(2022.2.24)
★プレイヤーの話の後はやはりカートリッジでしょうか。(今更ですが、、、)
これまで私はアンプバカなので余りカートリッジには興味はありませんでした。この為、取り敢えずOrtofonの適当な?MC(SPU#1)とSHUREのMM(SC35C)で聴いていました。

最近プレイヤーを手に入れて音が変わることが判明?したので、(したのです。) ではカートリッジもと言うことで、Ortofon SPU Classic GE と、昔から良い音と評価の高い DENON DL103 を手に入れて聴いてみました。

SPU-GE は、なるほどオルトフォンです。奇麗な音ですね。特に臨場感は抜群です。お持ちの方も多いと思います。 しかし DENON もなかなかです。少し大人しいと言われながらも、こちらのプリMKe-1で入力インピーダンスを55KΩで受けるとなかなか元気な音になります。しかも音の解像度が抜群です。各楽器の音色がはっきりわかります。これは良い音です。私はオルトフォンよりこちらの方が好きですね。

★しかし、いつもの回路マニアが SHURE のMMで V15typeⅢ が良いと言うので手に入れてみました。人の話にすぐに乗ります。(笑) 本日到着したので早速聴いてみると、なんと、何と!です。

音の解像度も高く、力強く、特に低音が極めて良いですね。バスドラムの迫力。何よりもチューバの音がしっかり聴き分けられます。コントラバスと区別して聴き分けられます。

良い音で人気のあるSPUやDL103より私はこのMMが一番気に入りました。こちらの定番のカートリッジが見付かった感です。




(
2022.2.25)
★昨日からカートリッジを交換しながらレコード三昧です。同じレコードをSPU,DL103,V15typeⅢと順番に掛けています。その内カートリッジの交換が面倒になったのでポンコツ?デンオンプレーヤーまで引っ張り出してMKe-1のフォノ3系統入力をフルに使って順番に聴いています。

電音(DENON)プレーヤーは置く場所が無いので窓際に仮置きで2mのRCAケーブルで延長しているので条件が悪いのですが、ケーブルを音の良いものを選んで接続を繰返し、一応昨日のトーレンスのプレイヤーのアームでカートリッジ交換の時の音に近くなったのでこのまま色々なレコードを聴き比べてみました。

電音のプレイヤーはDDモーターなので前記のこれまでの試聴ではLINNやトーレンスに比べて中高音は変わらず低音だけがぼんやりすると認識していました。しかしV15をこの電音のプレーヤーに装着してもそれ程低域はぼんやりぜず、寧ろ他のカートリッジよりはっきりした低音に聴こえます。これはトーレンスのSMEのアームでの交換の時でも感じたので昨日低音がはっきり聴こえると書いています。

一番ぼんやり聴こえるのがLINNに装着のSPU-GEです。交響曲の盛り上がりのフレーズで全体がざわつくのもSPUです。DL103やV15typeⅢは、かなりはっきりした音で各楽器の音像が認識できます。
しかもV15はSPUやDL103よりアナログ的な生々しい音です。恐らくMCカートリッジはMCトランスを通すのでそれだけ音が加工されるのかも知れません。

★このSPUやDL103,V15typeⅢは有名なブランドなので皆さんお持ちの方も多いと思います。いま私がこの様に感じてもそんなことは無いと反論される方も多いかも知れません。恐らく使うプリアンプにも依るのでしょう。ただ今こちらで聴いているプリアンプはCR型の当工房オリジナルMKe-1です。これをNF型のMarantz7やmcIntosh C22で聴くとSPUも幾分しっかりした音に聴こえるのかも知れません。DL103やV15は硬すぎると感じるかも知れません。

★最近私はレストア以外にはMarantz7やmcIntosh C22はあまり聴きません。

(2023. 3. 11 追記)
今年の冬は短く、早くも春の陽気になりました。
冬の間もレコードを聴いていますが、今回活躍したのがデンオンのDDプレイヤーです。LINNやトーレンスはベルトドライブなので寒い朝はゴムベルトも縮困って動いてくれません。無理に動かすと切れそうです。(手で回してやるとようやく動き出します) EMT930もアイドラーなので滑って回りません。
しかしデンオンのDDは機械的な消耗品は無いので何気ない顔でスッと立上り、終わるとスッと止まります。こんな時はなかなかあっぱれです。
多少低音が良くないと言っても、寒い朝にいつも通り文句を言わずに動いてくれるのはありがたい。
この子は恐らく一生黙って私に付き合ってくれるのでしょう。

以前#7をレストア依頼をされて最近電話でオーディオについてお話しした方は、先日トーレンス124を手放したそうです。もうお守りをするのが疲れたと言われました。 何となくわかります。(笑)
私も季節が春や秋にはLINN、トーレンス、EMTも回しますが、冬の朝や夏の暑い日などゴムに負担を掛けるような気候の時は、特にアイドラー駆動のEMT930は回さないようにしています。(この子にはなかなか気を使います)
やはりオールシーズンでメンテフリーはDDプレイヤーです。最近このデンオンDDのストロボランプが切れてバーコード?が見えなくなりましたが、たぶんクオーツとサーボできっちり回転数は維持してくれているので気にしないで回しています。
ま、上記スタビライザーとゴム輪で結構良い音なので、これで充分ですね。
本文中の補足:

ご質問頂いた内容で、Marantz7の何が良いのか?と言うものがありました。
文字制限で余り深くは書けなかったので補足します。


★これは私のアンプ感にもなりますが、質問の回答には簡単に透明度と言う表現をしました。
この透明度とは、音楽信号の特に微細信号をどれだけ消さずに再現できるかだと思っています。
この微細信号の中に、その場の雰囲気、壁や床などの反響音、声の息遣い、楽器の音外れ?などもあります。

こちらのサイトにも記載していますが、川の流れに例えて川上で一度消された微細信号(音楽的情感)は川下では決して再現できません。
アンプでの川上はカートリッジやイコライザー・プリアンプです。川下はパワーアンプやスピーカーですね。
良いアンプとは、いかに全ての音楽信号を川の途中で消さずにスピーカーに音として出し切れるかと言うことです。

真空管アンプの良い所は、動作電圧が音楽信号に対して極めて高いので、ノイズに対して相対的に有利になります。
この為回路が単純に構成できるので、微細信号も無理なく増幅できます。

これに対しトランジスターは、動作電圧が低いため信号を増幅するとノイズまで大きく増幅されます。
またトランジスター素子そのものも純度によってノイズが発生し易いものです。
最近ではCMOS FETなどパワーLSIが主流ですね。基本はトランジスターの集積回路です。

私は真空管全盛時代を過ぎ、トランジスターへ移行の過渡期の時代からもアンプを見てきました。
現代でもハイテクを駆使してこのノイズとの闘いを繰り広げ、素子の純度の高さや回路構成の巧妙なほど高価?になるようです。

従来からアンプでノイズを減らす手段は、フィルター回路やNFBなど様々な回路を潜らせます。
その量が多いほど微細信号は消されます。フィルター回路やたくさんの回路はそれだけコンデンサーや抵抗の数が多くなります。
微細信号を消すのはコンデンサー(C)や抵抗(R)なのです。(ボリュームなど可変抵抗器も)
NFBについては下段でCR形、NF形回路の稿で説明します。

真空管アンプ時代も装飾回路の多さで優劣を競っていましたが、同様に微細信号は消され曇った音になります。特にヨーロッパ系の真空管アンプでは入力側全てにレベル調整用ボリュームが入っているものがあります。

こういうアンプはどれも低域は歯切れが悪くぼんやりした音です。入力ソースが余り良く無かった時代なのでレベル合わせやフィルターを掛けざるを得なかったのでしょう。

このように多くのCRで構成されるトランジスターアンプの多くはどんなにノイズの無いきれいな音が出ていても、平面的な、ただスピーカーの前で「音」が鳴っている。 そういう感じがします。

透明な良い音とは?

★電線とトランス巻き替えについて (2023.2.3 新規)

最近、私も電線の材質や状態によって音が変ることを認識するようになりました。
特に高価な電線を好む電線病患者?というわけでは無いのですが、アンプ内部の配線を換える事により音が変ってきます。
これを強く感じたのが、最近バンブルビー化にレストアした当工房所有機 Marantz9k です。勿論、バンブルビーに換えると良い音になります。しかもバンブルビーに換えた後いろいろ試聴を行いながら最後に音に影響のある初段管まわりの配線をウエスタン線に換えてみました。やはり思ったとおり雑味が無くなりすっきりさわやかな音に変ります。
これはウエスタン線だからとも言えますが、配線を変えたことの方が変化が大きいのかも知れません。

レストアをしている際に、配線を外した後部品を換えて配線を戻すとき、線を少し短く切って被覆を剝きなおすことがあります。このとき、新しく出てくる線の表面が変色していることがあります。
つまりその電線全体が変質しているわけです。恐らく長年電線に電気を通していると銅が劣化するのでしょう。時にはポキポキ折れることもあります。

こちらでは以前からパワーアンプの修理などでトランスの巻き替えを多く行っています。トランスを外す際にトランスから出ている電線を回路から外しますが、このとき基板端子やラグ板端子のハンダ付け部より根元がぽろぽろと崩れるように切れてしまうことがあります。細い線を束にした撚り線の場合、経年劣化で朽ちてしまっているのです。
巻き替えたトランスを戻すときは少し短く切って朽ちていないところまで被覆を剝いて使いますが、仕方なく全く別の線に換える場合もあります。

これはトランス内部の巻き線にも言えます。以前私はカンノのWE300Bシングルアンプの電源トランスを巻き変えたり、今はウエスタン300Bプッシュプルのアンプ用に段間トランスを開発しているので、少しはトランスの内部のこともわかります。
トランス内部には細いエナメル線やポリウレタン線を使いますが、古いトランスでは上記のように経年劣化で銅が変質し、中には線そのものがボロボロになってショートし始めているものもあります。

以前レストア依頼されたMarantz2で、音を聴いていると時折ポツ、ポツと音が混ざるアンプがありました。この時消耗部品を交換したのですがやはりポツポツ音だけは出てきます。最後に電源トランスを巻きかえると漸くこの音は出なくなりました。
この時お願いした巻き替え屋さんの話では、このポツポツ音は電源トランスの中で小さくショートしている音だそうで、そのうち大きなショートで切れてしまうそうです。

当工房所有の秘蔵機 Marantz2 最初期型のS/Nラベルの貼っていない方のアンプも時折ポツポツ音が出ます。勿論完璧なレストアを施してトランスの状態も悪くないのですが。。。 そろそろ巻き替えの時期なのでしょう。

Marantz2はマランツ最初のパワーアンプです。#2に限らずビンテージアンプはどれも60年近く経っているものばかりです。大事に使っていても劣化は進みます。恐らく現存する#2の半数以上は電源トランスが巻き換えられています。中には自分のアンプは巻き替えなどしていない全くのオリジナル状態だと自慢されるオーナー様もいますが、、。ま、先は無いでしょう。

寧ろ、トランスは古いオリジナル状態より新しい線に巻き替えた方が電気の通りは良くなり音も良くなるようです。前から言っている電源レギュレーションです。幾らセレンとかブロックコンデンサーを新しくしても電源トランスがボロボロではすっきりした音にはなりません。

以前Marantz7マニアの方で、電源トランスを当工房の特注トランスに換えたら音が良くなったと言われました。ご自分でレストアして最後に電源トランスだけが問題だったので当工房の特注トランスに交換されました。
当然Marantz7の電源トランスは世の中に殆どありません。運良く有ったとしても中はボロボロです。以前オリジナルトランスを某老舗ショップから高額で買い、レストア依頼機に交換しましたが半年でダメになり、こちらの特注トランスに換えたことがあります。

アンプは幾らオリジナル状態でも部品が経年で劣化しては元の性能は期待できません。電線やトランスも同じですね。


セブン再生工房

Marantz7の何が良いのか?

(2022.1.21)
とうとう憧れのLINNを手に入れました。LINN SONDEK LP12 です。
音は、、、これはもう最高です!

