコンデンサーが不良になるケースが殆どです。
左上の画像の赤丸円の高圧セレンの真下にφ25電解ブロックコンデンサーがあります。この小さなブロックコンデンサーはこの形と大きさしかこの場所に収まりません。
このためこの形の代品が無ければ改造例のように市販の電解コンデンサーを並べて改造するしか方法は無いのです。
改造されたら高級ビンテージアンプの価値は全く無くなりますね。
当工房ではこのφ25を始め全てのMarantz7の電解ブロックコンデンサーやセレンを確保できます。このため品位を保ったレストアができます。
カップリングコンデンサー以外の部品について
このページではクラロスタット製ボリューム、セレン整流器、ブロックコンデンサーなどを中心に掲載しています。
メインのページへ行くには右上のセブン再生工房をクリックしてください。
(青文字はリンクページに飛びます。クリックしてみてください。)
2022. 4. 24 更新
★当工房ではこんなセレンもあります。
追加のチューブラコンデンサーです。
普通レストアでは代品のブロックコンデンサーが無ければこのように追加するのが一般的です。
こうなるとオリジナルの品位が落ちますね。
この細い(φ25)ブロックコンデンサーが特に入手し難いので貴重です。
これも、もはや枯渇状態です。
これ等ブロックコンデンサーは新しいに越したことはなく、ビンテージとしての古いものを固持すると音が悪くなり、古きを尊ぶ必要は全くありません。
消耗品なのです。
★ mcIntosh C22,MC275用復刻セレン整流器です。
極めて特殊な形状なので復刻でもなかなかありません。
まだ一部に部品として純正品があるようですが、NOS品のため不良の可能性も高く寿命も心配なようです。
こちらの工房では多数の復刻セレンが用意できます。
青いバイアスセレンに丸いダイオードがパラに接続されています。
(2022. 4. 24)
★左の画像も少し見難いですが、この修理依頼機Marantz8Bも青いバイアスセレンに丸くて黒いダイオードをパラに接続されています。リード線がくるりと巻いてつながれています。
所有者の方の話では音楽を聴いていると突然煙が上がってヒューズが切れたそうです。こちらで詳しく検査をすると左チャンネルの出力トランスがショートして大電流が流れ、電源トランスもショートしヒューズが飛んだようです。
原因はこの不良になった青いバイアスセレンにダイオードをパラに接続し、後にバイアスの電圧異常から出力管のプレート電流が多く流れ、左チャンネル出力管のスクリーングリッド抵抗が焼損して煙が上がり出力トランスや電源トランスがショートしました。
Marantz8(B)は真空管が取り付けてある筐体の上面には通気口が無く、内部の熱を逃がすことができません。この為電圧異常から内部が高温になり特に内部の隅が熱溜まりになったのでしょう、ここに配置している左チャンネル出力管のカップリングコンデンサーも高熱で内部の絶縁フィルムが溶けてショートし、これがトリガーとなって大電流が出力管プレートに流れスクリーングリッド抵抗を焼損させた可能性があります。
悪いことに今回この内部の高温状態は抵抗やトランス類の焼損だけでは済まず、貴重なバイアス調整用メーターまで使えなくなりました。こちらでは以前#8Bのメーターを分解修理をしたことがありますが、コイルと指針の回転磁石はプラスチックの部品で固定されています。今回長時間の筐体内の異常高温はこのプラスチックを溶かし部品を変形させて完全に使用不能となりました。
当工房では電源回路や電源トランス、出力トランスなどや殆どの修理は可能ですが、さすがにバイアス調整用メーターの内部が原形を留めない位溶けて変形したら直すことはできず、バイアス調整ができなければこのアンプは再起不能です。言うまでも無いことですがヴィンテージアンプ#8(B)のバイアスメーターは部品取り機が出ない限りどこにもありません。
★あなたのアンプもセレンにダイオードがパラに接続されていませんか? そうであれば近い将来最悪の状態になるかも知れないことを覚悟して下さい。
★セレンが無いとこうなります。
Marantz#7のブロックコンデンサーの配置
このバイアス調整メーターは電源も入れていない状態で針が振り切れ固着しています。
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Telefunken ダイヤマーク有 特性の揃った6本組のNOS管です。
こちらは高圧セレンの下に隠されていました。一見上からでは判らないのですが、巧妙に騙そうとしています。