音の安定感はこの上もなく清閑さはまるで無響室に居るかの如し。

前はデンオンのダイレクトドライブからトーレンスのベルトドライブに換えた時も驚きましたが、その驚きがもう一度蘇っています。。。
トーレンスとはまた低音が違います。しっかり、くっきりと出てきます。
これまで聴いていたSHUREのMMカートリッジをLINNに付けて同じ試聴用のレコードを聴いての感想です。

ベートーベンのピアノ協奏曲No.5「皇帝」の最初の盛り上がりで、何と!チューバの音が聴き分けられます。
バ、バ、バ、バ、バフー、バフー。
これまでトーレンスでも、勿論デンオンのダイレクトでも喧騒の中に埋もれています。
ピアノの鋭い旋律やバイオリンの優雅な調べは、そこそこのオーディオなら当たり前です。
しかしさすがのチューバは鳴っている事さえ気付かないでしょう。私はそうでした。
つまり、極めて回転ムラの無いターンテーブルでは低音がはっきり聴こえるのです。
アームはフィデリティーリサーチ(舌噛みそう)のそこそこ?のもので、特にロングアームの立派なものではありません。 それでもこれだけの音です。

リンのサイトでは、プラッターは完全な削り出しでバランス調整が要らない位精度よく作られているそうです。
また芯棒(古い言い方ですね、スピンドルとも言います)も極限まで研磨し精度を上げています。
実際この芯棒を見ると細く、先端は普通は大きな球(EMT)で支持していますがこちらは丸い針状です。
因みに、トーレンスのプラッターはリンと同じ位重いのですがやはりダイカスト製で外周と中心付近のみ削っています。
特にバランス用のドリル穴は掘っていないので恐らくこれだけの重量物をブン回すと回転ムラを起こします。
それでもダイレクトドライブよりはマシでした。DDモーターは軽いプラッターにサーボで電気的に回転数を逐一調整しているのでムラムラです。 この為低音はぼんやりしています。

2018. 10. 21 初掲載
2024. 9. 3 更新

(2020.8.9)
Ortofon RMG309ロングアームを手に入れました。上記知人からダイナミックバランスが良いと聞くとこれも欲しくなる。煩悩でしょうか。
このアームをどのプレイヤーに付けようか迷っていました。今持っているものはどれもパッとせず、結局EMT930stを入手しました。ほぼ無傷で内部までとても綺麗です。

なんだかんだ言っていましたが一応皆さんが持っているものは欲しくなるのはサガ(性)でしょうね。
これでターンテーブルでの物欲も収まったか? イヤイヤ、まだ煩悩は盛んなようです。

しかし少し落ち着いたと思ったら今度はシンクロナスモーターの進相コンデンサーが気になります。

こちらの設置場所はサンライズ発電所音楽堂なので電力は太陽光発電によるインバーター出力で、きっちり60Hzです。この為ACシンクロナスモーターの回転も狂いは少ないのですが進相コンデンサーは経年劣化している筈です。

内臓イコライザーもトランジスター式なので使わない、とは言え消耗部品が劣化しているなら一応交換して音が良くなれば良いかなとも思います。

また暇ができたらの楽しみです。

★トランジスターと真空管の音の違いを技術面から考察
では一般的なトランジスターアンプと真空管アンプの音の違いを少し技術的な面からも掘り下げてお話します。

楽器や人の声に限らず、自然には様々な音があります。風の音や水の流れる音、車やサイレンの音など私たちの生活は音で溢れています。
このような音には「倍音」という成分が含まれているそうです。
音には決まった周波数がありますが、基本となる周波数の他にその2倍、3倍,という整数倍の周波数による振動がいくつも発生しています。

この整数倍の振動が出す音のことを「倍音」と言います。ヴァイオリンはヴァイオリンの音色、サックスはサックスの音色と判別できるのは、この「倍音」が含まれているためです。

音響機器の世界では「倍音」のことを「高調波歪み」と称しています。
アンプで再生する音にも、高調波が含まれています。

元々の周波数を基本波と言いますが、この基本波の偶数倍の周波数をもつものが「偶数次高調波歪み」、奇数倍の周波数を持つものが「奇数次高調波歪み」になります。

「偶数次高調波歪み」は基本波とオクターブ関係にあり、聴感的に心地よい響きを与えます。一方「奇数次高調波歪み」は遥か高域まで徐々に弱まりながら出続け歪として耳につきやすく不快音として感じられます。

真空管はその伝達特性上、歪みとして耳につきやすい奇数次の高調波が少ない素子です。
真空管で作られた回路は「奇数次高調波歪み」を打ち消し「偶数次高調波歪み」を強調するように働きます。

「偶数次高調波歪み」はもともと楽器の音にも豊富に含まれる「倍音」の成分なので豊かな音に感じられるのです。反面「奇数次高調波歪み」が少ないことにより、不快で聴き疲れする音が少ないことになります。

真空管アンプはこのような特性により、自然界の音、本物の音により近い音を発生することができます。


一方、トランジスタなどの半導体アンプは一般に奇数歪みが多いといわれています。
従って、歪み始めるといきなり「音が割れる」という感じになってしまいます。

音声信号の高調波歪みをオシロスコープという測定機で測ると、トランジスターアンプは鋭いギザギザの波形になりますが、真空管アンプは波形が丸く出ます。

また、トランジスターアンプでは冒頭でも言いましたが高調波歪みそのものをフィルター回路などで全て削減しようとするため、本来、自然な音が持っている「倍音」の成分までも消し去ってしまいます。

このように「奇数次高調波歪み」が少なく自然の音にもともと含まれる「倍音」の成分が多いのが真空管アンプの音の特徴です。

「優しく」「暖かい」「リアルな」など感覚的に表現されることが多い真空管アンプですが、その理由の一端は音の成分にもあったのです。

(2020. 1. 8 追記)
★本日ちょうど上記回路マニアがこちらのレストア済
mcIntosh C-8の音を聴きにきました。ついでに自分で製作したデジタル(D級)パワーアンプも持って来てお互いの音を聴き比べました。

やはりこちらのレストア済 C-8の音を聴き、私の賞賛していることに納得されています。

同時にプリはこのC-8を使い、こちらの真空管パワーアンプMarantz8Bと持って来られたデジタルパワーアンプとの聴き比べを行いました。

同じ環境では、やはり最新回路で組んだデジタルアンプも音の定位がはっきりしているため、通常トランジスターアンプで良く言われるスピーカーの前で音が鳴っていて、音の広がりは余り感じません。
どちらかと言うと両スピーカーから音が一直線に中心の自分に向かっている感じです。

片や、Marantz8Bの真空管パワーアンプでは、前述の通りスピーカーが置いてある壁一面と奥行きを伴った空間全体から立体的に音が部屋中に広がってきます。この為、左右のスピーカーの中心に居なくても充分臨場感を感じることができます。

この音場の違いは、これまでプリアンプの違いが大きくパワーアンプはそれ程影響しないのかと思っていました。この為、上述の如く私はパワーアンプは何でも良いと思っていましたが、寧ろ立体感はプリよりパワーアンプに依るものが大きいと改めて感じています。

恐らく聴感としては、真空管アンプはトランジスターアンプの半分のワット数で同じ音量が得られるような気がします。それだけ真空管パワーアンプの音は「通る音」なのです。

★トランジスターアンプと真空管アンプの音の違い
私と同じ回路マニア?にプリをMarantz7、パワーをトランジスターアンプでJAZZを聴かれる方がいます。
良い組み合わせだと思います。
しかもこの方はMarantz7はオリジナルの他に#7kを持って、思う存分改良して音の変化を楽しんでいます。
私も#7kがあるのでお互いに改良内容の情報交換も行っています。

またこの方は最近のデジタルアンプや高級トランジスターアンプを持っていましたが、やはりプリアンプだけは真空管アンプでなければ音楽が聴けないと言われます。音の雰囲気がまるで違うそうです。

また、以前当工房からMarantz7を買われた方が以前からお持ちの
mcIntosh MP1100と聴き比べられて、Marantz7の方が情感溢れる良い音だと評価されました。( EQC-1 + Marantz7 )
MP1100は現代のハイテクを駆使した100万円を越す凄い真空管アンプですね。サイトで確認してみてください。

やはり特性を良くするために様々な回路を設けると先ほど言った音楽の情感が無くなり、トランジスターアンプと同じく味気ない音になってしまうのでしょう。


アンプは多少特性が悪くてもそれが個性となり、ウエスタンのように良い雰囲気を出してくれます。
これがヴィンテージアンプの醍醐味なのです。

私は、真空管アンプは楽器だと思っています。希少価値の高いヴィンテージアンプにはストラディバリウスが重なって瞼に映ります。
真空管やカップリングコンデンサーなどの銘柄や特性、そこから湧き出る何とも言えない旋律に心の奥底をくすぐられるのは私だけでは無いでしょう。。。

次にJAZZピアノの曲を掛けて貰いました。いつもこちらで聴くMarantz7やmcIntoshC-8ではピアノの音はカーンと鍵盤を叩く時の躍動感や息遣い、ベースの軽快な重低音が部屋中に鳴り響きますが、この高級アンプとスピーカーからは元気の無いお上品なお仕着せの音しか出てきません。
音量を上げるとただうるさいだけで、鳴り響くような気持ちの良い音とは程遠いのです。

良い真空管アンプの音は、スピーカー面からでは無くスピーカを置いてある場所全体から奥行きと立体感も伴ってフワッとした空間をつくり、さほど大きな音では無くても重低音は床を震わせ中高音も煌びやかに部屋中に広がって行きます。

また、些細な音でもくっきりと判別できるのでオーケストラではパートの小さな旋律も追いかけて行くことができます。JAZZライブのレコードでは軽快なリズムの中に演奏者の息遣いや自分のすぐ隣で聴衆者の小さな囁きまでもが、音の場に流されることなくはっきり聞きわけられるのです。

しかし、今回聴かせて頂いた最新デジタルアンプとスピーカーからは音楽を聴き込むような心地よい音は聴けませんでした。

私はMarantz7 + 8B or 9などの真空管式ヴィンテージアンプしか最近は聴いていないので、一度現代ハイテクの音を聴いてみたいと期待を込めて聴きに来ましたが、噂通りこれが今のハイエンドと呼ばれる高級オーディオシステムの音なのだと改めて驚いています。

結局、幾らマイコン制御の特許(何が?)の詰まったデジタルハイエンドアンプでも、昔聴いた初期の頃のしょうもないトランジスターアンプと音は変わらないのです。SNが断然良くなったおかげでむしろ味気無さでは悪くなっていると言えます。

真空管全盛時代の音を知らない(我々60代半ば以降の)今の若い人たちがオーディオを選ぶ場合、メーカーがお膳立てしハイテク(+デザイン?)競争から生まれた製品の中からの選択です。

できればもっと音の原点に戻って昔の情感溢れる本当のアナログアンプの素晴らしさを知って貰いたいと思い、真空管式モノーラルアンプを開発しています。

★いろいろ書いていますが、なぜトランジスターになったか、です。

まずはメーカーの都合です。真空管では管理が大変でコストが掛かります。
時代の波にも乗り遅れない。トランジスターなら単体では安いので儲かる。
しかし、ノイズなどの副作用がでる。
このノイズの少ないかどうかでどこのメーカのアンプが良い音かを競いました。今も同じです。

あとはパワーでしょうか?真空管では大パワーは出せません。
しかし、劇場やライブでもない限り何百ワットものパワーは必要無いでしょう。
一般の家庭では10Wも出せば窓がビビリ隣から文句が出て大変です。

つまりは何十年もの間、我々は全てメーカーの都合に踊らされて来たわけです。

また、よくセレンとダイオードは音は変わらないと言われる方もいますが残念ながら違います。
順方向の抵抗値はセレンの方が小さく、このため当然ロードレギュレーションが良くなり音も活き活きとします。(今では復刻セレンも一部で生産されなくなり貴重です)

トランジスターアンプのブリッジダイオードはダイオードを4個も組み合わせて整流するので効率は極めて良いのですが、かなり応答性は悪くなります。

実はもっと悪いのは整流管を使った初期の真空管アンプなのです。整流管は出力インピーダンスが高いのでダイオードよりも応答性は悪くなります。この為古いアンプには躍動感が余り感じないのでは無いでしょうか? でも、カッコいいですね。

因みに、こちらで開発したイコライザーアンプEQC-1の電源回路は上記理由からセレン使用も含めてMarantz7オリジナルの完全コピーです。
勿論、躍動感、透明感、臨場感、、、感の付くものはなんでもgoo!です。(余談でした)

また、Marantz7の回路図だけを見るとこれまで古の方々が議論して来たように様々な意見がありますが、実物の配線取回しを含め不思議な個所が多々あります。
これもMarantz7の特異な、しかも魅力的な音を生み出している理由なのではないでしょうか?

当工房では、先ずは音の「肝」となる電源回路を完璧に当時の状態に戻し、その上で音質を決めるカップリングコンデンサーや抵抗類を選定し音の調整を行っています。
こうすることによりMarantz7が持つ潜在的な素質を最大限に引き出しているのです。

この潜在的な素質は#7オリジナル初期型に限らず#7オリジナル後期型や7k、復刻7(レプリカ)に於いても変わりが無く、当工房でオリジナルに使う部品でレストアすればどれも同じく透明感溢れる良い音になります。

Marantz7の音を聴いた方なら解る、だから極端に今でも高額なのです。

★Marantz7の音について
Marantz7は市販の真空管プリアンプの中ではトップクラスの透明度の高いアンプです。
それは回路構成や使用する部品に至るまで、当時の方々の努力と拘りの結果です。

Marantz7の他の真空管アンプと違うところは勿論回路構成や使用部品ですが、これ以外に電源回路が特有です。

最初のMarantz 1(#4)では高圧電源はセレン2個を使った効率の良い全波整流回路ですが、後の#7ではセレン1個の半波整流に変更になりました。
これに低容量電解コンデンサーを多段に組んで高圧のプレート電圧としています。

この電源回路は当時から真似をする方はいません。余りにも効率が悪過ぎます。
実はこれには大きな意味があります。ロードレギュレーションです。

一般に電源回路において負荷が変動すると出力電圧も変動します。アンプの場合の負荷変動とは勿論音楽信号の高低強弱ですね。
これに電源が追従して電圧変動もなく速やかに電力を供給してくれれば音楽性にも影響は無いわけですが、ロードレギュレーションが悪ければ音の変化に俊敏に反応できず、もやっとした音になります。

トランジスターアンプの多くは整流器にブリッジダイオードを使い、電解ブロックコンデンサーは超大容量で完璧です。(トランジスターやFETではノイズの関係でこうせざるを得ないのですが)
この為、音のスピード( =ロードレギュレーション )が悪くなり、硬い平面的な音と言われるのです。
これは昔のトランジスターアンプや現代のデジタルアンプも前述の如く同様です。

Marantz7の電源回路はこのロードレギュレーションを良くするために低容量のコンデンサーを多段に組み、レギュレーションに大きな影響を及ぼす整流器を最少数のセレン1個で半波整流にしました。
Soul B. Marantz氏は実に良く考えたのです。

Marantz7の電源回路をもう少し掘り下げて説明すると、この電源回路の電解ブロックコンデンサーの値と組み合わせも絶妙です。
よくレストア依頼機の中には前のレストアで電解コンデンサーを足されたものがありますが、どれもかなり大きめの容量を足されています。
これ等のレストア屋さんは恐らく定説通りリプルを減らしSN比を良くする為にこうされたのだと思いますが、Marantz7の音では無くなります。
こちらでどの位の容量までなら音に影響が無いか実験しました。(勿論企業??秘密ですが。。。)

★いろいろ書いて行くと長くなったので要約で区切ります。
 少し長いですが面白い事を書いています。我慢して読んでみてください。
       

(2022.2.5 更新)
★パワーアンプではカップリングコンデンサーを無くし、プッシュプルアンプの場合位相反転回路を無くしたアンプが最もピュアでストレートな音が出るアンプです。
当工房で製作しているパワーアンプは主にプッシュプルアンプですが、この回路には位相反転回路の無い完全プッシュプルを構成したアンプになります。

★ここで完全プッシュプルやWプッシュプルについて少し説明します。
恐らく自作などアンプに詳しい方でも余り聞いたたことは無いと思います。普通、プッシュプルパワーアンプは初段管で電圧増幅を行い、次の球で上下分割しカップリングコンデンサーで繋いで最終のパワー管2本で電力増幅を行い、最後に出力トランスで上下を合体してスピーカーに出します。

これまで殆どのメーカーのパワーアンプはこの様な構成です。なぜこの様な回路になるかと言うと上下分割できる段間(インターステージ)トランスが高価でメーカーとしてはコストに合わず、作る量が少なければ流通も少ないのでなかなか手に入らないため一般には使用できない訳です。
また現代ではトランジスターアンプが主流ですから量産では有る筈はありません。

一般のアンプの中でも少し違うのはウエスタンのWE124AアンプやWE86Aアンプです。こちらは初段、次段まで普通にシングルで電圧増幅を行い、出力管の前の段間トランスで上下分割し2本の出力管で電力増幅を行い最後に出力トランスで上下を合体して出力します。
この為、怪しい?上下分割回路が無いためその分クリヤな音になります。これがウエスタンアンプの正体です。

しかし、ウエスタンアンプでもシングルの段階での各電圧増幅管の繋ぎはカップリングコンデンサーです。WE124AアンプやWE86Aアンプでは2段増幅なのでカップリングコンデンサーも2個です。1個のカップリングコンデンサーで位相が90°ズレます。2個では180°です。これにNFBを掛けると180°ズレた音に過去?の信号が重畳するのでいびつな音になります。これを皆さん(良い音として?)聴いていることになります。

この点、最近修理依頼のカンノの300Bシングルアンプは全て段間トランスで繋いで位相のズレるカップリングコンデンサーはありません。しかもNFBも掛けないので完全にストレートで音が出ます。大変澄み切った良い音です。しかしこれはシングルアンプだから容易にできる事です。プッシュプルではこう簡単には行きません。

プッシュプルでは信号を上下に分割する必要があり複雑な回路が必要です。
上下分割回路では、例えば一般的なP-K分割回路は真空管のグリッドに入った音声信号をプレート側に上半分、カソードに下半分の波形が出るように構成します。この様に入力の信号を真空管の動作で分割するので当然真空管と言う仕事(増幅)をしない媒体が余計介入することでそれだけ音を悪くすると同時にその後の繋ぎにはそれぞれカップリングコンデンサーが必要です。これが音の曇りと上記の様に余計な位相のズレとなって現れます。

トランスでの分割は単に1次側の信号を2次側では別々に取り出しているので位相のズレは無く、トランス自身が絶縁構造のためカップリングコンデンサーは必要ありません。ただし1次側では前段の真空管のプレート電流も流す(重畳)のでそれだけ太い巻き線を使用し図体も増えるので高価になります。ウエスタンアンプはこの上下分割をトランス分割で行っています。

ついでにカップリングコンデンサーの役割を簡単に説明すると、コンデンサーは直流を通さず交流のみ(90°ズレて)通過する(のようにみえる)特性があるため真空管の前段での直流分をカットし音声信号である交流分のみを通過させて次段に渡します。この為カップリングコンデンサーの性能は音質に極めて影響があるのです。当然この様な厄介なものは無いに越したことはありません。

また、バンブルビーなどで絶縁不良というのはこの直流カットの機能が劣化で直流が漏れる状況になります。そしてその漏れた分が交流の音声信号にかぶるため倍音や微細信号が消されてもやっとした音になり、最悪は音が変質し歪まで乗った音になります。
もしこれがパワーアンプのカップリングの場合、漏れた直流分がバイアスの動作点を狂わせプレート電流の異常を引き起こし、出力管が真っ赤になったり最悪は電源トランスや出力トランスの焼損に繋がる大惨事?になります。(最近当工房に入るパワーアンプにこの大惨事のものが多いです)


★本題に戻ります。(また思う存分に枝葉が伸びました。。。)
完全プッシュプルとは入力トランスで上下分割、或いは上下に別れたXLRバランス入力をそのまま電圧増幅管も2本プッシュプルで、最後の出力管まで上下分割されたまま出力トランスで合体し出力します。この為、怪しい?上下分割回路は無くストレートにクリヤな音が出ます。

つまりコストは掛かりますがパワーアンプ内はドライブ管も含めて全てプッシュプルの2回路が入っているのです。実はこの構成を取る製品としてはウエスタンの133Aアンプとマッキンの復刻MC275があります。どちらも繋ぎはカップリングコンデンサーです。
私の聴感では復刻MC275の方がMC275オリジナルよりクリヤな良い音に感じます。勿論XLRバランス入力の場合であり、通常のRCA入力では内臓の上下分割回路を使って皆さん聴いています。

真空管プリアンプでXLRバランス出力が出せる機種はかなり限られます。勿論新しい真空管アンプではXLR出力は持っているでしょう。しかし前述の通りNF型回路であり、案外バランス出力回路だけトランジスターのオペアンプで組まれているものもあります。ここまでコストは掛けられないのです。(McIntosh 復刻C22など)

当工房ではCR型モノーラルプリアンプMKe-1のステレオアダプターで、しかも位相のズレないトランス分割のXLRバランス出力が出せます。こちらのMKe-124Aアンプは完全プッシュプルなのでこのXLRバランス入力で聴くのが一番クリヤな音です。  ( 想像を絶する位のクリヤさですょ♪ )

また、この完全プッシュプル回路でカップリングコンデンサーを無くすには各段を段間トランスで繋ぎます。これにはトランスの1次側2次側とも上下分割巻線が必要です。これがWプッシュプル構成の段間トランスです。

通常、普通の段間トランスも仕様の合ったものは無いので希望の仕様のWプッシュプルトランスはまずありません。ウエスタンでも1次はシングル、2次で分割巻出力で我慢?しています。(ウエスタンは133Aアンプになって漸く完全プッシュプルが良い音だと気が付いた?のでしょう。しかし各段の繋ぎは依然カップリングコンデンサーです)

この様に全ての増幅段をコンデンサーを無くして段間トランスで繋げばNFBを掛けてもいびつな音にならずにピュアでストレートな音楽が聴けます。(パワーアンプではダンピングファクターを稼ぐ為NFBは必要です)


★他の例を見てみると、タムラのトランスと組んで?いる「佐久間アンプ」でも完全プッシュプル及びWプッシュプルではありません。WE133Aアンプ以前のウエスタンアンプと同じく、各段をカップリングコンデンサーで繋いで最終段のみシングル・プッシュプルの段間トランスです。これでパワーアンプの神様?のように言われています。

ネットに佐久間さんの動画があったので拝見すると、スピーカーはALTEC-A5を天井から吊るしバッフル板も付けずに聴いています。これでは出てくる音は多分、変です。
当工房のサンライズ発電所音楽堂ではクラシックはALTEC-A7ではなくハーツで聴きます。A7のドライバーは余り解像度が良くないのでモヤっとした音です。やはりALTECはJAZZやロックをガンガン聴くには歯切れが良いので持って来いですが、クラシックを聴き込むスピーカーではありません。
このようなスピーカーで聴かれている「佐久間アンプ」は微細な音や雰囲気を判別できるのでしょうか?

また、「武末アンプ」の完全プッシュプル回路ではカップリングを無くしてドライブ管(12AT7)と出力管(6CA7)が直結になっています。これは良いのですが条件が限られてきます。一般に直結回路は球と電圧のバランスに制約があるので、こちらが目指しているWE300B pp では使えない回路かもしれません。


★ただ今当工房では、完全プッシュプルMKe-86アンプ(WE300B pp)用 Wプッシュプル段間トランスを開発中です。

いわゆる「MORIKAWAアンプ」とでも言いましょうか。(笑)

良い音になります。 ご期待下さいませ。

余談です。
いつの間にか世の中ではデンオンのことをデノンと呼んでいますね。これはアメリカ読みでしょう。日本では電音デンオンです。そうでしょう? しかし社名が替わったのでしょうね。生き残って行かなければならないし、少しでも好感度を上げないと。それから最近ではレコードプレイヤーを端折ってアナログと読む風潮があり雑誌までアナログの表題のものがありますね。端折り過ぎでしょう。私は本業はコンピューター系のデジタル屋だったのでアナログはデジタルの対義語です。浦島太郎状態で現代の風潮に戸惑っています。

(2020.10.10 修正)
★プレイヤーの話

余談です。先ほどスピーカー「その他」と書きました。これはプレーヤーやカートリッジのことです。
以前プレーヤーはDENONの安いダイレクトドライブを使っていました。

当然デジタル制御なのでワウ・フラッター(回転ムラ)は限りなく0です。
こう言う機械物はヴィンテージ物よりも最近のデジタル式が良いと思っていました。

このワウ・フラッターですが、先日或るお宅へお伺いしてオーディオシステムを拝見しました。プレーヤーは高級なLINNやEMT930でしたが、レコードを掛けるとどちらも回転が安定しません。
ストロボで何度もチェックして暫くクラシックの旋律を気持よく追いかけていると、またフワッと船酔い気分?になります。
多分コンセントの電圧変動で回転数が変るのでしょう。

昔のプレーヤーのモーターはアナログの電圧制御シンクロナスモーターなので1次側の電圧変動で回転数も変わります。家庭では冷蔵庫や電子レンジなどが鬼です。当時はこの鬼がいなかったのでしょう。

恐らくベルトドライブ、アイドラードライブ系のACモーター駆動は全て同じかも知れません。上記LINNなどはプラッターを重くして慣性モーメントを上げていますが、それでもレコードの旋律に微妙に反映します。

やはり直流安定化電源を持ったDCサーボのダイレクトドライブは回転ムラを気にすることはありません。
しかし、上記回路マニアではサーボは常に回転ムラを修正しているので低音が違ってくると言っています。

(2023.1.12 追記)
★昨日、この鉱石(トランジスター)アンプの音の酷さが気になったので、どんな回路かネットで調べてみました。回路を眺めてみると予想通りパワートランジスターを何の芸?も無くただぞろぞろ並べています。初段は言われる通り私が昔よく使っていたオペアンプです。マイコンのアナログ処理回路そのものです。こんな程度で高級??オーディオができるのですね。驚きです。まあ、歪率や周波数特性は素材の進歩で少しは良くなったのでしょうが、所詮鉱石アンプです。音曲を聴き込むアンプではありません。これまで興味が無かったトランジスターアンプですが、内容を少し突っつくとますます興味が無くなってしまいます。
(「私の事」の欄にも記載していますが、私は現役時代はマイコンなどデジタル回路の設計をしていました。)

ネットには基板の画像も出ていたので詳しく観察すると、コンデンサー類はこんな程度だなと思いつつ、特に気になったのがデジタル回路に使う安っぽい抵抗を最低限のワット数で使われています。こんなものをオーディオに使うか?とこれも驚きです。こちらに持っているSONYの業務用鉱石アンプも同じだし、近年の国内有名メーカーの最新アンプのカタログに内部基板を載せている画像を見ても同じです。

昔のMarantzやMcIntosh、Westernなどはとことん抵抗などの素材を吟味し余裕のワット数で使っています。これに比べて当時物の国産アンプもやはり大したものを使っていません。国産アンプは今も昔も変わらないのかも知れません。
(私が数年前、久しぶりのオーディオ復活の当初はLUX SQ38FDやTRIO W-46などをいじって音が良くなったと喜んでいましたが、後にこちらできちんと整備したMarantzを聴いてから国産アンプは飽きました)

このYAMAHAの鉱石アンプは、いつか気が向いたら気になる抵抗やコンデンサーをいつも使っている音の良いものに換えたらいいかなと思います。恐らくこの雑音のような音はもう少しマシになるでしょう。

トランジスターアンプには興味が無いので「いつか」は来ないかもしれませんが。。。

(2022.3.4)
★本日は久しぶりに当工房の秘蔵機 Marantz2 を聴いています。先日まで他のレストア依頼機で問題のあったところを直し、こちらの#2にもフィードバックして良い音に磨きを掛けています。 しかし、良い音です。 こちらの#2も出力管はTelefunken EL34 太管Wリングゲッターで初段管はTelefunken ECC803S 、気合が入っています。やはりWゲッターは中高域が極めて奇麗です。
最近レストア依頼で入って来たWE300Bシングル(PARTRIDGEトランス)と比べても決して見劣りはしません。しかもこの300Bシングルの出力は6Wで以前のカンノの300Bシングルより小さいようです。この為、余り大きな音は出ないので、やはりこちらの#2は極めて迫力があり、繊細で臨場感も抜群です。 クラシックもある程度出力が無いと、いつも室内楽だけを静かに聴いているわけでは無いので交響曲では力強さも必要です。

これでカートリッジを聴き比べると、やはり先日から言っているように SHURE V15typeⅢは抜群です! 何かに例えるのも変ですが、例えばギターで云うと、Ortofon SPU-GE + WE618B がエレキギターだとすると V15typeⅢはギブソンのアコースティックギターです。 オルトフォン党の方には失礼ですが私が聴いた率直な感想です。
ついでにDENON DL103 はヤマハの??アコースティックギターでしょうか。

近々県内のウエスタン党の超マニアが2人こちらの音を聴きに来る予定なので、いろいろ準備も兼ねて音の確認を行っています。 これなら決してウエスタンには負けない音でしょう。 自信があります♪
この2人はそれぞれスピーカーは 555 + 4181 にアンプは勿論WEでプリも直熱管に拘る方です。この内1人は 4181 2発にアンプはWE350B パラレルプッシュプルで鳴らしています。なかなか皆さん強烈です。。。家が2軒くらい建つかも。

この V15typeⅢは相変らずポンコツ?DENON DDプレイヤーで鳴らしていますが、アームに輪ゴムを何本か巻くとアームの共振が押えられます。これは結構効きます。これもあって極めて良い音に拍車を掛けています。後はDDモーターのムラを無くせばLINNやトーレンスに負けない低音が聴けます。少し重めのスタビライザーも検討しています。

(2022.3.9 追記)
★まだカートリッジでバタバタやっています。本日手配中のスタビライザーが届いたので試聴しています。何と!やはり低音がグッと出てきます。全体がしっかりした音になりました。効果てきめんです。

トーンアームの輪ゴムとスタビライザーで高級プレイヤーとアームに匹敵する位良い音になります!驚きです。音が悪いと散々言って来たDENON DDプレイヤーでもしっかり良い音になりました。
普通は皆さん常識なのかも知れませんが、私はアンプバカの浦島太郎なのでこういう事は後回しになっていました。 益々V15typeⅢが良い音になってきます♪

恐らくLINNのSPU-GEもビビりは輪ゴムとスタビライザーで解決するのでしょう。そこでLINNやトーレンスでもスタビライザーを乗せて試聴してみると、音は余り変りません。やはり元々回転ムラは極めて少ないのでスタビライザー程度では影響は無いのでしょう。輪ゴムは効果あります。トーレンスに付いているSMEはさすがに定評のあるアームです。輪ゴムが無くてもビビりは感じません。

なぜDDモーターのプレイヤーが音が良くなかったのか、また勝手に検証してみます。恐らくプラッターが軽いので針先の振動で共振を起こし、しかもV15の針圧は0.75~1.25gとSPUと比べると極めて軽く、これがアームの振動も誘発しているのではないか。
私はこれまでグラモフォンのレコードは音が悪いと思っていましたがレコードそのものの重量も関係し、薄いレコードは軽いので益々共振を起こしていたのかも知れません。ただ今、日本版の薄いグラモフォンレコードを電音のDDで聴いていますが、普通に良い音です。
今回スタビライザーを乗せることによってレコードそのものの振動も押えることができたのだろうと考えます。(LINNのターンテーブルのゴムマットは厚手の起毛布です。この為レコードの振動も吸収しているようです)

輪ゴムと?スタビライザーは重要です。。。(笑)

ヤフオク(ストア)で新品を2,450円で落としました。まだ売っていますよ。中央にTD124と同じく水準器が付いています。これは便利。
DDモーターはトルクが弱いのでこの位の重量(275g)が丁度良いかも知れません。

(2020. 1. 8 修正)
★最近のオーディオ試聴の感想
最近オーディオショップでハイエンド・オーディオシステムを聴く機会がありました。
国内メーカーの最新アンプで、トランジスター式A級プリメインアンプです。価格は100万円位の高級品です。発売後予約で数か月待ちの優れものだそうです。

大きな期待を持って聴かせて頂きましたが、、、何というか、両耳に綿を詰めてドンシャリを聴いている感じです。思わず自分の耳が悪くなったのかと思いました。

最初に掛けて頂いたレコードはクラシックで、私もよく聴くチャイコフスキーのSYMPHONY NO.6ですが、どうにも音の通りが悪く、何度も耳を傾けてよい角度が無いか探しました。
いつも言う透明感、臨場感の、それ以前にこのスピーカーからは糞詰まりの音しか聞こえません。

スピーカーは200万円を越える超高級品で、最近の小口径ウーハーのトールボーイ型です。

       

★音楽とは、数値では表せない人間の心の表現です。これにはその場の雰囲気も重なっています。

幾らノイズが何デシベルまで落ちたと自慢し、周波数特性が完璧にフラットでも、それはどうでも良いことです。

我々レストアを行う者は時には周波数特性やひずみ率、SN比などさまざまな測定を行います。
他のレストア屋さんの中には最新の高価な測定器の所有を誇り、測定結果が良いから良い音になったと豪語されます。

しかし良い音はこれら測定では決して判断できません。この様な大雑把で単純な数値では表現できないのです。

これは自分の耳で聴き、心で感じるしか方法はありません。

このため数値で評価して来たトランジスターアンプの多くには、良い音の意味が理解できないでしょう。
極論を言えば、トランジスターである限りクラシック音楽を聴き込むアンプではありません。

何を言っているのか!と怒られそうですね。。。(下記に技術的にも言及しています)

音楽ジャンルに拠っては音楽的情感や雰囲気よりも力強さやダンピングファクター、シャープさなど、逆にトランジスターアンプの得意とする音かも知れません。
私もクラシックの他にJAZZやハードロックも好んで聴くので ALTEC-A7 Lansing から突き出るシャープな旋律に、心が酔います。


透明度の高い良いイコライザーアンプやプリアンプなら情感を消さずに微細信号をしっかり増幅してくれるのでパワーアンプやスピーカーはそこそこの性能であれば、全ての音楽信号を情感溢れる良い音で奏でてくれます。

私がプリアンプに異常に拘り、パワーアンプやスピーカーその他に余り深入れがないのは、おおよそこういう意味です。
★★ 目次 ★★ (クリックするとその行に飛びます)


ヤフオクでの質問内容と補足。

Marantz7の音について

最近のオーディオ試聴の感想 
2024.9.3 追記

トランジスターアンプと真空管アンプの音の違い 
2023.1.12 追記

トランジスターと真空管の音の違いを技術面から考察 

プレイヤーの話 
2023.3.11 追記

カートリッジでは 2022.3.9 追記

マルチアンプについて 2021.12.31 追記

ウエスタンアンプの音 2020.2.8 修正

最新のデジタル録音のCDを聴いています。
2020.10.10 追記

(いまさら?)RCAケーブルについて 2021.4.20 更新

電線とトランス巻き替えについて 2023.2.3 新規

本当の良い音とは 2022.2.5 更新
(2020. 2. 28)
★久しぶりにCDを買いました。最新のデジタル録音でムード音楽フルオーケストラ版10枚セットです。
ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団、ロンドン交響楽団の演奏で現代の著名指揮者や演奏家に依るスペシャル演奏を録音したものです。

「恋は水色」「白い恋人たち」、あのリチャードクレイダーマンの「渚のアデリーヌ」。。。
何と懐かしく、若かりし頃のほろ苦さが心に蘇ってきます。

エージングも兼ねてこちらのMarantz7 SN.10200番台グリーン、オールバンブルビー機で聴いています。
最初は仕事の処理でBGMのつもりでスピーカーをこれまでのポンコツ?JBLで聴いていましたが、いよいよ今度は解像度や音色が抜群の名器!TANNOY レッドー!!です。

さあ、これから良い音だぞ!と聴き込んでみます。。。が、、ん?
何かが違う、、、

なるほど、最新のデジタル録音なので極めてきれいで繊細で臨場感も、、と言いたいところですが、どうも創られた臨場感とでも言いましょうか、音は広がっているように聴こえますが、、、
何だか安物のトランジスターアンプでエコーを掛けたような無理矢理の広がりです。

音の解像度が悪く、それぞれのパートの楽器の音も追って行くのが辛いし盛り上がりで見失います。
折角の良い演奏が、、、あれ? 途中でいなくなった。。。

EQC-1で聴くいつものアナログレコードはもっと自然な臨場感で解像度も高く楽にパートの楽器の旋律を追って行けます。
勿論、従来のアナログ録音のCDでも臨場感や解像度が良くもっと自然に聴けます。

このCDの演奏はとても良いのですが、何だか伝わってくるのは創られた情感とでも言いましょうか。

やはり、これが現代の音なのです。



★いつもの検証です。

付属のぶ厚いパンフレットには録音風景も載っています。恐らく200を超えるミキサーのレバーが並びます。
これだけ音を変化させるミキサーを通すと当然音は加工されてしまいます。

昔のレコードは真空管のミキサーでチャンネル数も少なく、それだけ自然なままの音が録音されます。

ま、時代の流れなのでしょう。 


音は我慢して良い演奏を楽しみます。




★補足です。
ただ今、同じCDを持って会社から戻り自宅の書斎で聴いています。アンプはMarantz7+8BでスピーカーはこちらもJBLでL99にLE14A+075です。

何となく普通に聴けます。音の解像度はTANNOY Monitor REDよりも悪いのですが臨場感は普通です。

これは恐らくスピーカーの能率です。JBLのように低能率スピーカー用に音が創られているのです。
最近のトールボーイ型などは押し並べて低能率です。

先ほどの分厚いパンフレットの録音編曲風景にもJBLのモニタースピーカーが映っています。
編曲者がこのスピーカーで音を聴きながら加工している光景が垣間見えるようです。

能率の高いスピーカーと解像度の高い真空管アンプでは逆にこれが耳障りな違和感となって聴こえます。

やはり造られた感が満載のCDです。




(2020,3,11)
★補足2
昨日この稿を読まれた方からのご指摘で、TANNOY REDはそれ程能率が良いわけでは無くJBLと大差は無いそうです。(実際はREDの方が能率は良いです)
するとこの解像度の差はスピーカー固有のものかも知れません。
とにかくオーケストラなどの音源の多い楽曲はアンプやスピーカーの解像度の違いで聴こえ方が違います。
しかし、低域は断然JBLの方が沈み込むような重低音が魅力です。こちらの小さなブックシェルフのJBLもなかなか捨てたものではありません。


(2020,10,10)
★補足3
最近ブックシェルフJBL L26のスピーカーケーブルをウエスタンに換えました。
何と!音が変わりました。特に中高域がとてもきれいです。高域のレンジも広くなり、全体にとても良い音です。REDと比べても重低音と高音のレンジの広さは抜群で中域も繊細さが出て、感じは違いますが決して悪い音ではありません。見直しました。
この子はパワーアンプの試聴で、万一のためのお毒見役?として使っていますが、安物のJBL L26でもこんな良い音が出るとは思っていませんでした。

スピーカーケーブルは重要なのです。

因みにこのケーブルの芯線はウエスタン16GA 2本の撚り線のプラスマイナス計4本で片側1本の豪華なもので、恐らくどこかのメーカーが赤黒メッシュの被覆とバナナプラグを付けて表装を整えたきれいな製品です。

プリメインアンプの試験機です。(MKe-1086) →

外観はウエスタン 1086Aアンプを真似ました。
個人的な趣味です♪

ただ今たくさんの予約を頂いています。

(2024.10.30)
EMT930stを移動して再生工房のプレイヤーはなぜか4台になりました。

       
★マルチアンプについて
ところで、こちらにレストア依頼される方の中にはマルチアンプシステムで聴いている方がいます。
私は上記のように川上で消された微細信号は川下では絶対に再現できないと言っています。

マルチアンプのチャンネルデバイダーの多くはプリアンプの後に入ります。
ここではまだ微細信号なので「CRが山」のチャンネルデバイダーはしっかり微細信号を消します。

本サイトのMarantz 8,8Bパワーアンプの稿でも言っていますが、パワーアンプの初段管前の入力部はまだ微細信号なので、BumbleBeeで受ければよい音だと言っています。

この初段管で充分微細信号を含めた電気信号の電圧を上げるので、これ以降の位相反転管以後のカップリングは音に余り影響は無く何でも良いとも言っています。

クラシックでは、できればシンプルにシングルアンプ+フルレンジスピーカーが理想だと思います。
出力帯域幅を広げるために複数のスピーカーを使ってCLネットワークで変調することも気になります。
( C=コンデンサー、L=コイル)
なので今のところスピーカーは最小のCLで済む2WAYが多いですね。

JAZZなどは上記の如く微細信号よりも能力に合ったアンプを使い分ける方がご利益(ごりやく)はあるかも知れません。
何を聴くかで使い分けでしょうか? お金があれば。。。


こちらに聴きに来られる方の中に、余りにもスピーカーが貧弱なのでプリばかりお金を掛けないでスピーカーにも掛けたら?(笑)と言われた方がいました。
上述の通り、シンプルがいいのでなかなか踏み切れません。


(2020. 2. 6)
しかし、やりました。とうとうスピーカーをグレードアップします。
TANNOY G.R.F. Monitor RED (USU/HF/15/L) 超ヴィンテージ物の箱と程度の良いユニットです。
アメリカのロスアンゼルスからの輸入になります。
やはり2WAYですね。前からクラシックを聴くにはタンノイのイメージが世間にあり、気にはなっていました。
先日知人宅でオートグラフを聴いて決心しました。やはりJBLやALTECとは音の雰囲気が違います。
オートグラフも考えました。しかし2階の狭い部屋には入りません。15吋ユニット入りでは四角いUSA G.R.F.が大きさ的に限界です。

やはり名器タンノイ・モニターレッドです。いいですねー、嬉しくなってきます。



(2020. 4. 1)
最近当工房の近くで5ウエイのマルチアンプで聴かれる方と知り合いになり、近いので図々しく何度もお邪魔してウエスタンアンプの音を聴かせて頂きました。
音はやはりウエスタンです! 有り余る臨場感はまるでヨーロッパの名立たるコンサートホールで聴くような雰囲気を醸し出しています。

このスピーカーシステムは殆どがホーンで、ウーハーは直径60cmのハートレー(オリジナル)です!
これを真空管アンプ4台とトランジスターアンプ1台の計5台のパワーアンプで駆動されます。

チョット気になって、このウーハーはどのパワーアンプで駆動しますか?と伺うとマッキンのMC2100トランジスター式パワーアンプでした。
思った通りです。真空管パワーアンプではこんな大きなスピーカーはダンピングファクターが弱くて音にならないと思いました。実際MC275ではボンついて聴けないそうです。

大出力トランジスターアンプであればかなりダンピングが効くので大型スピーカーでも駆動(制動)できます。

前述からトランジスターアンプの悪口?を散々言っていますが、トランジスターアンプで無ければ鳴らないスピーカーがあります。

こちらのTANNOY Monitor REDやALTEC A7 Lansingも2ウエイマルチで下をハイパワートランジスターアンプで聴くとどうなるかと思ってしまいます。また違った低音が味わえるかも知れません。
最近こちらにも100Wトランジスターパワーアンプがあるので簡単なチャンネルデバイダーを作って聴いてみようと思います。
勿論、ボリュームは使わず固定抵抗とロータリースイッチのアッテネーターに良質のコンデンサー類を使って。。。また楽しみが増えました♪



(2020. 4. 2)
早速回路を検討しました。考えてみると単にフィルター回路なのでカットオフの周波数を決めるだけです。
しかし、対パワーアンプとなると入力レベル調整のボリュームが付いている場合はカットオフ周波数に影響するため簡単な回路では済みません。するとやはりインピーダンスを合わせる為カソードフォロア管が必要になってきます。
いろいろ検索するとやはり皆さんそれぞれカソードフォロア出しにしています。
当然トランジスター回路もそれぞれのレンジでオペアンプを通してローインピーダンスで出しています。各メーカーのチャンネルデバイダーもそれぞれのレンジにオペアンプを装着し全体のレベル調整にも増幅回路を設けています。
これは複数のラインアンプを何段にも渡って回路に入れているのと同じで、それだけ音も曇ります。

プリアンプで仕事もしないカソードフォロア管で出力して、次にチャンネルデバイダーでまた仕事をしないカソードフォロア出しを、しかも各レンジごとに球が必要です。。。どうかと思いません?

カソードフォロア管は全く仕事(増幅)をしないで出力インピーダンスだけを下げます。これには管の入力をカップリングコンデンサーで受けて出力もカップリングコンデンサーで直流をカットして出力します。
つまり往復ビンタでコンデンサーで位相をずらし音を曇らせているのです。

やはりこのような不要のものを回路に入れるのは私が最も嫌いな方法です。これまで何度も言っているように不要なコンデンサーやコイル類は音を曇らせ位相がずれます。しかもこのために増幅器まで必要になることは最も避けたいと考えます。

こちらのオリジナルのモノーラルプリアンプMKe-1には、出力回路にカソードフォロアを通すか通さないかの選択スイッチを設けています。聴感では勿論通さない方がすっきりとした良い音です。

余り回路を知らない方はプリアンプは真空管の数が多いほど良い音と思っている傾向がありますが、ウエスタンのラインアンプは真空管1本で十分なレベルで出力し、あの音を出します。
C-8のラインアンプもフィルター回路を除けばトーン回路で減衰したレベルを、これも真空管1本で通常レベルの出力に押し上げています。なかなかこのような回路にはお目に掛かれません。

一般に真空管が多いのは内部のトーン回路やフィルター回路でそれぞれ減衰した信号を何度も再増幅を繰り返すため本数が増えるのです。

音の透明度に関しては、真空管が多いほど音が悪いと言えます。
中には音を良くする為カップリングを無くして直結にしたりOTLなどで球数を増やす回路もありますが、押し並べて複雑な回路はそれだけ音の透明度が犠牲になります。(私感です)

この為、ただ今開発しているMKe-124Aパワーアンプは怪しい?位相反転回路を無くしています。

以前から思っていましたが個人的に静かにクラシックを聴く場合、アンプはシングルでスピーカーはフルレンジが最も素直な音が出て、高域の補填にツイーターを追加する程度が一番良い音なのかも知れません。

しかし、私はJAZZも聴くのでメリハリの利いた重低音も聴きたいですね。
とにかく低域をトランジスターアンプで、高域をできるだけ音に影響の無い方法で真空管アンプで駆動する手段を引き続き考えてみたいと思います。




(2021.12.31)
マルチアンプについて前回の記述から約1年半が経過しました。
2ヶ月程前、或るレストア依頼者からいろいろ素晴らしいオーディオ機器をお持ちと聞いていたのでレストア依頼機の完了品を持ってこのお宅にお邪魔しました。

バイタボックス・オリジナルのスピーカーにWE300Bシングルアンプ2セットを使い2ウエイのマルチで聴かれています。特にWE300Bの極めて澄み切った音色とバイタボックスのホーンの相性がよく、極めて良い音に聴こえます。

何枚かのレコードを聴かせて貰いましたが、丁度こちらでもよく聴くバッハの曲が掛かったので文字通り耳を澄ませて聴き入ってみました。すると良い音には違いは無いのですが、どうもうちで聴いているより音がぼやけています。バックグラウンドの演奏が区別して聞き取れません。
案の定、チャンデバは国内有名メーカーのトランジスター式です。ここで大事な倍音や微細音をフィルターを掛けたように消してしまっています。前記ハートレーのお宅と同じです。

今は良いチャンデバはこれしか無いそうです。
実はトランジスター式のチャンデバは安物(500円位)のオペアンプに数十円の抵抗やコンデンサーでフィルター素子を形成し、これを数個並べただけのものです。メーカーとしては特性さえきちんとしていればOKです。回路が安っぽいので電源トランスのケースに高そうなデザインを施しレイアウトも凝ったデザインで、いかにも高級なカタログを作って売っています。一般にトランジスターアンプは大体このような流れです。私は以前の仕事はデジタル回路設計も行っていたので事情は良くわかります。

これでは折角の良いシステムが残念です。何とかならないかと改めて考えました。

★実際の構成では以前から考えていたMKe-1にMarantz3と同じMKe-3の真空管式チャンネルデバイダーをラインナップとして考えています。しかし単に#3を真似るのでは面白くないのでやはり3ウエイを、できればもっと良い音にするためウエスタン流トランス結合で実現したいと思っています。私の理想の真空管式チャンネルデバイダーです。

しかしHiとLoは最小限の素子で何とかなるものの、音に重要なMidはHi+Loの回路を直列に組まなければなりません。できればシンプルな回路が一番音の劣化は少ないので3ウエイは諦めて2ウエイで行くことにして、クロスを500Hzと800Hが選択出来るようにします。これにHi側にスピーカーネットワークでツィターを分ける疑似3ウエイが一番良い音が維持できるのではと考えました。(500Hzはハーツ、800HzはうちではALTEC-A7用ですが一般の1吋ドライバー用です)

一応3ウエイと2ウエイの切り替えもできればいいと思って考えているのですが、これから開発では時間がかなり掛かります。もう少し簡単に早くできないかと考えると、ちょうど今のMKe-1のカソードフォロア管にもう1回路余っているので、これでHi,Lo 2つのカソードフォロア出力が得られ手っ取り早く実現できます。

これなら以前から考えていた当工房のハーツで、500Hz以下をトランジスター式ハイパワーアンプで鳴らし500Hz以上を真空管パワーアンプ(MKe-124A,MKe-86等)で鳴らせば臨場感に溢れ澄み切った中高音に迫力ある重低音が堪能できます。

早速設計に掛かりました。今はこれも完成したので現在MKe-1の次回ロットの製作に加えてMKe-2として同時展開を行っています。年明け早々に試作機を製作し春頃にはうちのハーツでよい音を皆様にお聞かせできる事を目指しています。

来年もまた楽しくなってきました。

(2023. 3. 19)
当工房所有機 Marantz7 S/N.14000番台 と大出力 YAMAHAのトランジスター式パワーアンプでJAZZを聴いています。
やはりダンピングが効いてしっかりとした低音が出ています。軽い乾いた音のALTEC A-7も実にのどかな力強い低音が出ています。
これはこれまでの真空管式パワーアンプでは感じなかった低音です。
(やはりクラシックは雑音に聴こえますが、、、)

       

(2020. 2. 6)
★ウエスタンアンプの音

上記の通り先日オートグラフを聴いたのですが、これを鳴らすアンプはウエスタン・エレクトリックのWE91Aアンプ(300Bシングル)とWE124Aアンプ(350B pp)、ドライブはWEの104ラインアンプです。

どれも音を聴いた瞬間鳥肌が立ってきました。これまで聴いたことの無い臨場感、音の余韻と広がりはまるでトンネルの中で聴いているような響きです。
これこそが原音に近い音なのでしょう。

こちらから持っていった自慢の?マッキンC-8を繋いで124Aアンプで聴いてもこれほどの臨場感と余韻は感じません。勿論、124Aアンプは当工房でいつも聴くMarantz8Bより格段に良いですが。

暫くショックで立ち直れない位でした。この後何があの音を作るのかじっくり考えてみました。

やはり、回路がシンプルです。WE104ラインアンプは左右独立したボリューム2個でバランスボリュームはありません。トーンコントロールもありません。
入口をインプットトランスで受け出力トランスで出します。これをWE124Aパワーアンプも618Cインプットトランスで受けます。
(C-8は一般のアンバラ出力なので124A側は618Cでは受けずRCA端子受けです。これも音に大きく影響しています)

つまりウエスタンの104ラインアンプには音が変わるカップリングコンデンサーが無いのです。真空管1本だけで増幅し、前後はすべてトランス受け渡しです。

やはり良い音とはこういうことです。
トーンコントロールやフィルター回路で減衰した分を真空管で何度も再増幅し、その繋ぎをカップリングコンデンサーを使って結合することが60年前から世界の主流です。

以前はカップリングコンデンサーは何が良いかを論じていましたが、そもそもコンデンサーそのものが音を悪くし位相も90度ズレます。無ければそれに越したことは無く、トーン回路も無ければそれだけ真空管の数も減らせます。(ご存知の通り真空管も音に大きく影響します)
それをウエスタンアンプが立証しています。

当工房では今後のアンプ開発には上記の事を考慮して、トランス結合も検討しウエスタンのような良い音を蘇らせたアンプを考えて参ります。
(只今製作しているモノーラルアンプにも既に反映し、試作機の試聴ではウエスタン並みの臨場感が得られています)


ちなみに、レコードではウエスタンのラインアンプにはイコライザーが無いので一緒に持って行った当工房オリジナルのEQC-1を繋いで試聴しました。
やはり臨場感は半端なく、極めてよい音が確認できました。

これもあり、オートグラフが良く聴こえたのかもしれません。。。

自慢のC-8でしたが。。。

WE91AアンプとWE124Aアンプです。

(2020. 2. 8)
★いろいろ勝手なことを書いています。
只今こちらで
mcIntosh C-8やMarantz7を聴きながら先日のウエスタンの音を思い出しています。

そういえば、いま聴いているC-8ほどウエスタンの104ラインアンプでは解像度が足りなかったような感じがします。
あの時はあの臨場感に圧倒されていましたが、改めて考えると楽器それぞれの音像はそれ程明瞭では無かったような感じです。


只今、雑誌「管球王国」2009版vol.51 P168でもWE104ラインアンプの評価で私と似たような意見を言っている記事があります。
「欠点と言えるものはありません。強いて言えば音楽の明暗のコントラストの付け方がもう少しあってもいいかなとは感じました。」(原文抜粋)と綴っています。

しかし雑誌の著者は何と華麗な美辞麗句を大量に思いつくのでしょう。いつも感心。プロですから。

少し噛みついてみます。 音楽の明暗のコントラストの付け方?、、、何も意識してコントラストを付けたり消したりはできません。ただの電気が通る回路です。音の信号が最後まで通りやすいかどうかでしょう。だから解像度と私は言っています。


話を戻します。(ついつい枝葉が思う存分伸びてゆきます)
この解像度が落ちてくるのは、よく言われるトランスが音を劣化させているのかも知れません。

カップリングコンデンサーで全てを繋ぐと音の臨場感が損なわれ、トランスは音の明瞭さを損なう。
WE104ラインアンプはこれをぎりぎりの所でバランスよくまとめているのかもしれません。

そしてMarantz7や
mcIntoshC-8もコンデンサーで繋ぎながら何とか臨場感を出しています。

こうなると、どちらが良い音と軍配を上げる事はできないのでしょう。

やはり何を聴くか、どこに価値を見出すか、それぞれの好みや考え方に依って違ってくるのですね。


パワーアンプでは、ウエスタンアンプ2台を聴いているときは、かの有名な3極管300BシングルのWE91Aアンプより、5極管350BプッシュプルのWE124Aアンプの方が私は好きな音でした。
クラシックでも124Aアンプの方がメリハリが有って良い音に感じます。

俗に、シングルは音色を楽しむ、プッシュプルは音楽を楽しむ、、、でしょうか?
旨い言葉ですねぇ。。。しかし今回は少し違いますね。

元々、私が過去に聴いたパワーアンプではLUXの擬似3極管50CA10や5極管の3結(Marantz2,9などのEL34等)の音はいまいちパッとしない感じがしていて、やはり適切なNFBを掛けた5極管プッシュプルがすっきりした明瞭な音に感じていました。(前述のレギュレーションも関係しています)

改めて冷静に考えると、やはりMarantz7や
mcIntoshC-8、或いはパワーアンプではMarantz8B,9、マッキンMC60,MC275などは極めて良いアンプだと思います。

勿論、余裕があればウエスタンアンプを持つことも理想です。充分大金?を払う価値はあります。



★因みに、ウエスタンアンプでは独立したプリアンプの概念は薄く、パワーアンプが基本でそれにラインアンプで入力のレベルを合わせると言った程度の感覚のようです。
今日ではプリメインアンプがこれに近いスタイルでしょう。

只今、当工房オリジナルで開発中のプリメインアンプでは、できるだけシンプルな回路でカップリングコンデンサーを減らし、パワーアンプもWE124Aと同じくトランス結合にして位相反転管を無くした極めてシンプルな回路形式を採っています。
出力管も6L6互換のKT66 ppを標準にWE350Bにも交換できるようにしています。

またWE124Aアンプの618C(IPT)やWE104アンプの170B(OPT)の特性に近い結合トランスを特注で量産できないかトランスメーカーと相談しています。


理想的なアンプになります。「当工房オリジナルアンプ」最下段で少し内容を紹介しています。

       
★RCAケーブルについて (2021.4.20 更新)

当工房ではオリジナルアンプを製作しています。
モノーラルプリアンプMKe-1ではアンプ本体とステレオアダプターの間を短いRCAケーブルで繋ぎます。それぞれ往復で2系統も繋ぐのでできるだけ良いケーブルを使用します。
この為、当工房ではシールド線に高周波通信用3C2V(同軸ケーブル)を使用して製作しています。

アンプの出荷前に試聴を行いますが、時として余り良い音ではないことがあります。そのつど内部回路を検査しますが特に問題はありません。何度も繰り返すうちに接続のRCAケーブルによって音の優劣が変わることを発見しました。

試しに市販の高級ケーブルも使ってみましたが総じて市販ケーブルはダメです。ベルデンやリンのケーブル、中には純銀製の超高級ケーブルも買ってみましたが、これが一番悪い音でした。
普通のアンプでは音がぼやけていてここまで気にならないかも知れません。しかし極めて輪郭のはっきりした音が出るアンプで、しかも高域が明瞭な高級ケーブルではこの違いがはっきり出てきます。

音の何が違うかと言いますと、極端に表現するとシンバルのチーン、チーンの音がジーン、ジーンと聴こえ、ピアノのカーンがガーンと、微妙に高域が濁るのです。

★この原因はRCAプラグのハンダ付け方法にあることが判明しました。RCAプラグの中のターミナル中央にまっすぐに芯線を差し込んできれいにハンダ付けをするとダメです。市販のケーブルは大体こうなっています。仕上がりが汚くても必ずターミナルの金具に芯線を接触させ、もしターミナルに穴が開いていればそれに芯線を通して絡め、ハンダは飽くまで固定の役目です。接触させずにハンダを介して音声信号を伝達させるとそのハンダが音を悪くするのです。

ハンダの材質に拘る方もいます。良いに越したことはないのですが、どちらにしてもハンダを通して音を伝達させると必ず音質の劣化を招きます。

こう考えるとアンプ内の配線も同じことが言えます。特に問題が出やすいのが入出力端子です。他のコンデンサーや抵抗類のハンダ付けも注意が必要です。必ず端子の穴にリード線を差込み絡めてからハンダで固定します。こちらでレストアするアンプの中には、以前他の業者でコンデンサーのリードをハンダに上乗せしてハンダ盛で付けていたものもあります。音は汚く濁っています。

たまにマッキンのC22レプリカやMC275レプリカなど、内部配線は全てプリント基板になっているものをレストアすることがあります。これらはとても良い音です。オリジナルより良い音かも知れません。

ヴィンテージアンプを使う方はプリント基板を好まない方が多いと思いますが、逆にプリント基板の方が基板のパターンと各部品のリード線が極めて近い状態のままハンダで固定されるので音質の劣化は極めて少なく、それだけ良い音になります。

また、当工房のオリジナルアンプの両面プリント基板では、一般のプリント基板と違って配線以外の空き地はできるだけ残し、全ての空き地をアースに落とすことにより配線パターンをシールドする効果もあります。この為極めてノイズが少ない明瞭な音が出るのです。

ただ今当工房ではWE124Aを参考にしたパワーアンプを開発しています。この配線には従来通り空中配線を行っていましたが、誘導を拾うので一部をプリント基板化しこの基板全体をシールドする方式に変更しています。

★因みに、当工房で製作するRCAケーブルの線材は上記にも記した高周波通信用3C2Vですが、この特性はJIS規格やUL規格では電気的抵抗値が0Ω(91.4Ω/km)、キャパシタはJISの規定では67pF/mと市販の超高額の低容量RCAケーブルと同程度です。

計算してみると-3dBの減衰域は30kHz以上で可聴周波数帯域を遥かに越しています。
(可聴周波数は20~20kHzで、一般には50~16kHzと言われています)

さすがに高周波通信用です。
これなら多少延ばしても音質には全く影響はありません。

★因みに(Part2)、銀線は電気的抵抗値は銅線より1割程度少ないだけで銅線を少し太目を使うと同じ値なので高価な線を使う必要は全く無いそうです。こちらで購入した純銀線は拘りがあるのか方向まで決めています。完全に気のせいです。
しかもこの銀線のハンダ付けの所がご丁寧にモールドしてあり、上記ベルデンやリンと違ってこちらで修正不可能です。詰まらない物をカッコつけて売って、全く何を考えているのか。。。


(2021.4.1)
★因みに (Part3) 、まだ銀線の話です。それなりに高額出費の為未練があります。
RCAプラグをこちらで手配して、この銀線のプラグと交換する為銀線の根元を切ると、何と!芯線がありません。周りの銀線だけです。つまりこれはシールド線では無いと言うことです!

注意深く線を辿ってみると周りの銀線はそれぞれ被覆が被り1本1本独立しているのです。これを恐らく互い違いにアースと信号線として使っているのでしょう。この為方向も決めなければならなくなってかっこ付けているのです。恐らく外部ノイズに対しては全く効力は無いと考えます。
また、どうりでキャパシタもこちらで使う高周波用3C2Vの3倍もあります。音が悪い訳です。

結局この純銀線はオーディオ用としては全く用を為さない代物です。高価でしたが廃棄しました。
所詮電線です。こんなものに高額を投じてみた自分が情けない。。。電線病の方、店の口車に乗るのは程々に。

ついでに、色々試聴するとベルデンやオーディオテクニカ、リンより(こちらでRCAプラグのハンダ付けを補修しても)高周波通信線3C2Vの方が高域の通りが良いので奇麗な音に感じます。ご参考にして下さい。

← 豪華な純銀製RCAケーブルです。音は最悪! 矢印で接続方向を表しています。ただの気休めです。

線が太く重く、ソケットが首を絞めるタイプなのでこれでMarantz7に刺すと#7側の入出力端子がモゲ(捥げ)ます。。。

       

当工房秘蔵機 Marantz (model 2) 最初期型です。 2台ともmodel 2になる前のものです。出力管はTelefunken EL34 太管Wリングゲッターのまだ新しい物を付けています。

       

(2020.8.11)
★本当の良い音とは


プリアンプでは負帰還を掛けないアンプの音です。


負帰還(NFB)を掛けるとは、真空管やトランジスターなどで増幅された信号を増幅前に一部戻すことです。
(NFB = Negative feedback)
これにより歪率や周波数特性を改善します。

この一旦増幅された、時間経過後の信号を増幅前に戻すと言う行為は、元の信号に後の信号を重畳するため少なからず位相がずれた音を形成します。
このずれが歪を打ち消す効果や信号の帯域の一部分(目立った部分=中音域)をカットするような働きが出ることから、見かけ上の周波数特性を改善する効果があります。
これは今日まで様々なアンプに尊重されてきました。

しかし、音楽信号に取ってはこの位相のずれは必ずしも良い効果とは言えません。
本来の信号に位相のずれた信号が乗ることは本当の音ではなく、目立って分らないかも知れませんが厳密に言うといびつな音になります。

ウエスタンのパワーアンプでWE300Bシングル(WE91Aアンプ等)をお使いの方はこの感覚はお解かりだと思います。

複雑な音楽信号ではこのNFBは歪の改善と同じく微細信号を相殺して丸める効果も出て臨場感などが損なわれます。
大量にNFBを掛けるトランジスターアンプでは臨場感が無くなるのはこのためです。
トランジスター回路の設計では各部のオペアンプに当たり前のようにNFBを掛けています。逆にそれぞれの回路のこのNFB量に依ってそのセクションの特性を計って確認しているのです。

また真空管アンプでも特にNF型プリアンプではトーン回路に大量のNFBを掛けます。(Marantz7のイコライザーには微量の正帰還まで掛けています。これがシャープに聴こえて良いと宣う先生方もいましたが)

一般的な高級アンプにはトーン回路をスルーするレンジ(中点、ディフィートSW)を設けてあるので皆さん安心かも知れませんが、実際は既に折角増幅した信号をNFBで減衰させ、それぞれの周波数でどれだけ戻すか戻さないかのコントロールを行っているに過ぎません。
このためスルーしたからNFBを掛けていないと言うことでは無いのです。
(Marantz7やC22などの回路がわかる方はどの抵抗でNFB量を決めているかわかりますね?)

その点CR型のトーンコントロール回路では文字通りC(コンデンサー)とR(抵抗)の組み合わせの時定数(ときじょうすう)で、或る音域を上げるか下げるかのコントロールを行ないます。このためNFBは全く掛けずに音楽信号を素直に前から後ろに出しているので倍音を含めた自然な音になるのです。

しかし、このCR型のトーンコントロールではNF型の様に周波数特性はフラットになりません。
どうしてもトーンのボリュームの値と位置(中点)やコンデンサーやその他の抵抗の値が決まってしまうので、それぞれの組み合わせに依って特性がうねってきます。
このうねり方に依ってそのアンプに音の特徴が出ます。

初期の年代のアンプはこの周波数特性が悪いので、この後NF型の回路が発明(ウエスタン)されると殆どのメーカーはNF型に移行しています。Marantz7やMcIntoshC22,国産ではLUX CL35,SQ38FD,Technics30A,山水AU-70,111など有名なアンプは皆NF型です。

ウエスタンアンプの多くはこのNF型の回路が発明される前のCR型のアンプです。この為今でも臨場感がある良い音が出るのです。
しかし周波数特性は 500-15kHzで±3dB位が限度でしょう。昔のスピーカーは今ほど広帯域では無いのでこれで充分だったと思います。

当工房オリジナルのモノーラルプリアンプ MKe-1ではこのトーンコントロール回路にCR型を採用しました。しかも周波数特性は高音低音のツマミのそれぞれの中点で 40-22kHzの広帯域に渡って±0.5dBの範囲に入りほぼフラットな特性です。この中点はトーン回路をスルーしているわけでは無く全ての回路を通過しての値です。


これによりウエスタンアンプの様な臨場感を保ちながらレンジの広い自然な音が聴けます。




(2020. 8.30)
★以前から思っていたのですが、こちらのオリジナルイコライザーアンプEQC-1を使われている方の多くはモノーラルレコードをモノーラルMCカートリッジで聴かれます。
しかもモノーラルアンプ1台とヴィンテージスピーカー1本で完全なモノーラルの音を聴かれる方もいます。

私も聴いたことがあります。たった1本のスピーカーから臨場感のある音が部屋中に広がって来るのです。

これはなぜでしょうか?

実は、上記の通り当時のプリアンプやラインアンプはCR型回路だからなのです。ウエスタンアンプなどモノーラル時代はまだNF型回路が無かった頃です。

CR型回路は負帰還を掛けず全ての微細な音楽信号を倍音も含めて素直に音として増幅してくれるので、パワーアンプはそのまま電力増幅することにより臨場感や余韻なども含めて1本のスピーカーから心地よい音となって広がります。

私は、音楽は主にクラシックを聴きます。この為かなり解像度の高いプリアンプでなければ音源の多いオーケストラの音は聴けないと思っています。

皆さん、交響曲の演奏の中でホルンの音を聴き分けてその旋律を追いかけたことがありますか?
楽器の中でもっとも判別が難しい音だと思います。これをCR型の当工房オリジナルアンプMKe-1で初めてはっきり聴き分けられました。
フゥー、プップ。フゥー、プップと、第一バイオリン第二バイオリンの猛威に、コントラバスが地響きを立てて追い討ちを掛け曲全体が盛り上がる中で、けなげにホルンが鳴っています。同じ曲をこれまでNF型のMarantz7では全く感じませんでした。

ホルンというのはラッパの開口部が後ろを向いています。このため音は後ろの壁に反射して時間差を持って聴こえてくるのですが、反響音や残響音が聴こえないNFBが大量に掛かったアンプでは、そもそもホルンの音は全く聴こえないのです。

これが聴こえるのはやはり率直に音を出してくれるCR型回路の威力なのです。

こういう生々しい音が60年以上前のモノーラル時代に聴かれていたのですね。

CR型回路の当工房オリジナル真空管式モノーラル・プリアンプMKe-1とXLRバランス出力の出せるステレオアダプターADP-6を専用のウッド゙ケースに入れました。

カンノ製 WE300Bシングルアンプと当工房保有機 Marantz7 S/N 10300番台グリーンです。この300Bシングルアンプは全段トランス結合でカップリングコンデンサーはありません。しかも完全無帰還です。音がストレートに出ます。Marantz7オールバンブルビー機との奏でる音は、正に絶頂の幸福感を味合わせてくれます。

完全プッシュプルの当工房オリジナルMKe-124Aアンプ(WE350B pp)です。

当工房にある Marantz 2

★拙い知識と勝手な憶測で書いています。

異論は多々あるでしょうが、私のアンプ考としてこういう考え方をする変わり者もいる程度に聞き流してください。

また、お気に触る方もいらっしゃるでしょう。お許し下さい。





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トーレンスのプレイヤーの、SMEのアームにDL103とV15typeⅢを交換して聴いています。一々グラムを測るのが面倒なので1円玉を貼り付けて針圧を合わせています。
こちらのSHURE V5typeⅢは鏡面白文字の初期型です。

カートリッジの交換も面倒になったので電音のプレイヤーを引っ張り出して聴いています。

       

LINN SONDEK LP12 と Thorens TD320 です。

LINNのカートリッジは Ortofon SPU classic GE, MCトランス WE 618B、まろやかで臨場感があり奇麗な音が出ます。 トーレンスの方はカートリッジDENON DL103にMCトランスが AU-320です。こちらは極めて解像度が高く私の好きな音です。
プリアンプは勿論MKe-1。絶品の音を楽しんでいます。

当工房サンライズ発電所音楽堂にあるEMT930stです。
Marantz7グリーン + 9オリジナル とお似合いです♪

このEMT930と並んで奥の木箱がデンオンDDにアーム3本のサクラダファミリア? です。

また、ダイカストと言うのは溶けたアルミを型に押し込んで整形します。これは温度分布によっては骨密度?が違うので部分的に重量は違ってきます。
この点削り出しは正確です。世の中には真鍮を削り出した超重量級プラッターもあります。高価ですね。
リンのサイトでは、この削り工程は時間を掛けてなまして数回に分けて削っているそうです。そんなに手間を掛けなくても、、、だから高いのです。
適当なダイカストをヤケクソで削るのとは訳が違う。失礼。世の中の殆どのターンテーブルはこうでした。

リンのトランポリンのバネは同じトーレンスより柔らかいですね。これも拘りがあるのでしょうね。
一見普通のレコードプレーヤーです。チンドン屋かサクラダファミリアのようにアームが乱立しているわけでもなく、いかにもドイツ丸出しの無骨な格好もしていない。(EMTのこと)

トーレンスも控えめな格好で良かったのですが、リンはもっと普通な格好なのでとても良いです。
これはもうパンツのゴム(ベルトの事)さえ時々換えれば一生ものです!

当工房に実はプレーヤーが6台あります。サンライズ発電所音楽堂にEMT930とデンオンのDDにサクラダファミリア状態の恥ずかしくて見せられないもの。石川の工房にデンオンのDDとトーレンス、そして凛(LINN)ちゃん。ついでに倅のマンションにデンオンのDDです。

この中で今回の凛ちゃんはダントツの良い音です。

レコードが止まりません。。。また久しぶりに有頂天になりました♪♪

(2020. 1.27 追加)
実はこの低音が違ってくると言う言葉が気になり、試しにもう1台買ってみました。
手頃な価格のThorens TD320 にアームはSME 3009 seriesⅡ IMPROVEDです。
早速音を聴くと、何と!その通りです。落ち着いた低音と雰囲気、これまでの雑念と言うか粗さやうるささがありません。

何が違うのか自分なりに分析すると、まずトーレンスはベルトドライブですがモーターはDCのシンクロナス同期制御で、回転は周波数(50/60Hz)や電圧変動には関係なく安定しています。
プラッターも重量級です。これはLINNと同じくバネで吊り下げたフローティングです。
ここが効いているのです! (実はLINNを買おうと思ったのですが[試しに]としては高くて、、、)

レコードを聴くと言うことは針から出る機械的な振動が伴い、この振動は周りと共振して音に混ざります。これをどう共振させないかがポイントのようです。
プラッターを超重くして共振させないか、LINNやThorensの様にフローティングにして筐体に伝えず、結果として共振を無くすか。

またSMEのアームはスタティックバランス式ですが中心軸が一般的なピボット固定ではなく、やじろべいで接線は広くその接点は何と樹脂です。(ガタつくので少し分解してみたら固定ではなく乗せてありました)
この樹脂受けが針からの微振動でアームが共振するのを吸収しています。さすがに定評あるアームです。
普通のピボット式ではアームからの共振は全て音に混ざってきます。
アームもJ型なのでS字型より共振が少ないらしいです。
(知人はスタティックバランスは音ががさつくと言われます。その代表がSME ? )

目が覚めました。ターンテーブルとアームはとても大事です。(笑)
このトーレンスは、小さくて可愛く大げさで無くてもさりげなく音が良く、とても気に入っています。

       
       

(2023. 1. 10 追記)
★最近またトランジスターのハイパワーアンプを手に入れました。思い切り大パワーのアンプの低音を聴いてみたくなりました。今回は整備済 YAMAHA PC2002M です。出力は何と! 240W+240Wの化け物です。これは名機だそうです。このアンプを褒めたたえるホームページもありました。チョッと期待を込めています。

McIntoshも考えましたが、XLRバランス入力が必要なのとトランジスターアンプに高額を出す気はしないので、安い国産の業務用アンプで充分です。

本稿のマルチアンプの所でも言っていますが、いずれ真空管式のチャンネルデバイダーを作ることを検討しています。音質の劣化を考慮すると前にも言っている通り2Wayが限界です。

当工房所有のハーツフィールドやALTEC A-7に合わせてカットオフ周波数を500Hzと700Hzに設定し、低音をこのYAMAHAの鉱石?アンプで出し、中高音をMarantz2や今開発中のMKe-86 (WE300B pp)などの球のアンプで鳴らせば気持ちの良い音が聴けるのではないかと期待しています。

取りあえずこの鉱石アンプを聴いてみます。いきなりハイパワーでこちらの大事なヴィンテージスピーカーを飛ばすのも怖いので、恐る恐る御毒見役のJBL L26の出番です。配線を確認して電源を入れるとセルフチェックが始まり、納得がいけば通電するようです。たぶん。
まあ、マイコンが入っているならそのくらいはやるでしょう。ライブステージで何個もスピーカーを並列に繋がない限り240Wをまともに受けられるスピーカーはありません。安全回路は必須です。

YAMAHA PC2002M 240W+240W 大出力の雑音?がでます。

試聴は、まず最初はJAZZからです。やはりダンピングが効いて低音は期待通りです。ま、この位ならMarantz9でも出ます。聴感的には。
中高音もカチッと決まった音で割と感じ良く聴けます。なるほどこれなら名機と喜ぶ方もいるでしょう。

余り期待はしませんが??今度はクラシックです。 イヤー、全くダメです。
以前オーディオショップで聴いた最新のシルバーの高額の物と同じで何の楽器が鳴っているのか区別がつきません。盛り上がりの所では全体にガーガーとうるさいだけなのも同じです。

下の段の技術的考察の稿でも言っているように、鉱石アンプは奇数次高調波歪が多く中高域が汚く感じます。NFBが大量に掛かっていびつさも増しています。最近のアンプも昔のアンプも鉱石アンプは同じです。パワートランジスターやCMOS-FET(パワートランジスターの集積回路)をぞろぞろ並べればハイパワーになり、初段の電圧増幅は安いオペアンプです。

このアンプを褒めたたえているページでもオペアンプを最強?のモトローラに換えれば最高の音になると言っていましたが、我々(元)デジタル回路のシステムエンジニアは500円程のモトローラのオペアンプはいつも使っていました。我々の感覚ではこんなものを有難がる気が知れません。しかもこれらを数十個並べて皆さんよく使う有名メーカーのチャンデバが作られています。音が良い訳がないでしょう。

いつも聴くクラシックの曲を1時間程聴いていたら頭が痛くなってきました。他に持っているSONYの業務用トランジスターアンプも同じですが、鉱石アンプは長時間聴くと疲れます。早々に初試聴は取りやめです。もうこのアンプは単独で聴くことは無いでしょう。

(2021. 7. 29 追記)
★時間の経過と供に好みも変ってくるようです。
上記と同じ様に当工房オリジナル・プリアンプ[MKe-1]の音を聴いています。

このMKe-1からRCA出力でmcIntoah MC60 + TANNOY Monitor RED、XLRバランス出力からSONYの業務用トランジスターパワーアンプ + JBL L26を切り替えて聴いています。

クラシックはやはり真空管パワーアンプの方が臨場感や広がりを感じとても良いのですが、JAZZではトランジスターのパワーアンプの方が締まった力強い低音がとても魅力的に聴こえます。

前記の様にトランジスターアンプを酷評していましたが低音に関しては真空管よりトランジスターアンプの方が良い音です。
後に記述しているように益々マルチアンプも気になってきました。低音はトランジスターパワーアンプで中高音は真空管アンプが理想かも知れません。

★トランジスターアンプとは別に最近好きなアンプにMarantz9があります。こちらは力強い音を出す出力管EL34を4本パラレルに使った贅沢なパワーアンプです。とてもしっかりとした低音と繊細な中高音が魅力です。一度この音を聴いたら元に戻れないとまで言われますが、尤もです。

やはりハイパワーでダンピングが効き、大型スピーカーも力尽くで良い音に鳴らします。この辺りはハイパワートランジスターアンプと同じです。しかも真空管特有の繊細な調べを感じさせる、理想のパワーアンプです。 状態が良ければですが。

当工房秘蔵機の Marantz model 2 赤メーター最初期型です。出力管はTelefunken EL34 太管Wリングゲッター 1スロット茶ベースの程度の良い物です。RFTの細管とはやはり繊細さが違います。

S字アームは共振を起こしやすいのですが、最初の曲がり部あたりに輪ゴムを数本巻き付けると共振を抑えてくれます。結構効果があります。
オーケストラの盛り上がりでビビリ音が無くなりました。J型アームのように全体に静かです。

LINNのアームにも輪ゴムを付けてみました。やはり静かです。
オーケストラの盛り上がり部分も爽やかに力強く聴こえます。 SPU-GEは臨場感が抜群です。

澄んだ音色が部屋中に心地良く鳴り響いています。

(2020. 3. 25 追記)
★ただ今当工房オリジナルのモノーラル・プリアンプ[MKe-1]を開発していますが、XLRバランス出力のテスト用に、XLR入力端子の付いた安いパワーアンプを探していました。

幸いSONY業務用の100Wトランジスターパワーアンプを手に入れ、取り敢えず音の確認のためRCAアンバラ入力で聴いてみました。

やはり「石」の音ですね。

上記いろいろ書いていますが同じように平面的で臨場感に欠け、何よりも耐えがたいのは楽曲のメインのフレーズに全てのバックグランドの音が消されて何の楽器が鳴っているのか解りません。

どの時代のトランジスターアンプも似たような音です。
これでは音源の多いクラシック音楽は聴けません。

そろそろトランジスターアンプの批評をするのがうんざりしています。
真空管の真の良い音を知っているので、どれも同じ批評になってしまいます。

私はオーディオ雑誌の記者ではないのでスポンサーに忖度して何でも良い音とは言いません。
気に入らない音は気に入らないのです。

やはり以前レストアした
mcIntosh MC275レプリカの音が最近のアンプとしては良かったので
テスト用としてはかなり高価ですが、良い音が出るもので試聴しないと良い製品に繋がらないのかも知れません。

(2024.9.3 更新)
以前から私はトランジスターアンプの音について散々悪口?を言っています。
最近YouTubeを眺めていると、アンプの音に関する投稿を目にしました。
この動画の趣旨は高級アンプと安いアンプの音の違いが判るかというものです。
当然投稿されているのは我々(私)化石人間ではなく現代?の方のようなのでトランジスターアンプについて言っていることと思います。

この方の極論は、どちらも変わらないと言うものです。殆ど購入時の金額による思い込みでありブラインドチェックではどちらが良い音とは言い難く、アンプの音は周波数特性と歪み率を合わせればどれも同じ音に聴こえるそうです。
かなり乱暴な言い方ですが、まあトランジスターアンプはそうでしょう。この方の言われることは正しい、と思いながら納得していました。しかし、まだいろいろ言われている中に、おや?と思ったものもあります。それは真空管アンプの音も特殊な回路を(トランジスターで)組めば作り出せると言われるのです。

やれやれ、この方は我々が追い求めている良い音の定義とは無縁の世界の方でした。我々が感じている良い音とは何のことか恐らく理解できないでしょう、特性や歪みなど測定器上での良い数値が良い音の基準のようです。
私もこれまでヴィンテージアンプのレストアを行ってきて少なからず測定値やオシロの波形も見ていますが、音の情感や表現などは数値や波形などには出てきません。こんな大雑把な機械では判別できないのです。音には深い人間の感性でしか判らない世界があるのです。
しかし、現代のオーディオを聴かれる方々やメーカーは数値が全てのようです。当然「倍音」(下段で詳しく説明)など何のことかわからないでしょう。一応この言葉は知っていても皆がそういうから周波数特性で高域が数十kHzまで出るので倍音も楽に表現できると言われるかも知れません。極めて良い音は極めて周波数特性が良く歪みが無い音なのです。

私がこの稿の下段で言っているCR型やNF型の区別もできない。当然現代のトランジスターアンプはほぼ全てNF型なので、そもそもCR型NF型そのものが死語です。電源の整流回路に於いても全波整流半波整流やセレン整流器も死語で、Marantz7がなぜ効率の悪い半波整流に戻ったかと言う深い意味は到底理解できないでしょう。

今のオーディオの世界では、パワートランジスターを駆動するにはとにかく力ずくで超特大トランスに大コンデンサーをゾロゾロ並べて、どうだ!と言わんばかりの内部構造を自慢されています。
パワートランジスターやプリのオペアンプはこうしないと素子そのものがノイズが大きく大量のNFBを掛け何段ものフィルターを通して何とか聴ける状態になるので仕方が無いのですが、これによりどれも同じように硬く直線的な音になってしまいます。だからどのアンプも同じ音だと言われるのです。
他のYouTubeで国内有名メーカーのオーディオ製品の組み立て動画を見ても、最終検査は測定器のみの確認でそのまま箱詰めです。試聴はされないのです!

また、先日あるお店にお邪魔してオーディオの話をさせて頂いたときも、最近のマニアはマランツやタンノイのブランドは知らないそうです。昔からあるブランド名ではJBL位で、私のような浦島太郎としては驚きの世界が現代のオーディオ界のようです。

       

(2020.8.17)
お盆休みに上記とは別の近くのオーディオショップに依ってみました。クラシック音楽が流れています。見るとスピーカーは最新のTANNOYカンタベリーで価格は何と410万円です。確か190万円位だと思っていたのですが最近急に値上がりしたそうです。コロナの影響かな?

このスピーカーは当工房のTANNOY Monitor REDと比べても特に違和感は無く極めて良い音です。
少し低音の感じが違います。カンタベリーはバスレフです。どちらかと言えば自然な音なのでしょう。これなら音楽のジャンルを問わず良い音で聴けると思います。しかし400万円超ですか。。。

アンプは国産のメーカーのシルバーの筐体でプリとメインで500万円位、同メーカーのCDプレイヤーを含めると800万円の大そうな代物です。

音は最初の印象はなかなか良い音でした。しかし、クラシックを聴くとなると私はかなり厳しい見方(聴き方)をします。30分程聴いていると耳が馴れてきますが、まずバイオリンの音が音そのものを分解して合成したような感覚です。何だか旋律がバラバラになってくっ付いた感じでやはり作られた音、NFBを掛け過ぎた音なのです。

バイオリンの音はとても難しく、ぼんやりと曇った音が出るアンプでは余り意識しないかも知れませんが、明瞭な音が出るアンプではきつい音になったり荒れた感じが表に出ます。バイオリンそのものは弦を弓でこするので本来は荒れた音なのです。それを色々回路を潜らせ音を丸くして聴いているのでうっとりするような華麗な旋律に聴こえるのでしょう。実際のバイオリンを真近で聴くとスピーカーの音とは違うことがわかります。

今回のアンプは上記プリメインアンプよりはかなり良かったのですが、このきつい音を増長されたような、いつも聴くMarantz7や当工房オリジナルアンプなど、真空管アンプと比べると、、、んー です。
勿論、特性的には完璧でしょう。
しかし、やはり典型的なNF型のトランジスターアンプなのです。最下段の「本当の良い音とは?」にCR型とNF型の音の違いを書いています。

当工房所有機 Marantz7オリジナル S/N 17000番台

       

当工房開発 Marantz model 1 type 真空管式ステレオ・イコライザーアンプ EQC-1
音の透明度が極めて高く、model 1のように情感溢れるレコードの音が堪能できます。
また、36通りのイコライザーカーブが選択でき、MCトランスに合わせて入力インピーダンスも選択可能です。

質問:

あるオーディオ店でCDを聴くならMarantz7でなくても、プリアンプなら何で構わない。

音の差は、レコードを聴くなら違いがでるがMarantz7に拘る必要はないと言われた事がありましたが、そうなんでしょうか?

私はプリは3台所有しておりますが、抵抗を換えるだけでも音の違い分りますが、実際のところ経験豊富な方ですのでお聞きいたします。

そもそもMarantz7はパワーアンプと違いトランスがある訳でのもありませんし、何が音を左右してるのでしょうか、以前から不思議に思っておりました。
よろしくお願いします。


回答:

ご質問ありがとうございます。そのオーディオ店は真空管ビンテージアンプの事をよくご存じ無いのかも知れません。
何が違うかと言うと音の雰囲気です。透明度でしょうか。

私はクラシックをよく聴きますが、透明度が高いアンプはオーケストラの各楽器のパートの小さなフレーズまで聴きわけられ、バックグラウンドの小さな楽器の音を耳で追いかけることができます。

特に良いMarantz7でCDを聴く場合に顕著に出ます。クラシック以外であれば余りアンプの差は出ないかも知れません。寧ろ力強さとかノイズが少ないとか、ビビらないとか些細なことで評価することが多いのかも知れません。

透明度や臨場感は最近の高級ハイエンドアンプでも難しい課題です。

★以前ヤフオクにMarantz7オリジナルを出品しました。

その時質問を頂いた内容の中に、Marantz7の何が良いのかというものがありました。

ここでその質問内容とこちらからの回答、そして補足説明文を掲載します。